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学習のひろば 環境問題の真実とは何か
「風の路」シンポでの「エコロジー神話と建築」に学ぶ
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地球温暖化をはじめとする環境問題、そしてエネルギー問題などが新しい視点で解明され、
従来の環境論・エネルギー論がウソばかりであったとの発表が、「風の路」((社)日本建築
家協会近畿支部住宅部会小委員会)と兵庫県立丹波年輪の里によるシンポジウムで行われた
「木のこころ」も、これまで、地球温暖化の原因がCO2にあることやフロンがオゾン層を破
壊していること、あるいは化石燃料の資源的危機などについて書いてきました。
今後さらに研究が必要な面があるにしても、論理的・実証的に真実と思われるものについて
は、見解を正す考えでいます。
その立場から、7月14日、西宮市フレンテホールで行われたシンポジウム「~誰も言わな
い語らない~使い捨てのできる生活」での槌田敦名城大学経済学部教授による基調講演「エ
コロジー神話と建築」の要旨の一部を紹介します。
読者のみなさんの研究や意見の交流を期待しています。
なお、今後、セミナー等での講演をはじめ、研究や勉強に寄与できると考えるものについて
はこの欄で紹介する予定です。
●ウソばかりの環境問題
古代文明は、農地の生産性を失って没落するまでに長い年月がかかったが、石油文明は、
これまでの文明と違って環境破壊や汚染がすさまじい。この石油文明ではその成立からわず
か50年で回復不能とさえ考えられるまでに環境を劣化させた。
ところが、その中で地球温暖化問題について炭酸ガスが温暖化の原因であるというウソが信
じられている。温暖化と炭酸ガスについて、どちらが原因で、どちらが結果かを見る必要が
ある。温暖化の原因を炭酸ガスと言っている根拠になっているのは、ボストーク基地での氷
の分析調査からの気温偏差と炭酸ガス濃度の偏差を示す表グラフだけしかない。これを正確
に調べると気温変化の半年後に炭酸ガスの濃度が変化している。
このことは、温暖化が原因で、炭酸ガスがその結果変化していることを示している。
また、エルニーニョ現象が起こるとその1年後に炭酸ガスが増えている。海水温が上がっ
たことで、海の中の炭酸ガスが大気中に多く放出されたためである。また、1991~9
3年にかけては、人間が炭酸ガスを出し続けたのに、この2年間、炭酸ガス濃度は増加し
ていない。これは、91年ピナツボ火山の噴火で、地表に届く太陽光が減り、気温が2年
間上がらなかったからである。
最近の温暖化は事実であるが、その原因は、活発化した太陽活動と、熱帯と北極での対
流圏大気の汚染に求めるべきである。炭酸ガス濃度の変化は、海洋表面からの炭酸ガスの
出入りの温度効果として説明できる。
オゾン層破壊について、その原因がフロンガスとされているが、この反応には紫外線が
必要である。
しかし、オゾンホール発生時の南極では紫外線が少なく、この反応は起こらない。オゾ
ンホールの主原因は、南極で高層成層圏の大気の下降によるものとして説明できる。
廃棄物のなんでもリサイクルというのも間違っている。
廃棄物を回収して資源を再生するには、石油をはじめとする別資源を必要とするから、費
用のかかるリサイクルは別資源の浪費になる。
分別は資源の段階で行うべきで、廃棄物となってからの分別は無分別というべきもので、
なんでもリサイクル主義は、良いことだと信じたことを他に押しつけるゲルマン民族のエ
コロジー全体主義の現れである。
人間は、何故そうなるのか、その結果どうなるのか、どっちが得か、などと深く考えるこ
とを止め、成り行きでながされる時代になったようだ。
●エネルギー問題もウソばかり
1960年代に、石油があと30年で枯渇すると脅して、石油に代替する原発が推進さ
れた。しかし、これは大ウソだった。
まず、石油がなくなるのはずの1990年代に、この可採年数は45年と増えてしまった
可採年数とは、原油の確認埋蔵量を年間使用量で割った値である。確認埋蔵量は現価格と
現技術で採油可能な量と定義される。使ったのに増えたのは、技術が向上したからである
そして、石油が欲しくなると価格が上がるから、蓋をしていた井戸からまた石油が出てく
ることになる。このような事情で石油は当分枯渇しない。また天然ガスは事実上無尽蔵だ
から、原発は必要がない。そもそも、石油がなければ原発は作れないから、原発が石油の
