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エコロジー住宅の奨め
●雨水の利用
さらに、屋根の受水面を3つに分けて、樋から雨水を3基の地上貯水槽(各容量200㍑)に導き【写真5】、沈殿後の上澄み水を鉄筋コンクリート製の建物基礎と兼用の地下タンク(容量16t)に貯留出来るようにしました。
【写真6】 この雨水を、
3段階のフィルターと液体塩素の点滴装置を組み合わせた自家浄化システムを通して、濾過・殺菌します。
【写真7】なお、この利用システムのパーツは全て普通の市販品で構成しています。
写真5 縦樋から導いた屋根の雨水を溜めて、不純物を濾過・沈殿させる地上の一次雨水貯留槽。
槽の上側からオーバーフローした雨水が導水管を通って地下の貯水槽へ導かれる。
槽の下端のバルブを開放すると、タンク内の雨水と共に沈殿物が排出・清掃される。
凹凸のある上部の縦管は初期雨水分離槽。
ここで除かれた雨水は槽横の太い縦パイプを通って側溝へ流出。
写真6 16tの容量を持つ鉄筋コンクリート 造の2次雨水貯留地下
タンク。
その上部は車庫、さらに書斎と小屋裏収納ロフトが積層し、
ここのみ3階建て。
車両・書籍・収納物が入り、家中で最も重量が掛かる。
奥側は合
併浄化槽、この上も屋外車庫として利用。
写真7 車庫内の雨水自家浄化システム。
地下タンクから貯留雨水を
ポンプで汲み上げ、50と5ミクロンの2段のフィルタと5ミクロンの活性
炭フィルタを通して濾過・脱臭した後、液体塩素を点滴して殺菌し、
屋内の配管系へ。
地下タンクには2本の電磁センサーを挿入、溢水時
には警報ブザーを作動させ、備蓄水位まで減れば電磁弁を自動開閉
して給水を上水道系に切り替え。
停電時に備えて、手動バルブと手押
しポンプも装備。
家内のどこかで浄化雨水の給水が始まり水圧が減じると、この
タンクに直結している給水ポンプが自動作動し、地下タンクに貯
留されていた雨水が浄化装置内に送り込まれます。
自家浄化シス
テムのフィルターは機械設備で普通に使われているポリプロピレ
ン製。
第1段の50ミクロンと第2段の五ミクロン入りのケーシングを
通った後、臭いを取るため活性炭入りの5ミクロンのフィルター
を通過します。
これで通常の細菌までは濾過されますが、極小の
ウイルスは濾過し切れないので、最後に液体塩素を給水管内の通
過水に点滴して、殺菌に万全を期します。
その濃度は水道基準下
限の0.1から0.2ppm程度になるように調整。
この位の濃
度でも殺菌力は十分あり、なおかつ曝気や煮沸で殆どの残留塩素
分は簡単に除去されるようです。
濾過水の大部分は前述の太陽熱温水器に給水し、風呂・シャワ
ー・洗濯・台所の洗い物用に給湯しています。
残りは給湯用の冷
水補水の他、庭木への散水、掃除用などの雑用水にも使います。
約1年半水質検査を続けましたが、天然のミネラルも含んだ水
道水より上質のおいしい水で、飲用にも十分耐えうることが分か
りました。
まさに「天の恵み」と言うに相応しく、今では無尽蔵とは言え
なくなった貴重な水資源・水道水の消費を節約することになりま
す。
特に、大半の地表面がコンクリートで塗り固められた都会で
は、街中に自前の水源を持ち、ひいては洪水に備える調節機能を
持つことにもつながります。
ただし維持管理の手間は掛かります。
例えば、降雨初期は空中
の汚染物質と屋根面の堆積物が混
入するため、初期雨水を分離する簡単な装置を地上貯水槽の流入
口に取り付け、粗目のフィルターを通して貯水していますが、こ
のフィルターには、落ち葉やカナブンなど動物も引っかかること
がありますので、週に1度は清掃します。
