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日本の家 ―古い民家と蘇える民家(民家再生)
日本の住文化復興への民家再生のネットワーク「民家再生リサイクル協会」の誕生と活動
設立から2年、1000名の会員を擁する非営利団体(NPO)
が、時代の要請に応えてめざましい活動を展開している。
日本の気候・風土に根づき、先人の叡智が造ってきた民家。
数十年、数百年の暮らしを支えてきた環境循環型のエコロジ
ー住宅が、老朽化と近代化という妖怪に押されて次々と潰さ
れてきているときに、民家のよさを生かしながら21世紀に
向けて蘇えらせようという輪の急速な広がり。
その先頭に立
つ「民家再生リサイクル協会」(JMRA=ジェムラ)。
設立以来、協会の理事長を務める佐藤彰啓(さとうあきひろ)
さんを千代田区平河町の事務所に訪ね、その心意気と活動を
聞いた。
■
民家再生は時代と社会の要請
「もうこれ以上、大量生産、大量
廃棄の工業化社会は許されないとこ
ろへきています。
住まい自身がリサ
イクルを求め始めている時に、民家
保存ではなく、古い民家の良さを今
の時代に蘇えらせることが必要」と
開口一番語りかける佐藤さんは、民
家の再生とふるさと文化の復興に情
熱を傾けています。
佐藤さんが、数名の仲間とともに
民家再生の運動を起こし始めた根っ
こに、歩んできた足跡が生きていま
す。
それは、大学を卒業して「家の
光」の編集者として20年、全国を
まわり農業と農村を見続け、考え、
各地の地域づくりに関わってきたこ
とにあるようです。
それぞれの地域の豊な風景が、高
度成長と都市化の波に押し潰され、
若者を都市に追い立て、農家の住ま
いを新建材とプレハブに替えさせ、
全国どこへ行っても同じ風景にして
しまいました。
それらが「地方の暮
らしと文化」「日本の住まいの文化」
の崩壊を呼んできました。
高度成長の行き着いた末に飽和か
ら混乱と衰退へ傾き出した都市と社
会、若者や第三の人生を考える人た
ちのUターン、Iターンが始まって
います。
この時代の変化に佐藤さんは、ふ
るさとを求める社会人を支援する窓
口として、東京・四谷に「ふるさと
情報館」を設立。
田舎暮らしを希望
する都会人と受け入れを望む地域と
のコーディネーター的事業を展開し
てきたのです。
その中で強まってきたのが民家の
再生の必要性でした。
都会から帰っ
てきた若者達や田舎暮らしを求める
都会人を迎え入れるには、不都合の
多い民家の修復や改築が必要になり
ます。
ハウスメーカーの攻勢で生か
せるはずの民家や梁・柱などの部材
が壊されて行く下で、日本の木の文
化を残し、蘇えらせる必要性が高ま
ってきています。
「農山漁村の過疎高齢化はまだ続
き、たいへん多くの空き家が生まれ
ています。
今後もっと増えるでしょ
う」と佐藤さんは語ります。
長野県
だけでも3000戸を超える空き家があ
るといいます。
「これから10年間
こうした民家が消え去ってしまうか
どうかの大きな山場ではないか」
「全国各地で、地味ではあるけれど
民家再生に取り組まれている実に多
くの方々がいらっしゃる。
しかし横
のつながりがない。
民家に対する思
いがあってもどこに持ち込めばいい
のか分からない状況」を前にして協
会設立への佐藤さんの行動が始まり
ました。
伝統木造建築の研究者や建築家の
集りだけではなく、工務店や大工さ
ん、民家づくりの職人、民家に住み
たい人、民家の古材を利用したい人
など、日本の民家に関心のある、あ
らゆる人々の全国的なネットワーク
組織づくりが課題として浮かびあが
ってきたのです。
数名の建築家と話し合い、準備を
すすめ、平成9年1月に、「民家再
生セミナー」を山梨県牧丘町という、
東京からもっとも近い民家の宝庫と
もいうべき地域で、再生された民家
の見学会を兼ねて開催したのが第一
歩でした。
セミナーには50名が参加して大
成功を収めましたが、そのセミナー
の開催とともに「民家再生リサイク
