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木造伝統住文化の都市への再生をめざして

実験

関西木造住文化研究会(KARTH)の取り組み地震に耐えうる木造町家の可能性を実験を通して考える―伝統的軸組構法による木造土壁のせん断耐力試験の結果から―
●木造土壁の耐震性能 阪神・淡路大震災では、古い木造住宅が多数倒壊や崩壊を起こして、多くの人命を奪い、大火の誘因となり、大災害の引き金になりました。
また、住まいの場を消失してわが家とわが街での復旧を困難にし、復興を遅らせる原因にもなりました。
この現象が一時は、日本の伝統的木造構法が耐震性に欠けるとの世評を生み出したように思います。
しかし、その後の詳しい調査や研究が進むにつれて、基本に忠実に健全に施工された伝統構法の木造住宅は激震地にあっても多く生き残っていることや、古い建物でも維持管理や更新が的確に行われているものは高い耐震性を保持していることなどが明らかになってきました。
あの大震災を経験して、建築学研究の場では、改めて伝統的木構造に注目し、主には土壁の耐震性能を確認するための静的な加力実験や動的な振動実験が、少しずつ行われるようになりました。
それらの結果はおしなべて、伝統的な技法で丁寧に施工された土壁の剛性(変形を抑える能力)と耐力(外力に耐える能力)はともに予想以上に高く、また大変形による大きな亀裂や部分剥落が生じても意外に崩落せず、耐力が急速には失われない粘り強さを持つことを教えています。
しかしその反面、土壁の耐力性状は、材料の小舞下地や塗土の性質も施工性も多様なために、試験体毎に変化します。
土壁の耐震性能として一般化を図り、その耐力特性が計量化しうるようになるには、目的意識を明確にした実験を重ねていく必要があります。
今回、KARTHの西陣京町家の修復・再生プロジェクトでは、木造土壁の耐火と耐震の性能を同時に実験的に明らかにしようとの企画が生まれ、多くの方々の無償に近いご協力を得て、実現しました。
こうした大がかりな実験が実施できたのは、防火性能に関わる実験結果を報告した前号の寄稿に述べられているような協力体制が取られたお陰です。
ここに改めて、試験体の製作と搬送を始め雑務の多くを担って下さった心傳庵数寄屋研究所の木下孝一棟梁に、また実験の実施を担当された近畿大学理工学部建築学科の村上雅英助教授と同研究室の皆さんに、そして実験に関わる多くの準備や補助の作業を分担して下さった研究会の諸氏に厚く感謝の意を表します。
本号では、土壁の面内せん断耐力試験(試験体の耐力特性を調べる標準的な静的加力実験)の結果を報告して、伝統的構法で造られた木造住宅が持つ耐震性能の可能性について考察します。

改修前 改修後
●実験のあらまし 今回の実験は、「関西木造住文化研究会」が取り組んでいる既存の西陣京町家[写真1]を対象とした修復・再生プロジェクトの一環です。
このプロジェクトに関わる数寄屋棟梁や左官職が自らの技と智恵と工夫を結集して製作した修復工事に採用される木造土壁と、京町家の修復に現在多く用いられている一般的な木造土壁について、両者を比較しながら、その耐震性能を8体の試験体の静的水平加力実験によって確認・検証しました。
使用する木材や塗り土の材料特性、製作される壁土の力学特性を、能う限り基礎データとして測定し定量化して、試験を実施しています。
まだ解析を継続中のため、今回は試験結果の概報を取りまとめました。
追って、木材や塗り土の試験データを含めて、総合的に検討した詳細な報告書を作成する予定です。
実験は2000年4月10日から13日にかけて、近畿大学理工学部の建築学・土木実験棟で行われました
実験風景
●用いた試験体 修復工事で使用された棟梁仕様「KN工法」の内壁2体と外壁一体、京町家の修復や建設で現在よく使われている仕様「一般工法」が同様に内壁二体と外壁一体、「KN工法」の木造軸組のみが2体です。
試験体の仕様を表1に、その軸組図を図1に示します。

●実験の方法 日本で現在行われている木造耐力壁の標準的な耐震性能試験の方法「漸増交番静的水平加力面内せん断試験」に則っています。
試験体に加える鉛直荷重として、瓦屋根+土壁仕様(1階分)相当重量の鋼製重錘1175kgfを梁上に搭載しました。
試験体の柱脚は、「交番加力試験」では、土台の水平+上下移動のみを鋼製治具で固定、柱の引き抜き防止には、固定用の金具等を使用せず。
また最終の「一方向加力試験」では、浮き上がり側の柱頭・柱脚間を2本のタイロッドで固定、としました。
水平加力は、オイルジャッキを試験体の梁材に取り付けて、手動の変位制御で押し引きして与え、みかけの変形角で1/600、1/300、1/150、1/100、1/60、1/30rad. を押し引きの最大振幅とする各2回の交番漸増加力としました。
その後にタイロッドで固定して、1/10rad.迄(或いは大破壊の直前で停止)の一方向加力を行いました。
●測定の方法 加力荷重をロードセルで、試験体軸組の水平・垂直変位を変位計で測定。
最後の試験体「A―2」では、土壁と軸組間の相対変形を変位計で測定しました。
接合部引抜試験 なお、軸組のみ試験体「E―1、E―2」のせん断試験実施後、柱脚と柱頭部分を切り出し、その接合部の引き抜き耐力試験を実施しました。
●実験の結果 代表的な実験結果の例として、「KN工法」「一般工法」内壁の「A―1」「B―1」試験体の履歴曲線(加力荷重―軸組変形角の関係)を図2に、全試験体の結果をまとめた履歴曲線の包絡線を図3に示します。
また、木造住宅の耐力計算に汎用されているいわゆる「壁倍率」と最大耐力を1/300rad.時の耐力で除した「安全率」を図4に示しました。
そして、幾つかの試験体の最終破壊状況を写真3~6に載せました。
なお、図3と図4には、秋田県立大学木材高度加工研究所で最近実施した「伝統型と在来型の耐力壁に対する同種のせん断試験結果」を比較のために付しました。

日本で利用されている木材全般を捉えた材質データをまとめたホームページです。掲載されているデータは、針葉樹か広葉樹かどうか、学名、英名、標準和名、別名・地方名、分布地域、比重、収縮率(接線方向、半径方向)、曲げヤング係数、縦圧縮強さ、縦引張強さ、曲げ強さ、せん断強さの14項目です。検索方法は、学名で調べる、英名で調べる、和名で調べるの三通りあり、基本はフレームを採用していますが、フレーム無しでも利用することができます。基にしているデータは、日本材料学会「木材化学工業辞典」の資料作成のために、京都大学佐道先生を中心として行われた実験によるものです。 ホームページは 世界の木材905種 材質一覧  です。
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