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この木どんな木

セン(栓)

淡黄白色の木理が映える表面材 北海道を中心に分布する落葉の高木
名称 セン、センノキ、栓、 ハリギリ、Sen
属科 ウゴギ科 ハリギリ属
学名 Kalopanax pictus
葉と樹皮に極立った特徴

センの名は木材に、ハリギリは樹につけられた名前で、材を扱う人にはセンの名の方が 通りがよい。
センノキは元来東北地方の方言で、ヤマギリ、タラセン、ボウダラ、アク ダロ、イタダラ、エンダラ、アクダラ、テングノウチワ等の方言もある。
センの特色 は葉の大きさと樹皮の裂け目にある。
葉はとてつもなく大きく、カエデの大判のようで、大きなものは長さも幅も30㎝余り にもなり、天狗の羽団扇のようで、テングノウチワ、テングッパの呼び名もついた。
ハリギリの名は、葉の大きいのを桐に見たて、枝に針(トゲ)があるので、この名が あるとされている。
アイヌ語ではアユシニというが、これはay(とげ)us(多くあ る)ni(木)で、トゲが特徴と見られているからである。
ハリギリのキリは、葉の形 容と同時に、材質がキリに似ているからとも言われている。
トゲのある木は、ほかにタラノキもあるが、これも同じウコギ科でタラノキ属であり、 カミヤツデ属、フカノキ属、ハリブキ属などの仲間もいる。
タラノキの芽や葉は食用と しても有名だが、センの葉も食べられるという。
(但し、アクが強いので日常的には おすすめできないが) 大和本草によれば「木理も葉もほほの木に似たり、刺ありてた らの木にも似たる故に名づく」とある。
葉は互生し、枝先に集まってつく。
葉柄は長さ10~30㎝と長く、基部は肥大する。
葉身は扁円形で大きく、掌状に5~9列し、縁は細かい鋸葉がある。
上面は無毛だが、 裏面の脈状に淡褐色の毛の多いものと少ないものとがある。
枝は太くゴツゴツしてト ゲがあり、太くなると取れたトゲの跡がイボ状に残っている。
落葉の高木で、樹高は通常15~20m、胸高直径四10~50㎝だが、樹高25m、直径1.5 mに達するものもある。
樹皮は濃褐色で外面は灰色をおび、不規則で大きく深い割れ目を生ずる。
花は5~6 月に開花し、10月ごろに種子成熟する。
今年のびた枝の先に多くの花軸を出し、その 先に散形の花序をつけ、黄緑色の小形の花を多く開き、球形に集まる。
花弁は4~5個、 雄芯も4~5個。
子房は下位で、2つに分裂した花柱がある。
深根性で風衡にも強く耐寒性もある。
成長の特性は高直性で陽樹であるが、日陰地に 稚樹が発生する。
根回しによる発根性は良好で、緩傾斜地や谷間海岸砂丘などの肥沃な 深層土に自生するが、やや湿気のあるところで成長する。
この木は成長が早く、北海道では50年で18mに達すると言われ、肥沃な土地を好 むことから、かっては土地の肥沃さを判定する指標種とされて開墾を進めたというとい う歴史もある。
産地は、北海道が特に優良材を多量に産出することで名をなしているが、日本では本 州から四国、九州、沖縄にまで分布し、朝鮮、樺太、千島列島、中国東北部にわたる温 暖帯、冷温帯に広く分布している。
本州での垂直分布は、海抜0~1800mにわたり、 500~1500mに多生する。
光沢のある材面に木目が映える
木材としてのセンで、オニセン、ヌカセンと区別されることがある。
オニセンは成長 がよいため、比重が高くなり硬くなったもので、強いが狂いが出やすく、加工もしにく い。
幹にトゲが多く、樹皮は帯褐色で割れ目が大きくて深い。
材質も粗で黄味が淡く、 かつ年輪幅が広くて材の伸縮、反張りの変化が大きいとされる。
ヌカセンは、反対に比重が低く、軟らかくなったものだが、これは、センが環孔材で、 年輪の早材の部分に大きな導管がよく発達して環状に配列していて導管含有率が大き いためである。
ヌカセンの樹皮は、おおむね平滑で帯赤褐色を呈し、加工もしやすく、 狂いも少ないとされている。
材質的には良質で有用な環孔材で、辺材は淡黄白色、心材は淡灰褐色から淡黄褐色を しており、その境目はあまり明瞭ではない。
心材の色は必ずしも一様ではないが、環孔 材のため、年輪が模様になって現われるため、装飾的価値が高い。
木理が鮮明なため、木地のままで床回り材や天井板にも使われていた。
天然木の化粧 合板や造作用集成材が製造されるようになってからは、床柱、床回り材だけでなく、高 級家具や建築の内装材としてもよく使われるようになっている。
白系の淡く黄味を帯びて、木目も浮き出る木理の美しさが評価されてのことで、今で も塗装してケヤキの代用とされることもある。
センは美しい木目を生かして古くから家具材や彫刻材として使用されていた。
しかし 明治期はまだケヤキ、シオジの代用として使われることが多かった。
北海道のセンが明 治の末ごろから下駄材としての人気を集め、大阪方面へ下駄棒と呼ばれるゲタ幅の棒板 が売り出されるようになった。
このセンの下駄も大正10年ごろをピークに下り坂になったのは、建築・家具・車輌 用に使われだしたことと、ゴム靴の普及によるもので、センの下駄の値上がりも作用し た。
それ以降の下駄はオオバヤナギ、シナノキが主になった。
関西では家具として使われ、特に卓袱台には大量に使われていたが、センが評価を高 めたのは輸出合板用材として重要視されてからである。
セン合板は他の北海道産広葉樹 に比べて高価であったため、大部分が欧米に輸出されたのである。
北海道では昭和32年に造作用集成材工場ができ、セン合板をまねて、センの単板を 集成材に貼って化粧材をつくり、それが加工されて床回り材として多く使われた。
さら に、天然木化粧合板が製造されるようになると、その装飾的価値を買われて建築の内装 用、ドア、家具材としての高級材として用途を広げるようになった。
輸出合板としては 昭和四十年代が米国市場でのピークで評価は高かったが、それ以降は減少を続けている。
特にヌカセンは軽軟で光沢があり、加工しやすく、狂いが少ないため重用されている。
環孔材らしく年輪が明瞭で、白色系の材のため、板目面には年輪が明かな模様となっ て現われるし、柾目面も上品な木目がつくられ、光沢があることから、装飾的利用が多 く、ツキ板・化粧合板の主力のひとつとなっている。
肌目は粗で通直な木理が多い。
気乾比重は0.40~0.69である。
老木は美しい杢紋を生ずるものもあるが、家具、合板、建築材、化粧単板としての利 用が主である。
用途の広さは材面の美しさが評価されてのものである。
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