ル協会」の設立が呼びかけられまし
た。
■
環境循環型の社会の再構築へ
呼びかけはマスコミでも報道され、
大きな反響を呼んで1000名をこえる
賛同と問い合わせが寄せられ、その
声を背景にその年の9月に130名の
出席で設立総会が行われました。
日
本の住文化を見直す運動の母体とな
る組織が誕生したのです。
総会では、会長に能役者で演出家・
京都造形芸術大学教授の観世榮夫さ
んが選ばれ、佐藤理事長のほかの役
員の選任と設立趣意書、会則、事業
計画等が決められました。
設立趣意書では「幾世代も風雪に
耐えてきた日本の民家が、経済・社
会構造や生活様式の変化の中で取り
壊され、また農山漁村のいっそうの
過疎化の中で失われようとしていま
す。
黒光りする大黒柱、手斧で削っ
た太い梁、木彫りの欄間等、伝統的
な日本の住まいは、地元に育った木
とその地域の人々の技術で、それぞ
れの風土と暮らしにあった特色ある
民家を形成してきました。
民家はい
ちど滅びれば再び得ることの出来な
い、日本人が創造した『日本の住文
化』の傑作と言えましょう」と訴え、
リサイクルを意に介さない経済性優
先の社会の進展、地球的規模の環境
破壊に警鐘を鳴らしています。
そして、環境循環型の生活・生産・
社会システムの再構築と民家の再生
リサイクルをよびかけています。
協会の性格は第1に「マスコミ・
文化人・研究者・建築家・工務店・
職人・民家所有者・民家に関心を持
つあらゆる人々の全国的なネットワークで活動する非営利団体(NPO)
である」
第2に、「学術・研究団体である
とともに、全国各地で民家再生リサ
イクルが実際に行われるための有効
な活動が支援できる組織である」
第3に「いわば〝大きな器〟であ
って、そこに盛られていく中身はそ
こに参加する会員自身がボランティ
アで創っていく」
第4は、財政的な基盤は会費で成
り立つ、と定められています。
設立に当たっての論議に、協会の
名称問題があったと言います。
民家
は何度も再生・移築されて人々の暮
らしを支えてきた優れた環境循環型
の住まいであったことから〝再生〟
は当然のことでした。
問題は〝リサ
イクル〟でした。
〝リサイクル〟と
言う言葉には、自然生態系の循環と
いう意味があり、自然に合った「こ
れからの住まいの在り方」「住まい
の文化」を考えるという大きな目的
があるという意味が込められていま
す。
民家の保存に止どまらず、住ま
いの文化を考えるということで〝リ
サイクル〟がつけられたのです。
■
進む民家再生と古材の流通ネット
NPOとしての事業活動は、①情
報広報活動として情報誌「民家」の
発行、②民家バンクを設立し、民家
を提供したい人と民家に住みたい人
との縁結びの活動、③民家相談室、
④民家再生リサイクルに事業の推進
の4つを柱にしています。
民家バンクの活動は、「壊すから」
との連絡が協会に寄せられたら、然
るべき会員がその民家を調査するこ
とになります。
そして、その内容が
民家バンクに登録され、情報誌「民
家」その他で情報発信され、相手探
しへとすすむ仕組みになっています。
現時点での登録は100件程度といいま
すが、協会がサロンではなく、全国
各地で実際に民家が再生されていく
状況を具体的に作り出すことにあり
ます。
それにむけての民家再生リサ
イクルが広範に行われるための中枢
を担うのが、建築家を中心に工務店、
職人を含めた実動的な事業者協議会
です。
事業者協議会には、現在、約100人
が参加し、現場見学セミナーの開催、
技術交流の推進を図りながら、民家
の相談や調査、再生リサイクル活動
をすすめており、その成果は日を追
って増してきています。
協会では、再生した事例の登録制
度を確立し、毎年、民家再生事例集
を発行する計画をしています。
そし
て、その中で特に優れた事例には
「民家再生リサイクル大賞」を贈る
ことにして、その具体化を検討して
いるといいます。
また日本より民家
の保存活動が進んでいるヨーロッパ
