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木材の疑問・質問に答えてなんでもQ&A
監修 佐道 健
Q国産材と外材の違い
国産材と外国産材(外材、輸入材)の
材質や性質の違いと、その用途の違い。
A「国産材は日本の風土にあっている」
という人がいます。
たしかにスギやヒノキ
の樹木の成育には日本の自然的風土が適し、
スギやヒノキの材は日本人の文化的風土に
あっているとはいえるでしょう。
しかし材
質に関しては外国産材に比べて、国産材が
日本の自然的風土に合っているというのに
は少し疑問があります。
日本人が国産材の
個々の材質を、日本の自然的風土に合わせ
て上手に使ってきたというべきでしょう。
建築用材を含め、どの用途に使う場合で
も、その機能を十分に果たすことができる
性質や性能を持っている限り、国産材であ
ろうと外国産材であろうと優劣はありませ
ん。
実際にどちらを選ぶかは、個々の材料
の品質、利用者の好み、価格によって決ま
ります。
ただ、スギ、ヒノキ、ケヤキなど
は歴史的にみても長い間にわたって使われ
てきたので、日本人に親しみがあり、日本
人の好みに一致することが多いのは事実で
す。
国産材と外国産材とを比較するときには、
針葉樹材、温帯・亜寒帯で産出する広葉樹
材、熱帯産材とに分けて考えるのがよいで
しょう。
針葉樹材では、ベイスギ、ベイヒ、ベイ
ツガ、ベイマツのように、国産の針葉樹材
の名前がついた北米産材がいくつかありま
す。
これらの材はそれぞれスギ、ヒノキ、
ツガ、マツなどに代わる材として輸入され
たものですから、材質、外観などの似てい
る点が多く、用途が重なります。
しかし植
物学的には、スギとベイスギのように別の
種類(属)のものもあります。
日本では建築用材としての木材は構造材
であるとともに、装飾性を求める場合が多
くなっています。
したがって、強度、耐久
性、狂いにくさのような客観的な性能のほ
かに、色合い、木目の美しさ、木の香など
の主観的な要素が評価の基準になります。
その点で、日本人になじみの深い国産材が
高く評価されるのは当然といえます。
しか
し、二方柾のような心去り材、断面が大き
い梁材、無節材などの取りやすい大径木が、
国産材には少なくなった現在では、大径木
が多い外国産材に依存することが多くなり
ました。
広葉樹材についてみれば、国産材の多く
は、東アジア、北米、ヨーロッパなどの温
帯・亜寒帯に広く分布する木材と共通点を
もっています。
オークとミズナラ、メイプ
ルとカエデ類、アッシュとアオダモ、イエ
ローバーチとマカンバやミズメ、ビーチと
ブナなど、国産材と同様の材質を持ってい
る樹種を日本以外にも求めることができる
ので、多くの用途で相互に代替することが
可能です。
一般的にいって、これらの広葉樹材は国
産・外国産というよりも、個々の樹種(ま
たは材料そのもの)の材質が、用途に適し
た性能を備えているかどうかが選択の決め
手になります。
個々の樹種でみると、国産のケヤキは外
国産材ではこれに代わるものはないでしょ
う。
一方、北米産のブラックウォルナット
(クルミの一種)などは日本でも、国際的
にも非常に評価の高い材です。
熱帯産材の大部分は国産材と材質がかな
り違っています。
バルサのように国産材で
は得られない特徴を持
ったものがあり、さらに熱帯材にはチーク、
ローズウッド、マホガニーなどの世界的に
優良材といわれているものも少なくありま
せん。
熱帯材は色調、材質がバラエティに
富んでいるので、用途に適した材質をもつ
材を選んで使うのがよいでしょう。
最近、アラスカ桧(=スプルース)のま
な板、南洋桂(=アガチス)の碁盤、南洋
桐(=アルビチア)の家具など、国産の有
名材の名前をつけた外国産材を使った商品
が出回っています。
これらの材は名前がつ
いている国産材とは、見た目で似ている点
がない訳ではないのですが、全く違った材
