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木の家づくりの想いを語る

家にやさしく 人にやさしい 木造住宅


わたくし自身は建築施工技術を身につけているわけではありません。
ただ住宅建築業界に身を置いて40年になり ます。
この間、一貫して携わって来たのが木造住宅です。
わずか40年ではありますが、この間の家づくりの移り変わ り様に凄まじいものを感じます。
住宅と言えば、木造住宅が当たり前であった時代から、鉄骨系プレハブ、2×4はてはコンクリート系プレハブ住 宅等、構造上の変化はもとより、内装仕上げにしても、土壁、板貼りから、ツキ板建材へと、そして今日ではビニー ルクロス貼りが全盛を極めております。
最近では、枠材から巾木、廻り縁に至るまで全て塩ビシート加工材を使用す る有様です。
これではあまりにも家が、そしてそこに住む人が可哀相すぎます。
何故このような家づくりへと変わっ て来たのでしようか。
このような家でも、そこに携わる職人さんは全て、昔ながらの技術を身につけている方々なのです。
日本古来から の伝統と技を引継いで来ている職人さんを、このような安直な家づくりに駆り立てることに、私は怒りさえ禁じ得な いのです。
顧みると、昭和48年の第一次オイルショックによる経済不況からの脱出のため、まずその牽引車と目されたのが 住宅産業でした。
この頃からです、異業種から金儲けを目的に住宅建築に手を出してきたのは。
「住宅とは」とその根本、原理も理解せず、理解しようともせず、とにかく他社より一棟でも多く「売る」ことを 至上命題に、合理化という隠れ簑を利用して、手間のかからない、安直に家を仕上げることに腐心して来たのが今日 のハウスメーカーと言われる会社の住宅ではないでしょうか。
オイルショック前の日本経済の流れであった大量生産 大量販売の風潮に乗って、住宅も工場で大量生産することでコストダウンができ、ユーザーに安価に住宅を提供で きるとの考えが基本にあるのがプレハブ会社であったはずです。
それが今日まで、一度だって在来木造住宅より平均価格で安くなったことがあったでしょうか、むしろ益々その差 はひらいて来ています。
それは、住宅は家電製品や自動車など消費材とは違って、不動産であることと、住宅への要 求が多様化しているから、全国画一的な住宅を押しつけることができず、それが為に、工場での大量生産のメリット を生かせないからです。
そもそも住宅産業とは本来は地場産業でなくてはならないはずです。
欧米に一社で年間何千 戸もつくっている住宅建築会社など聞いたことがありません。
確かに在来工法でも数寄屋造りの家で、誰が見ても感嘆するような住宅はプレハブ住宅よりは値が張ります。
しか し、それには住宅として、芸術的にしても価値があります。
これは価格で比較する対象ではありません。
私は、ユーザーの大多数の方が求める、ごく一般的な住宅を、ごく普通の金額で、少なくともプレハブ住宅とは違 って、職人の技を少しでも発揮でき、無垢材での仕上がりが比処かしこに見られるように、触れるように、そして木 の香りを楽しめるような住宅づくりを目指してまいります。
プレハブ住宅と同じビニールクロス仕上げの家をつくっていたのでは、彼等と抵抗できるのは価格面だけです。
そ れでは、象と蟻の戦いです。
せっかく柱、梁、全てに木材を使ってつくった家なのに仕上材が全てビニールクロスで は、鉄骨住宅なのか2×4住宅なのか、木造住宅なのか見た目には区別がつかないではありませんか。
木の特性とその良さについては、ここで改めて話すまでもなく、この「木のこころ」であますところなく毎回語ら れています。
日本の住宅はその気候風土から木造住宅が最適であることは、歴史的にも立証されているのです。
私達 は「日本という国土に日本人が住む家をつくる」が基本にあることを忘れてはならないと思います。
近年、特にハウスメーカーと言われる建築業者の販売促進のための謳い文句に高気密・高断熱があります。
これ は北欧や北米大陸からの輸入住宅の販売戦略に使ったのがはじまりです。
木という天然素材を生かして使う家づくり ができない彼等にとっては、その商品(彼等にとっては住宅は商品なのです)の差別化にこの高気密・高断熱と言う 言葉を利用しているのです。

ある高名な学者が、ハウスメーカーの高気密・高断熱についての対談の中で「隙間風の吹く家よりは、やはり高気 密の家の方が、暖房や冷房い掛かる費用や、住み心地はいいですね…」と語られていた記事を読みましたが、今どき、 昔ながらの隙間風が吹き抜けるような家を誰がつくりますか、機械と設備に頼らなければ維持できないような家を住宅 と言えるでしょうか。
それはカプセルです。
機械は故障することもあります。
安心して寝ることもできないようなカプ セル住宅のどこが良いのでしょうか。
私は、ほどほどと言う日本語を大事にしたいと思います。
「完璧」を住宅づくりに求めることは不可能です。
「我慢」 を身につけることも生きる上には大切なことです。
より良い住環境を求める為に機会や設備を利用することを否定するつ もりはありません。
ただ全面的に機会に頼るのではなく、我々には多くの先人が残してくれた知恵があります。
それに先づ学び、それを補うための機会であり、設備であるべきです。
我々建築業者は家づくりに当って、最も重視しなければならないのは、基礎工事です。
いま世間で問題になっている 欠陥住宅の90%以上いや100%と言っても過言でないほど、この基礎工事(地質調査も含めて)に問題があります。
頑強な基礎と水平な天端の上につくられる家に問題になるような住宅44ができるはずがないのです。
ところで私がつくっている住宅の仕上内容について少々述べさせていただき、諸兄のご意見を仰ぎたいと思います。
土台には米ヒバ、内装材には、椹板、杉、青森ヒバ、桧、ピーラー等を壁・天井に使っています。
床材では脱衣場はチ ークフローリング、便所はマカバ桜、その他1階のフロアーは無垢のフローリングを使っています。
そして「木のこころ」第7号で読みましたホーミーの皆様の大黒柱への考えを私も取り入れさせてもらっています。
押入の壁は桐(ファルカタ)、中棚は杉板を目スカシに貼っています。
浴室は天井、壁を青森ヒバで仕上げ、ユニット バスは使っていません。
先日、引渡し直前の建築現場にお見えになったお客様が、玄関に入るなり「アラ、この家は木 の匂いがする」と言って驚かれていました。
木造住宅をつくっているのですから木の香りがするのは当り前なのですが、 今の住宅展示場の建物には木の香りがないのだそうです。
ただ天然素材として無垢材を使用するにしても、それによって建築コスとが上がるのでは、なんの意味もありませ ん。
ごく一般的な住宅に無垢材をふんだんに使ってこそ木造住宅と言えるのです。
それが木骨住宅との違いと考えて います。
木材には節があって当たり前、なにも無節でなければ仕上材として使用できない分けでもありません。
木の特性を生かした、一般庶民が求めるごく普通の家づくりをこれからも目指してまいります。
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