木炭の貴重な原木であるカシやクヌギが減少している今、高ま
る需要に応えようとして研究がすすみ、技術開発されているのが
竹炭である。
原料となる竹の種類は問われないが、主はモウソウ竹でマダケ
で、淡竹、ネマガリ竹等もよく使われる。
竹は成長が早く"雨後のタケノコ"と言われるようにニョキニ
ョキと顔を出し、"破竹の勢い"と言われるように、10数日で
10mを越える。
竹として大人になるのは3年位で、竹炭に使わ
れるのは4~5年生の竹である。
木炭用の木の成長が30年程度
とされることに比べてその成長の速度は著しく早く、植栽の心配
もなく、その上近年急速に繁殖しているのが竹である。
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30年前後も太陽エネルギーをはじめとする宇宙エネルギーを
得て育った木と、4~5年で育った竹とでは性質が違うと思われ
るものの、木炭と竹炭はその機能に大差はなく、ある面では竹炭
のほうが優っているともいう。
竹の特色は、植物でありながら木などの他の植物が普通持って
いる形成層という新しい細胞をつくる組織がないことにある。
そ
のため年輪もなく、稈の先端と同時に節と節の間でも新しい細胞
がつくられ、それぞれがいっせいに成長し、時には1日に1mも
成長する。
そして1~2年で成長が止まり、それ以後は太らず、
伸びもしない。
竹の成長が早く、固い稈をつくるのは竹特有の植物ホルモンが
関わっていると言われている。
葉や稈の表面に多く含まれている
珪酸は、稈の成長や強度を高めるのに役立っている。
竹は他の植物に見られないすさまじいばかりの成長力とともに
繁殖力も生命力も強い植物で、稈の皮や葉には殺菌作用があり、
他のイネ科の植物よりも優れた抗酸化性・防腐力を持っているの
も特色である。
こうした特色が、竹炭になってからの機能に生きていると言え
るし、竹酢液の種々の効用にも影響しているかもしれない。
一般に竹炭は、約800℃の高温で焼いた場合、備長炭の数倍
から10倍の吸着力があると言われるが、これは、木炭より多く
の微細パイプを束ねたような構造になっているからで、これが木
炭以上の吸着力の発揮と、珪酸・カリウムなどのミネラルの含有
量の多いところに竹炭のパワーの源があるのではないだろうか。
●木酢液(竹酢液)の機能と特性
木や竹から炭を作る時にできる、木酢液(竹酢液)も非常に優
れた機能を持っている。
木や竹の主成分はセルロース、ヘミセルロース、リグニンなど
が主で、それに微量の成分が多様に含まれている。
これらの組成
分が熱分解すると、それらに含まれる組成分に基づく熱分解生成
物も水蒸気と一緒に気化して煙となって出てくる。
この煙を集めて冷却し、タール分を取り除いたものが木酢液
(竹酢液)と呼ばれるもので、この液体の主成分は約90%が水で
これを除いて一番多いのが酢酸である。
実際匂いを嗅いでみると
ツンとした燻煙臭がある。
水以外の成分の中では酢酸が30数パ
ーセントと一番多く含まれており、そこから「木(竹)酢液」と
いう名前がつけられている。
水以外の残りの10%の有機化合物
は、前述した酢酸を始めとする有機酸類、フェノール類、アルコ
ール類、カルボニル化合物等の酸性成分、中性成分、塩基性成分
など、200種類以上の成分から出来ている。
これらの成分のなかには、殺虫・殺菌作用のあるものや、土の
中の有用微生物のエサとなって増殖を助けるもの、植物の成育を
促進するもの、農作物の増収に役立つものや味をよくするもの、
土壌を改良するものなど、様々な成分が含まれており、これらが
複合的に作用することで、より大きな相乗効果が見られることに
なる。
また、木酢液(竹酢液)は農薬の効果を高めたりする触媒的な
機能を果たすほか、家畜の飼料に混合すると肉のしまりがよくな
るという効果が確認されているし、人体に対してもアトピー性皮
膚炎の消炎効果や糖尿病の人の血糖値が下がるといったことも確
認されている。
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木酢液・竹酢液の持つ効用で特筆すべきものが抗酸化作用である。
日本木炭新用途協議会名誉会長の岸本定吉林学博士は、木酢液
の抗酸化性・抗菌性に関する実験結果を次のように発表されている。
『木酢液には抗酸化性、抗菌性があり、特有のフレーバー(香
味)があるので、各種食品加工にも使用されている。
(中略)木
酢液には代表的食品防腐剤、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)
と同様の抗菌性があるので、魚類の鮮度保持などに使用されて
いる。
燻煙の抗酸化性については、ポーランドのチルグナーが多
くの報告を出しているが、その抗酸化性はフェノール成分に基づ
くもので、これらの成分が溶けている木酢液にも強力な抗酸化性
がある』(「竹炭・竹酢液のつくり方と使い方」農文協刊)
このように、木酢液・竹酢液は体内の活性酸素を除去する効力
を持っており、その効力は黒酢の6倍、ゆず酢の3倍との数値も
出されている。
また、ポリフェノールという成分も体内に活性酸素がたまるの
を防いだり、動脈硬化や脳血管疾患を予防する効果があるという
ことで、赤ワインの健康効果が言われているが、木酢液・竹酢液
にも多くのポリフェノールが含まれており、同様に抗酸化作用が
期待できる。
竹や木酢液・竹酢液については、京都大学木科研の野村隆哉さ
んが多彩な研究を進めつつあり、環境改善と生活・健康素材とし
ての数多くの効用の解明への期待が高まっている。
●これからの住まいに木炭・竹炭を
それだけに今後、竹炭・竹酢液の普及に大きな期待が寄せられ
るが、クリアすべき問題もある。
それは、竹炭づくりの歴史が浅く、最近になって取り組み始め
た生産者も少なくないことから、一定のレベルの質をほぼ均質に
維持できるのかという問題で、消費者が購入に当たって判断し得
る基準や目安が定かでないことである。
それに、価格の正当性や
妥当性、更には流通体制も問われる面があるようだから、産業と
しての成長が望まれることになる。
これは、日本で見ても千年前後の歴史を持ち、市民権を得てい
る木炭との違いとして乗り超えねばならない課題であろう。
とは言え、普及協会もすでに活動を強めており、国際シンポジ
ウムも開かれるようになって、竹の成長と同じく、破竹の勢いで
市民権を獲得し、木炭とともに21世紀の環境資材、生活資材、
癒しの健康素材としての役割を果たし、家づくりの重要な資材の
ひとつとなることは間違いないであろう。
特に木炭・竹炭はこれからの家づくりには欠かせない環境・健
康資材として定着することが望まれている。
敷地や床下への埋設をはじめ、腰板の中に粉末を入れたり、粘
状に貼る方法もある。
粉末を混ぜた土壁も効果的であるし、粉末
を混ぜたシートや紙を使う方法もある。
部屋に置いたり、生活の
中で使うことも当然効果がある。
多様な活かし方で癒しの空間づ
くりを推進したいものである。
参考文献
○岸本定吉監修・池嶋庸元著
「竹炭・竹酢液のつくり方と使い方」(農文協)
○岸本定吉監修・農文協編
「木酢・炭で減農法」(農文協)
○日本竹炭竹酢液協会
「竹炭・竹酢液」vol1、vol2
○力石秀夫監修・著
「癒しの空間―竹炭の応用」(竹炭・竹酢液普及会)