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巻頭言
激動の中で21世紀の2年目を迎え、すでに1ヶ月が経ちました
激動の中で21世紀の2年目を迎え、すでに1ヶ月が経ちました。
21世紀への期待にもかかわらず、今年はより一層激変がすすむのではないかと思わ
れます。
この間生起したことや、これからの1年を予測すると完全に20世紀の価値観とシス
テムのすべてが行き詰まり、出口が見えずに噴き出した感じであり、今年は、それが
一層激しくなるのではないかと思われます。
こういう激変をくぐらなければ時代はすすまないということではないでしょうか。
時代の転換期には、古い時代の矛盾が避けがたい現実として現われ、想像を絶する
激動を生み、古い勢力のなりふりかまわぬ必死の抵抗があることは、内外を問わずに
過去の歴史に見ることができます。
そして、いずれもこのような激変の中で古い支配勢力が崩壊し、新しい制度や社会
がつくられてきました。
支配という仕組みがある限り、歴史は繰り返されるというように、21世紀初頭の今
は20世紀の矛盾と残滓を取り除こうとする激動の時代と言えるでしょう。
この激動をもたらしているのは、20世紀自身の自己矛盾であり、矛盾に対する人々
の怒りと意識の高まりにあります。
その背景には、これほどまでに地球を破壊し、貧
富の差を拡大し、すべてを矛盾のるつぼに落とし込んだ「近代」と20世紀を変革しよ
うと決意した大いなる宇宙の意思があるように感じます。
より厳しい1年になるかもしれませんが、現実を時代の必然として受け止め、生起
する出来事の意味を考え、学び、未来を展望することが必要です。
不和雷同や目先の困難だけにたじろいでいては未来は見えてきませんから、大きな
時代の流れの中でとらえ、夢と希望と勇気を持ってすすめるように、一人ひとりが生
き、行動しなければならない年ではないでしょうか。
そのためには、西洋文明に支配された、エゴと支配と競争を基にした古い価値観と
古い衣を脱ぎ捨てなければなりません。
"新しい酒は新しい皮袋に入れよ"のことわ
ざのように、新しい価値観を容れる器を持たなければなりません。
新しい器とは、日本のこころ、森の民のこころであろうと思います。
今号を含め「木のこころ」では、森の民と砂漠の民についてことあるごとに触れて
きました。
森を破壊し、他民族を支配し、収奪する砂漠の民、狩猟民族の価値観と石
の文化が、今日の矛盾をつくってきたのですから、それを乗り越え、地球と人類の未
来を切り拓けるのは、森の民の思想、木の文化しかあり得ないのです。
そこで今号は、「森は生きている、木は生きている」をメインテーマに、森と文明
と日本、スギを生かして山を育てる、内装を蘇らせるをテーマにした特集を組みまし
た。
これを通して、より一層、森と木の素晴らしさや偉大さを再確認させられるととも
に、森と木によってこそ人間が生きていける、森と木によって人間も生かされている
ことを強く考えさせられます。
そして、この地球と森と木は、人類を生み、成長させることを役割としていると、
改めて考えずにはおけないものがあります。
人間が森を破壊し、自然を支配し、他民
族を支配するという傲慢は、必ず自然の摂理、大いなる宇宙の意志によって裁かれる
ということではないでしょうか。
そこから日本を考えると、日本らしさを取り戻すことの緊急性と同時に、人びとの
意識の変化の根底にあるものが、森の民のこころへのめざめに結びついていることが
知らされます。
この流れを、より大きく、早くするために森と木を見つめ直し、荒れている山を育
て、スギを生かし、木の家づくりを広げることが大切ではないでしょうか。
ですから今号も、スギを随所で取り上げています。
「山からの季節の便り」の四季
連載の寄稿を寄せてもらい、「日本人と木」の連載も続けてもらっています。
大変な年かもしれませんが、夢と希望と勇気を持ち、喜びをつくりながら共に歩ん
で行きたいと思っています。
本年もよろしくおつき合い下さるようお願い致します。
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