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木の家を楽しむ住み人の声

桜湖の里・ヘルシーハウスに春が来た

 

大阪市北区/㈱CEM椎原総合設計 椎原 毅

● 都会からの移住者が集う

「住み、集う人々の心と健康を大切にし、自然を感じ、健康で豊かな生活をいつまでも続けていただく、安全で、心地よい住まい」の小集団を山里につくり、都会の劣悪な環境から離れて、自然に親しめ、健全な生活を享受したいと希望する都会人を迎えたいという想いで岡山県久米郡旭町に桜湖の里・ヘルシーハウスがつくられたのが98年の暮れであった。
(本誌第3号特集Ⅱ「国産材を生かす住まいづくり」で紹介)神戸で画廊を営み、旭町とも深い関係を持つ改田敏夫さんの描いた構想を建築家の椎原毅さんが形にしたのが桜湖の里のヘルシーハウスだった。
計画は、改田さんが所有する土地に5~6棟を建て、都会から移住してきた人たちの小さな集団を育て、町人との共生的調和を構想したものだった。
在来工法を基本にして発展させた木造の住まいで、すべて地元岡山の杉・檜をふんだんに使っている。
外壁は杉板2枚貼りにして、内壁にはさらに杉板を横貼りにした3層で断熱性を持たし、床は檜の27㎜厚の縁甲板、天井も杉板を貼っている。
構造用の土台角と柱は檜材、梁には荒削りにしたまま地松、造作材は杉・檜といったように、木づくしの家である。
ここには、木に包まれた住まいで夏は涼しく、冬は暖かで、肌にも目にもやさしく、自然と木の香りの心地良さと安らぎをもたらし、安心と健康を育てる家という思想が生きている。
広い開口部からは絶景の山なみが眺望でき、大自然につつまれて田舎暮らしを満喫できるようにと、都会からの移住を募っていた。
改田さんは、まずここに5~6世帯を迎え、近くにもこのような集団をつくる構想を持っていた。
建て売りではなく、住み人に応じてつくり変えることにしていたが、すでに4世帯が入りもう1棟もまもなく完成のとこへ来ている。
住み人同志の交流も気持ちよく盛り上っているようで、近くに新しく区画をされた集団にもすでに1世帯が入っており、仲間としての交流が作られているという。
そこで、椎原さんにお願いして、桜湖の里で3回目の春を迎える高井さんと石出さんから住み人の声を寄せてもらった。
●木の家の住み心地高井和子・満雄「木の家」と出会ってから3回目の春がやってこようとしてます。
岡山県久米郡旭町。
棚田と点在する農家のおだやかな「いなか」です。
私達は元々大阪出身です。
結婚以来30年程、近郊型のマンションにて適当に便利な生活を送っていました。
それが、この前の阪神地震以後、住居のこと、ライフライン、老後の事など何かと考える様になりました。
そして5年後ご縁があったので「木の家」に会うことになりました。
屋根に残雪のある2月でした。
入ったとたん、その強いかおりに声が出てしまいました。
「木のかおり!!」床はひのき、壁は杉、丸太を荒くけずった様な梁。
「これだ!!」それで決まりました。
手続きが終わり初めての「おとまり」をしたのが4月。
ふとんだけを運んで寝ることになったのです。
それが寒いのなんの冬の山小屋のよう。
これには、まいりました。
この寒さにたえられるかーー不安ばかりの夜でした。
なんとストーブ無しだったのですよ。
しかし季節は移っていきます。
ありがたいですね。
そんなで、ここから大阪ー岡山通いという生活が、始まりました。

こちらに通うにつれ、ご近所との距離も近くなり、それぞれが、なにかを持参して集合。
それが大人7~9名。
ナベを炊いたり酒がまわったり、おしゃべり、タバコもモクモク。
これがマンションなら、まず換気扇フル稼働して15分に1回は戸を開けてというところでしょう。
それがこの家では不快感を感じることがないのです。
風が流れているのです。
風の流れは感じないのに風が流れているのです。
私思ったのですが、風が流れているから木が元気でいられるのかなと。
木が元気だから湿気もにおいも吸いとってくれる様。
だから木が元気なら人もその元気をもらえる。
今年も透明なガラス細工ような霜柱が土に建っていました。
雪も数回降ったようです今回は2月十12日頃旭町にいました。
朝起きてストーブをつけると3℃。
なのに「寒い!!」という言葉が少なくなっています。
「ストーブ」もありますしね。
それに2月だというのに日昼は暖くってガラス戸越しに入るお陽さんにね「ありがとう」です。
きびしい暑さ寒さ、おだやかな春秋、この四季の移ろいと一緒にすごせるのが「木の家」でしょうね。
追伸 近くの法然上人の「誕生寺」のイチョウも私の庭で元気に育っています。
そのうち空も見えないような大木になるのでしょうか。
●自然と木の香りの住まい石出恒子桜湖の里へ、サスケ(猫・キジトラオス・6才)を連れて、仙人暮らしを始めて、1年足らず、早春の日差しの中の山里を眺めながらのモーニングコーヒー片手に、「自然と共に簡素な生活、これが一番の贅沢か」と思ってます。