であることに注意する必要があるでしょう。
いま国産材の利用が推し進められている
のは、国産材と輸入材との材質の優劣の問
題ではなく、社会的な要請によるものです。
日本の森林からは毎年2400~500立
方mの木材を生産しているにも関わらず、
蓄積量が年々増加しており、その増加量だ
けでも、現在の国産材の生産量を超えてい
ます。
また、山村・林業の活性化や国土保
全の観点から日本の森林を育成していくた
めにも、国産材の利用が望まれています。
(大阪木のなんでも相談室室長 佐道 健)
Q自然の営みと木材
木・森林と川・海との関係についての
自然の営みや木材のリサイクルについて教
えてほしい
A まず最初に触れておきたいことは、自
然の営みは全てアナログ的に連続し、そし
て循環しているということです。
○自然はアナログ的に循環
その最も解りやすい例が水です。
水が地
球を育て、人間を含む動植物を生存させて
いるのですから、ここに端的な循環の姿が
あります。
雨が降って、その水が森や草木を育てま
す。
その水は、森で一旦保水され、流れて
川を作ります。
川の水は農作物を育て、人
間生活を支えます。
水としての役割を終え
た水は偉大な蘇生力を持つ海へ流れ行き、
浄化され、水蒸気となって上空に上り、雲
になります。
雲が流れて山間部を中心に雨
を降らせます。
水はこの繰返しを通して地球を育みます
が、この水に生命力・エネルギーを付加し
ているのが森林と海だと言います。
海の浄化力や蘇生力はここでは割愛し、
まず、森林の働きを考えます。
森林と樹木の働きは、第一に光合成によ
る酸素の排出と炭酸ガスを吸収し、閉じ込
めることにあります。
最近の報道では、森
林が排出する酸素は全体の30%程度と、
思ったより低い数字ですが、この炭酸同化
作用が地球の生物を存在させてくれていま
す。
樹木は、酸素の排出と水分の放散の時
に、大量のマイナスイオンを放出してくれ
ています。
森林浴によるリフレッシュ効果
の最も大きな要素がここにあります。
第二の働きは、土壌をつくることにあり
ます。
岩石からの砂とは違うのは、森林の
土は、落葉や動物の死骸やフンなどで出来
ますが、作られる量は100年間に1㎝程
度と言います。
この土は生命を養うミネラ
ルや微生物をいっぱい持った、有機物の豊
富な土です。
この土が風で吹かれたり、水で流された
りして、川下の田畑の土を豊かにしてくれ
ています。
樹木の葉の中でもこの面で優れ
ているのは広葉樹で、その葉の裏側は微生
物の住処となっており、特に常緑の照葉樹
には大量の微生物が住みついています。
このような照葉樹の森を源とする水は名
水と呼ばれるものが多く、名水は同時に、
豊かな実りをもたらせてくれます。
この照
葉樹を主とする広葉樹の森から流れる水か
らなる川には微生物も多く、魚が増え、河
口の海の魚も豊かになるということが知ら
れています。
北海道などでは、漁協と一体になった広
葉樹の森づくりが盛んになっています。
こ
の効果はスギ、ヒノキの人工林では期待す
ることはできません。
第三の働きは、水の循環を支えているこ
とにあります。
木々の葉などからの水蒸気
が上空に昇り、海などからの水蒸気と共に
雲をつくり、森林を中心に雨を降らせます。
降った雨は、そのまま流れて川に行くので
はなく、森林の中で一旦貯えられます。
そ
して根などを伝って地中に浸み込み、この
中で浄化されて川に流れたり、伏流水や地
下水になります。
かつての自然な状態では地下水が涌き出
るのには、降ってから百年、二百年と言わ
れましたが、人工林化がすすんだことや、
乱開発で、非常に早く出てくるようになっ
ていますから、この面からも水質の低下が
問われています。
森がなければ、保水力が生まれませんか
ら、河川はすぐに氾濫して洪水になります
し、雨が降らなければ干しあがってしまい
ます。
広葉樹の森ほど、その根の張りや腐葉土
