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漆喰
住宅の洋風化にともなっ
て都市部では見かけることの少なくなっ
た漆喰壁。
人々の自然環境への意識の高
まり、住宅建材から発生する有害物質な
どの問題で健康問題への意識が高まる中
、日本古来の漆喰壁も見直されつつあり
ますが、今回は、日本壁の中でも漆喰に
スポットを当て、その工法と特徴を紹介
します。
歴史と工法
塗り壁の歴史は古く、奈良時代、仏寺
建築とともに始まり、普及していったと
言われていますが、社寺や権力者だけが
使う高級なもので、権威の象徴ともされ
、一般の家屋の壁は荒壁にとどまってい
ました。
塗り壁を作る技術の問題もあり
ましたが、上塗りに使われる材料に混ぜ
る糊料として米が使われており、塗り壁
は非常に高価なものであったのが大きな
原因だと考えられます。
江戸初期に糊料
として角又などの海藻が使われるように
なったことで、作業性も向上し、漆喰、
色土上塗の施工が容易になり、また上塗
りの材料が庶民にも手に入れやすくなり
一般の家屋にも普及しました。
漆喰壁を作る工程ですが、まず竹小舞
を作り、わら縄で巻き付けます。
次に荒
壁を片面から塗り付け、乾燥後、反対側
の面にも同様に塗り付けます。
この工程
のことを「裏返し」と呼びます。
「裏返
し」は場所によっては不可能な場合もあ
ります。
乾燥には時間がかかりますが、
壁の強度を上げる働きがあります。
次に「ちり回り」と「貫伏せ」です。
「ちり」とは真壁の四隅のことを指しま
すが、「ちり回り」とは中塗の仕上面を
そろえ、ちりぎわに隙間が出来ることを
防ぐために行われるもので、最もていね
いな方法は「のれん打ち」「ひげこ打ち
」ですが、ちり墨(中塗の仕上がり線)
に沿って土または漆喰をつけるだけのこ
ともあります。
「貫伏せ」は塗り残して
おいた貫の上全てに、麻もしくはワラを
貼り付ける作業です。
これは貫の部分か
らの割れなどを防ぐ目的があります。
その次が、「底うめ」です。
荒壁面に
1回うすく中塗り土をこすり、乾燥後「
中塗」が行われます。
この「中塗」まで
の工程は土壁と同じです。
この「中塗」
が完全に乾燥してから、上塗りで漆喰が
塗られます。
漆喰の作り方ですが、漆喰の主成分は
消石灰(水酸化カルシウム)に海草と、
スサと呼ばれる麻を繊維状にほぐしたも
のを混ぜ合わせます。
このスサは乾燥後
、漆喰が割れてくるのを防ぐ働きがあり
、海草は糊の役目をし、作業をしやすく
します。
また漆喰は早く乾きすぎるとひび割れ
を起こしやすくなるので、乾燥のスピー
ドを調整する役割も果たします。
現在は
、既調合の材料がありますが、季節や天
候によって、乾燥時間に差が出るので、
その日の天気によって配合する材料の分
量を調整しなければいけません。
調合された漆喰はすぐに使用するので
はなく、2ヶ月ほど寝かせてから使用し
ます。
寝かせることにより、材料とスサ
がよくなじみ、粘りが出て作業がしやす
くなります。
漆喰は一度に塗ってしまうのではなく
、薄く何度も塗り重ねて仕上げていきま
す。
このように漆喰に限らず、塗り壁は非
常に手間をかけて作られるので、完成す
るのに町屋などで3ヶ月から半年、長期
の場合は1年、2年とかかる場合もあり
ます。
漆喰の特徴
漆喰の良さとしては、まず美しさが挙
げられます。
壁は建物の中で占める面積
が広いので、多くの人の目につきやすく
、その白さも天然の素材を使っているの
で目に優しい白さです。
新しく建てた家
でなくても塗りあがった壁の白さは非常
に美しく、年月が経って黒くなってきた
柱との対比で一段と鮮やかに映えます。
また古くなってきてもコンクリートなど
のように汚くはがれたりせず、傷んでき
た部分も、それらしい味わいとなります。
耐久性に関しては、土壁に比べて雨に
は比較的強いと言えますが、やはり風雨
にさらされる部分は劣化が早まりますの
で逐次修理が必要となります。
漆喰は耐火性や調湿性も有することか