代替というのもウソだった。
現在、発電単価は1kw/h当たり火力発電が4~6円、原発はその倍の8~11円で
原発は石油を消費する科学技術を駆使して成り立っており、原発の単価が高いのは、石油
の消費量が多いことを意味している。
自然エネルギーと言って、風力や太陽光発電が言われているが、これもウソである。
風力発電は、発電単価が15円で、風の吹かない時のため、それと同規模の発電源を必要
とするというムダと石油使用を前提としている。
太陽光発電に至っては70~100円の高い単価で、とても実用にはならないし、これ
も稼働率が10%程度で、しかも不安定なため、同規模の別電源の補助電力が必要となる
しかも、装置廃棄時の高費用と破棄物の問題が残されている。
現在言われているエコロジーやエネルギーはウソで作られた神話にすぎないのである。
●地球はエンジン
石油文明は、現在、重大な局面を迎えている。人間社会を環境と調和させるには、熱物理
学を基礎に的確な判断基準(学問)を確立する必要がある。この学問をエントロピー(汚染
の量)経済学という。
活動を維持する物質系は、すべてエンジンの法則により活動していて、入力、出力、物質
循環という3つの条件が必要である。
ここで、小さいエントロピーの入力と大きいエントロピーの出力の差がこの物質系の活動
の原因である。また、物質循環によって系の状態が復元され、また同じことをするという方
法で活動は維持されている。
環境破壊とは何かは、地球環境もまたエンジンととらえると理解できる。太陽光を地表で常
温で入力し、対流圏上空から宇宙へ低温で放熱して回る自然の循環がある。
ここでの自然の循環とは、大気と水と栄養を作業物質とする物質循環である。
① 大気の循環→大気が、地表で太陽熱を得て上昇気流(低気圧)となり、上空で宇宙に放
②水の循環→水が、地表で太陽熱を得て蒸発し、大気の流れに乗って上昇し、大気の減圧で
冷却されて雲となり、雨となって地表に戻る。雲となるとき熱を大気にわたす。大気循環は
この熱も宇宙に放熱する。水の循環は熱を地表から大気上空へ運ぶことで大気の循環を補完
する。水冷の機構である。
④ 栄養の循環(地域循環)→土に存在する栄養(肥料分)は、植物に吸収されて光合成さ
れ、これを動物が食べる。 植物や動物の死骸は微生物に分解されて栄養は土に戻る。その
土からふたたび植物が育つ。この物質循環は地球上の物エントロピーを熱エントロピーに変
換する重要な汚染処理の機構である。
④栄養の循環(広域循環)→栄養は水に溶け、重力で流れ落ちて、最終的に深海に溜まる。
深海は生命の墓場である。しかし、深海水の湧昇でふたたび海面に現われ、海洋生態系とな
り、動物がこれを引き上げて陸 上生態系が復活する。
環境破壊とは、これらの自然循環を破壊・劣化させることである。その結果、エントロピー
の処理に失敗し、資源を失い、汚染を残すことになる。
文明活動は大気を汚した。その結果、太陽光は汚れた対流圏大気に吸収され、大気の循環
は劣化している。これは都市気象で都市温暖化の原因のひとつとして知られているが、地球
規模で焼畑の煙が熱帯を覆い、熱帯の大気循環を壊している。これが異常気象のひとつの原
因と考えられる。
また、この文明は、森林の伐採、小麦やトウモロコシなどの乾燥農地、都市や道路などで
水の循環を壊し、また栄養循環を失ってこれらの土地を砂漠化させている。
●人間社会もエンジンである
人間社会も、絶え間なく活動を続けている。人間社会もエンジンであり、この活動を維持
するには、資源が必要で、廃物と廃熱を放出している。
社会の循環とは物流であり、需要と供給の関係で循環することになる。
社会の循環が、自然の循環とつながり(図)、社会の循環を含めた自然の循環になるとき
社会の持続性は保証される。廃物を適切に処理して自然の循環に返すと、自然の循環はこ
の廃物の物エントロピーを処理して熱エントロピーに変えて宇宙に廃棄してくれて、また
資源を供給してくれることになる。
資源をどこから得て、廃棄物をどこに捨てるかに悩まされているが、廃棄物の捨て方は
動物に見習うことである。食べ残し、糞尿、死体など、すべて「使い捨て」で、その結果
生態系の循環を経て、廃棄物はふたたび動物の食料となる。
「使い捨て」こそ、もっとも正しい自然との付き合い方である。「廃棄物のリサイクル」
が最近強調されているが、需要のない廃棄物の再利用は無意味であり、廃棄物と資源の循
環をいうなら、図に示したように、自然の循環を通して考えるべきである。