による柔らかい土のおかげで水源涵養、保
水能力が高く、少しずつ水を流し、干ばつ
を防いでくれます。
第四の働きは、生態系を維持することに
あります。
森は微生物、小動物に始まる生
物種の最も多いところです。
その森で木々
たちは芽吹き、花を咲かせ、実を実らせま
す。
それが多くの生物たちの生命力を養い、
生態系を維持しています。
人工林の中に生
物種が少ないのは、広葉樹、雑木を主に守
られている生態系が変質させられているか
らにほかなりません。
このように、森林は四季の流れの中で生
命力を生み、生命力を育てて循環している
のですし、それがまた人間の食生活を豊か
にするだけでなく、情緒を呼び、文化を育
てる礎にもなっているのです。
以上、少し長くなりましたが、森林の働
きを中心に、水と川と海との関係から自然
の営みを見てきました。
そこで、もうひとつ木材について触れて
おきます。
○木は生涯に二度仕事をする
木は、普通その生涯に二つの大きな仕事
をします。
最初の仕事は、地に根を張って生きてい
るときですが、この主な役割は先に触れた
ところにあります。
そしてその時には、自
分の役割を果すために、その地から動けな
い分、他からの侵害を妨ぐためのフィトン
チッドやテルペン等の臭い(香り)を発し
て害敵を寄せつけないようにしたり、マイ
ナスイオンを出して雷を防いだりし、それ
がまた環境浄化や癒しの効用をもたらして
くれます。
そしてもうひとつの仕事は切られてから
です。
切られた木は、その内に炭酸ガスを木質
の形で閉じ込めたまま、社会の至るところ
で何らかの形で人間の生活に役立ってくれ
ています。
住まいだけでなく、あらゆると
ころで使われている木材は、密閉したり、
厚い塗装で覆わない限り呼吸し、生き続け
ています。
木は切られて、挽かれても、割られても
生きています。
そして、その木の寿命分だ
け働くことができます。
最近、民家のリサ
イクルが盛んになり、古材バンクの活動も
ありますが、構造材としての柱や梁は、表
面を削るだけできれいな木理を見せ、木の
香を漂わせますし、無垢材も再利用されて
います。
木材はこのように充分再利用できる材料
ですが、鉱物資源や石油を原料とする材料
は、腐蝕したり、割れたり変色や変形し、
そのまま再利用することが出来ないことと
比べれば、いかに利用価値が高いかを知る
ことができます。
そこで前に触れた炭酸ガスですが、閉じ
込められていたこの炭酸ガスが空中に放出
されるのは、その木の寿命が終る時、つま
り朽ち果てる時や燃やされる時です。
です
から、木材が二度目の役割を終えて朽ちる
時は、なるべく森林に返すのが理想的です。
山で朽ちた木は土に環り、放出された炭酸
ガスは、次の木の成長のための栄養として
吸収されて行くことになります。
廃材を燃やして処理するという考え方は、
決して木を大切に生かすということにはな
りませんし、自然のサイクルにも叶ってい
ないことです。
木を生かすのも、人間が生
きるのも自然のサイクルの中で、自然の摂
理に従うのが最も良いと言えるでしょう。
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木のこかげ です。
木に関するホームページを集めた紹介サイトです。現在、林野庁や関連団体が薦めている「木づかい運動」について、このホームページて紹介されている様々なサイトに情報が載っています。このホームページの製作者もこの運動に取り組んでいるそうですが、みなさんもこのリンク集で情報を集め、「木づかい運動」に取り組んでみるのはどうでしょうか。日本の森を育てていきましょう。また、地球環境と木材についての記事もあります。他にも、木のこかげ樹木として、ヒマラヤスギ、ユリノキ、イロハモミジ、カキなどの樹木が写真などと一緒に紹介されています。
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