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巻頭言

21世紀は木と木の家の時代

3月が終り新年度です。

 21世紀は、3ヶ月の助走期間を経て新しい世紀の本番に入るような感じをしているのですが、この間のいくつもの出来事は、断末魔的20世紀のあがきともだえを見せているようです。
 日本の政治を見ても経済と財政政策を見ても、社会不安の増大を見ても、すべてが20世紀の思考と手段では何ひとつ解決できないことがわかります。
 アメリカも有無を言わせぬ権力の力で大統領を決めましたが、NYダウ、ナスダックもダッチロールしながら大きく下落しており、いよいよだなという感じですし、ミールの墜落はロシアを象徴しているようです。
 ヨーロッパでの狂牛病に続く口啼疫の蔓延は、資本主義的経済主義の追求と自然の掟を踏みにじったことへの答と言えるものです。
 自然に対する人間の尊大さや傲慢さに対して与えられた代償がいかに大きいかは、口啼疫だけでなく、形を変えて世界中で見ることができます。
諫早湾の干拓問題もそのひとつです。
 自然をないがしろにして支配し、破壊してきた20世紀、他民族の暮らしを土足で踏みにじり、支配を続けた近代の西洋文明は、その反動と自己矛盾で衰退し、崩壊するしかなくなっているのです。
それに代わる新しい時代をつくりあげるまでには、まだ幾多の犠牲は避けられないかもしれません。
 この人類史的大転換の試練を乗り超えるためにこそ必要なのが、共生と和を軸にした新しい価値観による実践しかありません。
過去の対立・競争を是とした価値観の下では、決して時代を切り拓くことができないのです。
 そこに出てくるのが「和」と「愛」と「互助」を旨とする日本のこころであり、日本の精神的伝統です。
 その実践をすすめる大きなテーマとして今号では「21世紀は木と木の家の時代」を主テーマに特集を中心にして編集しました。
 特集Ⅰでは、山を育てて木の家づくりを広げることを呼びかけ、3つの視点から論考しました。
特集Ⅱでは、銘木を住まいに生かすための対処と座談会を載せています。
特集Ⅲは、日本の木・スギ材の活用をめざす乾燥に焦点を当てています。
 このほかにも、木の家づくりに関する、好評な連載や家づくりの例などを主に構成していますが、これは、木の文化の復興こそが21世紀の新しい価値観をつくる土台になるとの考えからです。
 「日本は木の国」と言っても異論を唱える人はいないでしょう。
 国土の70%が森林で、日本を象徴する気高い富士山に従うように連なる山々。
急峻な山からなだらかな山へ、そして里山から平地へと下り海へ続きます。
 生命を育む美しい水が流れ、山々は世界に例を見ない四季の彩りを演ずる舞台です。
昔からの人々は、この大自然につつまれ、その懐での恵みを頂いて暮らしていました。
 その暮らしを支えてくれるものの真ん中にあったのが森林と木でした。
人々は、森林を生命の源とした自然のサイクルに合わせて暮らしをつくり、文化を育ててきました。
古代から続く日本の文化の中心にあったのが木の家で、木をとりまくように草や土などの自然の素材が使われてきました。
 木が暮らしを支え、文化を育んできたのです。
 日本の歴史と伝統にこそ真に価値あるものがあり、新しい時代をつくる力があることに確信を持って、木の家づくりを広げようではありませんか。
 なお、ご愛読頂きました鈴木有さんによる「エコロジー住宅の奨め」は、今号の第8回を持って終わりとなります。
有難うございました。
また、田原賢さんの「木造住宅の性能を考える」は、今号より接合金物をテーマにした連載となります。
ご期待下さい。
                            酒井哲夫
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