「森があるから人間は生きていられる」と言っても疑問を持つ人はいないでしょう。
特に日本の場合、どこにいてもすぐ近くに山があり、樹木が繁っていますから、至極当たり前のことでしかないのでしょう。
しかし、当たり前というのは、近くに山があり、森があるという姿のことで、森の働きのお蔭で生きていられると受け止めている人は少ないのではないでしょうか。
見馴れていると、そこに問題意識を持たなくなるのが普通なのでしょうが、今号では、改めて森にスポットを当てることにしました。
その理由は、直接的には、前号特集「なぜ日本の木が使われない」でも書いたように、戦後の人工林政策と国産材を使わさないための企みを主因に、杉山を中心とする日本の山が至るところで荒れているからで、この死にかけている山を蘇らせなければ大変だということがあったからです。
それ以上に考えるべきことに、地球的規模であらゆる面に矛盾が広がり、危機的状況になっている根本原因が、20世紀的な支配、「近代」の西洋文明の支配によってもたらされたものであることです。
そして、この西洋文明の思想的根源が、森を食い潰して豊かさを求め、文明を興しては、砂漠化を広げた砂漠の民・狩猟民族の思想で、それを「近代」風に装ったものでしかないからです。
この支配と20世紀型のシステムを転換させることなしに、21世紀を開くことはできません。
そこで求められるのが森の民の思想、森の文化を継承している日本の役割です。
一人ひとりが心を合わせ、森のこころを取り返し、森を育て、木の文化を大きく盛り立てることが、結果として激動と混沌の世界に導きの明かりを灯すことになり、21世紀を切り拓いて行くことになります。
その意味で森をテーマにし、人間と文明を考え、日本の明日を考えたのがこ特集です。
この中では、地球と森をはじめとする自然は、人類という存在を生み、育てることを大きな役割としていることをも考えました。
「科学的」に証明することのできない、大いなる宇宙の意志による人間誕生へのプロセスの仮説は、まだ学問の世界では認められてはいないようですが、この仮説をもってしか地球と森と人間の関係を語ることはできないと考えています日本という国の存在の意味と役割も、そこから語ることができるとも考えています。
21世紀を切り拓く日本の役割は、いよいよ大きくなっていると思います。
世の中には、不必要で意味のないものはないと言います。
そこには、必ず何かの意味と役割、課題があるはずです。
その意味でも日本を考えたいと思います。
こ特集を通しながら、昨年12月に新宮様が誕生された意味を考えています。