地上のタンクに沈殿槽
を設けているので、月に1度位はタンク下端のバルブを手で解放
して(手間はそれだけですが)、中の貯留水とともに沈殿物を洗
い流してやらねばなりません。
これで雨水中の混入物はほぼ完全
に除去されますが、それでも地下の貯水槽底には微粒分が僅かに
堆積します。
わが家では、外で暮らしている家族が夏休みに古里の家に集ま
る時期に、この大きな槽内の貯留水を全部電動ポンプで汲み出し
、槽内の大掃除をみんなで行うことを、年中行事に組み込みました。
【写真8】
また、地下タンクが満水になれば、溢流処理の安全装置は一応
組み込んでありますが、ブザーが鳴り警報ランプが点灯します。
豪雨時なら夜中でも地上タンクの手動バルブを解放して、地下貯
水槽への流入を止めねばなりません。
3段階のフィルターも次第
に目詰まりを起こすため、順に3ヶ月、6ヶ月、2年を目途に交
換を要します。
けれどもわが家では、煩わしさの反面、こうし
た協働作業を通して家族としての絆を実感し、また定期的な維持
管理を通して、多様で微妙な日々の自然の変化と向き合いながら
暮らしている豊かな充足感も味わっています。
余談ながら、わが
家を訪れたどの客人も入浴後に、「天水」を「天日」で温め、「薪」
で追い焚きした槙製の風呂の湯は、まろやかで身体の芯まで温まる、
と言われます。
●非常時のライフラインの備え
私の研究の専門分野は「耐震工学・都市防災学」です。
せめて
わが家のライフラインは大震災後にも自立出来るようにしたい。
まずは最も基本的な生活水を常に続けて確保できるようにして、
周辺の世帯と一緒に生き延びられるようにしよう、との考えから
始めたのですが、これだけの貯水があると、家1軒消火できるほ
どの防火水槽にもなりました。
渇水期に備えて、備蓄用の貯水を
確保しながら、雨水と水道水を自動又は手動で切り替える仕組み
や停電時に地下タンクから手動で水を汲み上げる手押しポンプも、
もちろん備え付けてあります。
【写真8】
写真8 稼働を始めて最初の夏の地下貯水槽清掃風景。
このときは設備工事担当技術者の協力を得て清掃体験。
次季からは家族協働による年中行事に。
地下貯水槽にはセンサーを挿入して、備蓄水位を設定しておき、
使用量が増えてこの水位に達したら、センサーが感知して電磁弁
が作動し、普通は自動切り替えが行われます。
停電時や機器の不
調時には、手回しバルブの開閉で切り替えが出来る管路構成にも
してあります。
また、太陽光発電を導入したので、電気系のライフラインも自
立可能になりました。
同じ趣旨から、ガスの停止に備えて、風呂の追い焚き用熱源に
は灯油のほか、薪や炭も使えるように、多重燃焼釜にしました。
普段も植物燃料を使えば、それだけ化石資源の使用を抑えること
が出来るわけです。
なお、居室内の暖房は、今は輻射熱方式の灯油ストーブを使っ
ていますが、次の冬季からは、木質ペレット(樹皮や廃棄木材を
砕断し低温熱で固めた銃弾状の固形燃料)を使い、かつ現在のス
トーブ並に扱いやすい「ペレットストーブ」【写真9】に変える
予定です。
このように、震災への備えが実は、他の自然災害や日常災害へ
の備えにも、また地球環境の保全にも役立つことが分かります。
>
写真9 木質ペレットを自動燃焼させる「ペレッ
トストーブ」。
これは木質エネルギー利用の先進
国スウェーデン製。
[メーカーカタログより引用]
日本でもオイルショック後に開発・製造されたが、
今は製造している所無し。
最近見直しの機運急
上昇中。
●
室の内外で緑化を
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