を中心にした国際交流を強めたいと
の意向です。
同時に力を入れているのが、町づ
くり村づくりにおける景観、街並の
保存、公共施設への民家活用に関す
る調査提言、国産材の有効活用に関
する研究提案、さらには、建築廃棄
物の減量化に関する研究提案活動の
推進などと、民家再生リサイクルか
ら自然・環境対策、日本の住文化の
向上へと幅広く取り組んでいます。
最近もうひとつ具体化された活動
が古材流通ネットワークの活動です。
すでに山梨県では大量の古材の流通
基地として、会員企業による古材セ
ンターが活動を展開しており、近く、
全国13ヶ所でセンターを建ち上げ、
「民家バンク・古材流通ネットワー
ク」として古材の情報交換と流通を
行う準備がすすんでいます。
■取り壊される民家を救おう
協会の悩みのひとつは、まだまだ
救えずに壊される民家が多いことで
す。
相談や譲りたいという申し出があ
っても、その民家の調査、民家バン
クへの登録と情報発信、相手探し、
再生リサイクルの青写真づくりまで
はどうしても日時が必要となります。
その上、取り壊しは、ブルドーザー
で押し潰すようなわけにはいかず、
建て上げた時の逆の順で丁寧な解体
と箇所ごとの番号付け(番号をつけ
ること)など時間と労力が必要とさ
れるからです。
しかし、相談に来るのは取り壊し
を直前が多いのが現実。
この壊され
ていく民家を救うには、協会の活動
の強化や会員の増強、民家を求める
人の大量リスト化、古材センターの
強化、そして何よりも協会の認知度
の向上が必要となります。
協会を中心にした民家再生リサイ
クルの活動も急速に発展してきてい
るとはいえ、その対象は、壊される
民家の数には及ぶべくもなく、これ
までに取り壊された貴重な民家は数
限りなくあります。
協会の国際交流委員長で自ら新潟
県に民家を再生して住んでいるドイ
ツ人建築家のカール・ベンクスさん
は、ヨーロッパ、特にドイツでは、
「日本の大工さんの技術は素晴らし
い!」という非常に高い評価がされ
ていると言います。
特に木組みの技
というものは、ドイツの職人には真
似ができないと言われています。
さらに、ヨーロッパでは新しいも
のより伝統のある古いものを大切に
し、新しい家を建てる場合も周囲と
の調和を大切にしているのに「なぜ
日本人は、宝石を捨てて砂利を買う
ようなことをしているのか」と嘆いているといいます。
佐藤さんは、この現実を「建築に
携った人たちが、民家と日本の住ま
い、文化を考え、行動して来なかっ
たからだ」と無念の表情を浮かべま
す。
民家を保存し、いにしえを忍び、
現代の暮らしに生かすことを真剣に
考えてこなかった。
そして、プレハ
ブに敗け、流された結果だという悔
しさがあるからです。
「農村から都市へ、右肩上りのみ
を追い求めてきた、その最後の行き
着いた先がバブル崩壊ではないか。
大量消費の都市社会は完全に行き詰
まり、ダイオキシン問題を含め、環
境破壊は生命の存続すら脅かし、さ
らに、阪神大震災では、都会が安全
で快適だと言う神話も打ち砕きまし
た。
文字通り都会は空中の楼閣だっ
たのです。
農林業や農山村を顧なか
った都市が大変なしっぺ返しを受け
ている。
都会では、水も空気も食べ
物も作ることができないことがはっ
きりしてきたから、食や健康、環境、
そして豊な自然を求めて農村への関
心が高まっているのが今だ」と佐藤
さんは言います。
川下の都市が、川上の農村を吸収
し、一極集中させた矛盾が極限に近
づき表面化しているからこそ民家の
再生リサイクル活動を強め、川上と
川下が手を結ぶことがいよいよ大切
になっているのです。
だからこそ田
舎へ行きたいという都会人のサポー
トが必要になっているし、民家の再
生リサイクルがいよいよ大切になっ
ていると受け止めているようで、さ
らに、この運動の輪を広げる意欲は
並々ならぬものを感じさせてくれま
す。
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