「使い捨て」は、自然に返すということで新しい資源をつくることになるが、リサイクル
とは、人間だけで資源を使い切るという思想であり、そのために、その他の資源までも浪
費することになる。「使い捨て」できない廃棄物(毒物)の発生を禁止すること、自然に
還らないものはつくらないことである。
●環境問題の根本
環境破壊の最大の問題は砂漠化である。
地球温暖化などで大騒ぎしている間に、熱帯や温帯の森林や農耕可能な土地が人間によ
る荒廃、すなわち砂漠化により失われている。世界の農地は寒帯だけになり、ここで、気
候が変わって寒冷化すれば、ただちに食糧枯渇が問題となり、飢饉の時代を迎えることに
なる。
温帯や熱帯の放棄され砂漠化した元農地の回復は望めないし、回復には時間がかかるか
らこれまでの歴史で見たように、北方民族の南下にともなう、あつれきや戦争を経て、こ
の石油文明は食糧を失い、終了する可能性が高いのである。
ところで、なぜ、熱帯と温帯の農地が荒廃することになったか。それは、アメリカ、カ
ナダ、ヨーロッパなどの先進農業国において、石油を使用する科学技術農業によって大量
に穀物を生産したからである。
このことは、人類を飢餓から救うのではなく、過剰生産により、穀物価格が低落し、生
産競争を招いて貧しい農民が農業から脱落し、富んだ農民がさらに農地を開拓することに
なった。
欧米各国は、余剰穀物を補助金付きの自由貿易で世界各地に安価に売り、農民には国内価
格との差額を補助金として支払うことになった。その理由は、欧米各国にとって穀物は戦
略物質であり、自国農民の失業対策の重要政策だったからである。
このため、発展途上国の農業は価格破壊にさらされて、農地は酷使され、栄養不足と塩
化で生産性が低下する。結局、この農地を放棄し、森林を新しく焼畑にしてその栄養を利
用し、ここも酷使して放棄して、これらの農地は次々に放棄されていく。放棄された農地
は栄養不足と塩化のため森林に戻ることなく、土は風により飛ばされ、雨で流されて砂漠
化することになる。
つまり、環境問題の根本となる砂漠化は、先進国での穀物の過剰生産に始まり、多国籍
企業・穀物メジャーによって自由貿易の名で安価に輸出され、輸入国の農業生産を放棄さ
せたことによってもたらされたものである。
環境問題の解決は、森林の回復であり、そのためには、肥料分を海洋から平地・農地へ
と、人間が魚の干物などの海産物として運び、その「使い捨て」たものを鳥や虫によって
平地・田畑から山へ届けることである。自然の循環と社会の循環を正常につなぐ以外には
ないのである。
●数10年後に残る建築廃棄物の責任
建築物は、耐久消費財の代表であり、壊したくない建築物をつくることを喜びとしなけれ
ばならない。そのためには部品交換だけで再生することである。
リサイクルだけを目的にしてはいけない。リサイクルは資源浪費で、費用もかかることに
なる。
人間だけの「リサイクル」でなく、自然に返す「サイクル」を考えることだ。梁や柱など
高価ならば再利用する。経済性こそリサイクルの条件である。
建築廃棄物は、処分場に捨てないことだ。コンクリート、ガラスなどは破砕して、水洗し、
土に戻す。焼結してレンガとして利用してもよい。破砕されない重量ごみ(金属)は資源化
し、洗浄廃棄物と破砕されない軽量ごみは、ガス化溶融炉で全量焼却することである。
焼却は、生態系を通さないで、自然に返す有効な方法である。自然界では火事として普通
の現象であり、物エントロピーは熱化されることになる。廃物は気体分子や鉄塊やスラグに
無害単純化することである。発電できればなおよいであろう。
いわゆるエコロジー技術にはイカサマが多いことを指摘したい。住宅用太陽光発電は無駄
遣いの象徴で、解体費用増にも考慮が必要である。「CO 2を回収して、燃料にする技術」に
至っては、関西電力研究所による新永久機関の研究で、資源の循環になり得ないもので
あり、エントロピーの解決には別の資源が必要なことを知らなければならない。
(文責・酒井哲夫)
プロフィール
槌田 敦(つちだ あつし)
名城大学経済学部教授。1933年東京都生まれ。東京都立大学理学部卒業。東京大学大
学院修了。槌田エントロピー理論に基づく反核、反原発の立場で、エコロジー、環境保護
運動を行う。主な著書に「資源物理学入門」「エコロジー神話の功罪」「環境保護運動は
どこが間違っているか」などがある。
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