縁あって、ヘルシーハウスを1番に購入し、移り住むまで3年足らずでしたが、その間、月に1、2度、大阪から通ってるうちに、都会での暮らしが何と無意味なものかという想いが募り、仕事も一切をジ・エンドにして、昨年3月末に引っ越して参りました。
こういう想いになったのも、この自然、木の香りの木造の住まいにありました。
初めての草取りの毎日、虫や草で顔がアンパンマンの様に腫れたり、日焼けで真っ黒け。
 木造は、梅雨のベタツキも少なく、夏は日中は暑いが日が落ちると涼しい。
昨年の夏、大阪へ出かけた時、エアコンも効いて、涼しいはずがどうも息苦しい、空気が動いてない、淀んでいる。
3日の予定を一日で帰って来ました。
これが木が呼吸していると云うことだったのか。
夜中、目覚め、虫の声、鳥のさえずりを聞き、朝もやの中、ベランダに立つと、今まで感じた事のない、1人暮らしの不安よりも何か原点に還った、自然に抱かれた様な気持ちになりました。
最近、御近所で都会より来られた方の木造ではない家に招待を受けました。
部屋はとても暖かかったのですが、しばらくすると、息苦しく感じます。
これも木造の違いでしょうか。
冬は、この家は吹き抜けのせいか寒い。
室温は夜、暖房を入れて13度位、大阪ではこんな室温では過ごせないが、ここではそんなに寒いとは感じない。
慣れもありますがやはり木造が和らげてくれるのではと思ってます。
30年余りの都会暮らしの中で、スーパー前の広場で老人が何をするでもなくベンチに坐っているのを見て、人生の終わりは、里山で暮らしたいと云う思いはありましたが、この様に具体化するとは思いませんでした。
建築家(椎原氏)、事業主(改田氏)の理想。
"木"への想い。
住人が孤立しない数5~6件(村からも距離を保ちながら付き合える)、住居へのこだわり。
都会のマンション暮らしではここ迄考えは及びませんでしたが、同じ様な価値観を持った方が御近所に居る事で語り合いながら、ゆったりとした気持ちで過ごせるのでしょう。
 又、春が来て向かいの山に山桜が咲き、草取りに追われる日が来ます。
追伸 

3月、改田氏、椎原氏等の御尽力により、隣りに姉夫婦の家が完成する事になりました。
義兄は、大阪から絶対に動かないと云ってました大阪人ですが、何度か来ているうちに気に入ったのでしょう。

家を楽しんでもらえて椎原さんに聞くと、石出さんは、1番目の購入者で、姉のYさんも時々来ていて気に入ってくれていて、移りたいと希望していた。
その主人が絶対に行かないと言っていたというのに、1度遊びにきて、いっぺんで気に入り、「妹の家に泊まるのは気がひける」と言って隣りに新築中で、この4月の完成を待って引っ越すことになっているという。
Yさんによれば、「魅かれるものがあったから」で、「木の家もいいし、地方で自然も発見できた。
施設なども近くにいろいろあって大阪と変らないから」だという。
最初は、来てくれる人がいるかどうか、住んでもらえるのかという不安だったという椎原さんだが、すでに6区画が売れ、新しい区画にも1棟できたことで、初期の目的を達し、ひと安心、ふた安心、それ以上に、「家を楽しんでもらって有難い」という。
新築中を含めた6棟は、最初の家を基本につくっているので、全体の家並みが統一され、移住者が建てた小屋や作業小屋も屋根、外壁にも一体感があるとのことで、整った田舎らしい小集落ができている。
3回目の春を迎えた桜湖の里・ヘルシーハウスの住み人の声に、「あちらこちらに小集団をつくり、そんなネットワークができ、町人との交流もできるようになればより嬉しい」という椎原さんの表情には、夢が広がっていた。

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