それに、日本の文化の根底には、木がありました。木の文化の中枢をなすのは木の家づくりでした。すべては、木から始まり、木に行き着いて日本の文化があり、山々が育ってきたのです。それが、ことごとく踏みにじられ、さげすまれ、遠ざけられたのが戦後の姿です。そのために、人工林が多くなった山は、手入れも行き届かずにどんどん荒れています。山が荒れることで、森林が持つ本来の機能が著しく低下してきています。炭酸ガスの問題もさることながら、日本人の感性を育てた自然景観の荒廃、土壌と水の力の低下、自然の循環の乱れなどがすすみ、それがあらゆる生活に影響を及ぼしています外材攻勢と価格競争で、出材できない山が泣き、林業家が苦しんでいます。木の家のつくり手たちも、思うように日本の木が使えないと嘆いています。思うように使えないのは、求める材が見つけられないということも、価格がわからないということもあります。杉をはじめとする国産材批判からのひるみもあります。
すべてが悪循環なのです。その根本は、視線が歪んでいるからです。経済成長期の視線のままに、メーカー仕様を主に流通に頼ったり、利便性で既製品に走ったり、洋風住宅観から抜け出せなかったりという傾向が依然強く残っていますそこで、この矛盾の本質に迫りながら、日本の木と日本の木の文化を考え、日本の木を生かすためにと本特集を組みました。本号だけですべてを語ることはできませんので、これからもこのテーマの追求を続けますが、日本の木が強く美しく、日本の文化を支えてきたことへの理解の広がりと、活用の広がりに寄与したいと願っています。