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木造伝統住文化

木造伝統住文化の  都市への再生をめざして

木造伝統住文化の 都市への再生をめざして
関西木造住文化研究会(KARTH)の取り組み 関西木造住文化研究会:略称KARTH(カース) KansaiAssociation for Research in Traditional Housing 火事に強い木造町屋の可能性を実験を通じて考える
木造土壁の防火性能  
日本の伝統的な町家の構法の基本は言うまでもなく真壁による木造土壁で、前回、紹介された再生町家 KN1実験住宅でも伝統的な土壁が使われている。
市街地に建つからこそ「町家」なのだが、建築基準法 で木造土壁についての仕様的規定では、僅かに土蔵と土壁裏返し塗りが防火構造に認められているに過 ぎず、歴史的市街地の多くを占める準防火地域で、木造土壁の町家の新築や大規模増改築を難しくする背 景となっている。
たしかに、木造土壁では現代の市街地にふさわしい火災安全性を達成できないというのであれば、この ように規制されるのもやむを得まいが、木造土壁では本当に火事に強い建物を造ることはできないのだろ うか? 実は、伝統的な木造土壁については、これまで、防火技術の研究開発はおろか、防火性能の把握さえほと んど行われてこなかったのである。
伝統木造の規制が厳しいのも、木造土壁の防火性能を高めるのが難し いからというより、防火性能に関するデータが足りないからといった方が正確である。
 2×4等がどんどんデータを蓄積し、設計施工基準も整備して木造防火規制の緩和を享受してきたのに 比べて、伝統木造での、そのような取り組みが立ち後れていることは否めない。
KN1実験住宅に取り組 んでいる時に、伝統木造による町家の再興を目指すのなら、木造土壁で市街地建築にふさわしい火災安 全性を実現できる見通しを、実験で実証すべきだという議論になったのだが、それは手弁当の活動として は過激ながら、正論ではあるのである。
 とは言っても、壁の防火性能を調べるには、高さ1階分の試験体を大きな加熱炉に曝して試験するわけ で、それには、試験体の製作を含めて相当な費用が必要である。
実験しようという考えが過激な所以だが、 今回は、KN1実験住宅の再生も引き受けられた木下孝一棟梁が試験体の製作から試験場搬入までの負担 を申し出られたうえ、これまでも伝統町家の防火対策を研究されてきた日本建築総合試験所が実験の意義 を認めて、格安に試験して頂けることになったため、実験の実施にこぎつけたわけである。
優れた防火性能を実験で証明  
今回、実験したのは、KN1実験住宅の道路側妻壁をほぼ再現した工法(KN工法)と、京都ではもっ と一般的な仕様の土壁に防火的工夫を施したもの(一般工法)の2種類である。
前者は厚さ100㎜の土壁の 外側に焼杉板を張った工法。
後者は厚さ50㎜の土壁の外側をモルタル層で覆っている。
 町家だけで考えれば防火構造としての性能を確認すれば良いわけだが、2×4等の実験の経験から推し て、この仕様なら準耐火構造でもイケそうである。
伝統木造が準耐火構造の例示仕様に入っていないとい う残念な現状も考えて、思い切って準耐火構造の試験を行うことにした。
 ちなみに準耐火構造試験は、加熱時に軸組の許容耐力相当の荷重を試験体に加えるのと加熱時間が長い 点で、防火構造の試験よりずっと過酷である。
また、2×4等の準耐火構造については、試験体に大地震 相当の水平加力を与えた後、加熱試験をして地震の影響も把握されているので、木造土壁でも同様の水 平加力を与えた場合と与えない場合を比較した。
 実験によると、水平加力しない場合、両工法とも準耐火時間が一時間を超えたが、大地震相当の加力を 与えた後でも、KN工法は90分以上、一般工法でも51分、加熱に耐えている。
一般の準耐火建築物なら45分、木造3階建共同住宅でも60分の準耐火時間で良いわけだから、壁については 、法令上、木造で望み得る最高レベルの防火性能を達成できることが確認されたわけである。
KN工法に 至っては、実験をストップさせたのは、試験体本体が耐えられなくなったからではなく、試験体 と炉枠の隙間を塞ぐガスケット(耐火1時間仕様)から火炎貫通してしまったからで、壁本体は、木造では 他工法も含めて過去最長の90分の加熱でもまだ余裕があるという成績であった。
更に、大地震級の変形を 与えても準耐火時間がたいして低下しないということは、伝統町家が地震に強い町づくりのツールになり 得ることを意味している。

伝統木造での防火構造の規範を  
もっとも、町家再興を目指すうえで必要なのは、準耐火構造のような大規模建築向けの技術よりも、意匠・ 構法の地域的伝統に合った防火構造の開発や多様化であろう。
今回、準耐火試験でこのように高い成績が得ら れたことからみて、防火構造ならば、通常の木造土壁に軽微な工夫を加えることで、多様な構法を生み出し得 るものと思われる。
 今回の実験は、伝統木造の防火的処遇の改善に対して、技術の面から明るい見通しを開くものといえよう。
しかし、現実に伝統木造の建築行政上の処遇を改善していくには、こうして示された高い性能を、どの現場で も確実に実現する品質管理の確立が不可欠の課題である。
伝統木造の担い手が連帯して、自律的に規範や基準 を誘導するための組織化や活動が進められることを期待したい。
元千葉大名誉教授であり、元日本インテリア学会会長であった小原二郎先生の木材と日本人の文化についての資料をまとめたものを掲載しています。日本人と木材、タテ割りとヨコ割り、木肌の魅力と木用貧乏、木材を生かす愛情の4つに大きく分類されています。それぞれ、鉄やコンクリートには人をひきつける何かが欠けている、桧は切られてから300年間、強さが増す、人に人柄があるように、木材にも木柄がある、看板をわざわざ木材で作るところが日本的、木が生えていたときの条件と同じにしたなど、他にもたくさん紹介されています。資料ひとつひとつの長さは、長すぎず短すぎず、読むのにちょうどいいです。また、英文も同時に掲載されています。  このwebへのリンクは 樹から木までの散歩道 です。
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