ら土蔵の上塗りに使われますが、震災後
も土蔵は倒れずに残っていたと言われる
ように、厚く塗られた壁は地震などにも
強く、それでいて通気性もよいので空調
設備をわざわざ取りつけなくても、夏は
ひんやりと涼しく、年に数回の虫干しで
中のものを保管することができます。
漆喰壁は工期に時間がかかり、単価も
高いと思われるかもしれませんが、「工
期」が長いというのは言いかえれば、そ
れだけ手間をかけ、耐久性を高めている
と言えますし、天然素材を使っているの
で、現在大きな問題となっている有害化
学物質を排出することはありません。
初
めは工事費が高くついても、古くなって
も補修が可能ですから、長い目で見れば
メリットが大きいと言えるのではないで
しょうか。
漆喰塗りの現場を訪れる
京都市山科区で社寺の漆喰壁や京壁を
手掛ける浅原雄三さんを伏見稲荷大社の
漆喰塗りの現場に訪れました。
漆喰は調合した後、2ヶ月ほど寝かせ
てから使用されますが、使用する前に石
灰を増やしたり角又を増やしたりして季
節や、その日の天候に合わせた調整をし
ます。
同じ一枚の壁でも塗る位置によっ
て調合の仕方も変えられています。
漆喰は鏝を使って、薄く何度もていね
いに塗り付けていきますが、漆喰だけでなく、漆喰を塗る鏝も、場所や天候によ
って使い分けるので、その日に必要なも
のだけを現場に持って来るのだそうです。
鏝の種類は数100種類にのぼり、使
い込んだ鏝を先輩から譲り受けたりもす
る、職人の技と魂が生きる道具で、昔の
職人さんは自分の使いやすい道具を考え
道具屋さんに注文していたと言います
。
この鏝は使用する機会がなくても手入
れを怠ると使い物にならなくなると言う
ように漆喰職人の命の道具です。
漆喰の技術を後世に
漆喰などの塗り壁が見直されつつある
と言っても、やはり昔に比べると仕事の
量は少なくなっています。
そんな中で後継者をどう育てるか、技
術を後世に伝えて行くかが大きな問題だ
と言います。
一人前になるには個人差も
あり、一概には言えないにしても、「塗る
」ことに限って言えば、2、3年もすれば
マスターできるそうですが、気候、天候
にあった材料作り、お施主さんとの付き
合いなど全てを含めて身につけるには「
やはり10年はかかるだろう」と言います。
技術は現場を体験して自分の体で覚え
るものであり、浅原さん自身も、現場で
の仕事を通して技術を身につけ、また大
工さんや瓦屋さんなど異業種の人々と関
わりながら、様々なことを学んできたと
言います。
今では、その現場が少なくなり、技術
の継承がだんだんと難しくなっています
。
「先人たちの気迫が感じられる素晴ら
しい壁を維持し、その技術を後世に伝え
ていかなければならない。
」「時間はか
かるるが、早くできることが、よいと言
い切れるでしょうか。
昔は壁に限らず、
時間がかかった分、ものを大事に使った
。
今の時代は便利で早くできても、その
分、ものを雑に扱うようになっているの
ではないか。
昔に戻ることは難しいが、
私たちは大量生産、大量消費の風潮を見
直す時期に来ていると思う。
」と浅原さ
んは語っています。
参考文献
山田幸一著「日本壁のはなし」鹿島出版会
山田幸一著「左官工事 材料と施工方法」
工業調査会
世界の国章と国旗を紹介しているホームページです。国別に国旗と国章の画像とその解説、他にも国花やこの国の樹木、木材、林業関係切手などについて紹介されています。五十音順に並べられているタイプと地域別順に並べられているタイプの2種類の並びがあり、調べることが出来ます。現在は、94カ国分の国章と国旗が掲載されています。国章に樹木をモチーフにしている国が多くみられます。アゼルバイジャン共和国、アメリカ合衆国、アルジェリア民主人民共和国、アルゼンチン共和国、アンティグア・バーブーダ、イエメン共和国、イスラエル国、イタリア共和国などの国があります。ホームページは
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