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内装に映えるスライスウッド(ツキ板)の妙  

スライスウッドとはどんなもの?

●多様な仕様を可能にするスライスウッド 整いすぎて木の自然さがないという声もあるスライスウッドですが、良質な木材 の最も効率的で、価値を高めた表面化粧材として捉えるならば、それにふさわしい 用途が見えてきます。
木目にこだわらず、木質感が強く、木材としての機能をより強く求めるところに はムク材を使い、空間演出で落ち着きたいところやもてなしのスペースには化粧合 板を使うということもあるでしょう。
一室全面の化粧合板では息苦しいという場合 には、一面だけとか腰板部分だけという使い方も生まれてきます。
また、板目、柾目の使い方でも、木目を連続させるスリップマッチ貼りもあれば 、表裏を交互に貼り合わせるブックマッチ貼り(抱き目貼り)やランダムに貼るミ スマッチ貼りなど多様な貼り合わせ方で、いろいろな趣きを生むことができます。
スライスウッドにされる樹種は多彩で、白系、茶系、ピンク系、赤褐色系、黄淡 色系、黒茶系と色も様々で、色系統によっても使い場所の雰囲気を効果的にするこ ともできます。
このように用途に応じていろいろな使用が可能なこともスライスウッドの特徴と 言えるでしょう。
スライスウッドに用いられる木の主力は広葉樹です。
広葉樹の特長として言えるこ とは、針葉樹のように上へ伸びようとするだけではなく、大地に広く根を張り、太陽 のエネルギーや自然の〝ゆらぎ〟を全身で浴びながら枝を広げ、葉を繁らせ、花や実 をつけることにあります。
そのため、材幹が必ずしも直通でなく、一般的に見て繊維が交錯したり、ら旋、 回転、傾斜しているものが多くあります。
そのため、木目の変化も樹種ごと、1本 ごとに違う味わいを見せ、材面に光沢のあるものや、絹糸模様やチジミの入ったも の、杢の中でも異色の価値とされるコブ杢や玉杢を持ったものもあります。
材の色 も、針葉樹が杉・桧などの赤黄褐色系が多いのに比べ、樹種・地域によって多種多 様さがあります。
この広葉樹は、気乾比重も高く(堅い木)、木理の変化の多いことからわかるよう に、成長応力のひずみ(アテ)が大きく、十分に乾燥しないとねじれ、反りなどの 狂いが大きいという性質があります。
それに、今は資源が問題となってきていますが、かつてのラワン系の南洋材や米 材針葉樹等に比べて、樹種が多いことは、同時に各樹種の資源量が少ないというこ とも意味しています。
スライスウッドは、広葉樹の非常に有効な生かし方と言えるものです。
薄くするこ とで、量的に少ない材の木理の味わいと変化を大量に表面化粧材として活用するこ とになります。
また薄くすることで木の狂いを抑え、化粧材として貼れることになり ます。
広葉樹を主としたスライスウッドによる化粧合板は、主として洋風の室内にマッ チするということで、ホテルや公共施設などの他に洋風住宅や集合住宅にもよく使 用されてきました。
これは、和風住宅は針葉樹という風潮との関係もあったからで すが、針葉樹のスライスウッドも増えてきている昨今で、住宅仕様も多様化してい る下では、むしろ限定することなく使うようになっています。
●スライスウッドの今後は高級志向だけではない

ところで、「スライスウッドは高級な所に」という見方が根強くあるのですが、 その背景には、数百年の風雪に耐える自然造形ともいうべき、厳選された銘木原木 を主材料としてきたことにあります。
これらの原木は、立方m当たり30万円以上、高いものでは100万円以上の高値に なります。
これに加工賃等が加わりますから、当然の結果としてクロスや塩ビシー トよりも高くなります。
この原価の高さと、厳選された木目や材面の極立った意匠性や芸術性から、高級 ものと言われるようになったのです。
スライスウッドは、銘木的希少価値、意匠的・芸術的価値、技術的価値などの価 値を持っていることから、高級志向を反映したのは、ある意味では自然の成り行きで した。
ところが、このこともまたスライスウッドの普及の範囲を狭める結果につながっ たという問題があります。
ふんだんにムク材を入手できないので、化粧合板による木質内装にしたいと思っ ても、入手ルートが限られている上に、塩ビ等に比べて高く、施工技術も必要にな るということで、一般建築での使用が少なくならざるを得ませんでした。
供給サイドの高級志向での原木の高値仕入れ、流通とゼネコンや大手メーカーの 良材要求が相俟っての結果と言えるのですが、今は、大きく視点を変えなければな らないところへ来ています。
それについて、まず言えることは、優良原木が大幅に減少していることがありま す。
スライスウッドの隆盛期までは豊富な原木がありました。
広葉樹の主力であっ た北海道産広葉樹のナラ、タモ、マカバ、センなども国有林材、道有林材に民有林 材を含めて豊富にありました。
しかし、戦後の乱伐がたたって出材が減少し始めた 80年代後半からは、それに替わって中国産のナラ、タモ、アメリカ産のオークなど が主力になっていたのですが、良材を追い求めてきたこともあり、資源量はあって も良材不足がいよいよ深刻になっています。
一時、主力の一翼を担っていた東南ア ジアのチーク、コクタンなどの唐木類は、資源量の減少と産地国の伐採規制によっ て供給が細ってしまいました。
スライスウッド用材は、まだまだありはしますが、良材の減少は否定出来ません から、従来のように、高級材だけを追っていては供給しきれなくなりますし、少量 の良材を競合して求め合えば、当然ながら原価が高くならざる得なくなります。
ですから、従来型のツキ板という概念を乗り越え、色合いや木目、葉節などの少 々の難点はあっても、ムク材では表現し切れない木味の良さと意匠性を生かしたス ライスウッドとしての活用と、高級材との2つの方向性を作って行くべきところへ 来ているのです。
もうひとつ違う角度から言えることは、高級材としての扱いでの用途利用に止ど まることなく、内装材としてあらゆる建築物の空間づくりを考えるべき時に来てい るということです。
21世紀は木材の時代、木の家の時代です。
環境・自然と共生し、健康を育てる住 まいづくりがこれからの主流へと移って行くでしょう。
26年位で処分不能な廃棄物 となる家ではなく、100年以上も炭素ガスを炭素化合物として閉じ込めた木材を中心 とする自然素材でつくられた家で、廃棄時には自然に還えられる素材が求められる ことになります。
この流れの必然として生まれてくるのが木材の活用です。
21世紀初頭には、恐ら く諸々の事情によって外材に依存した木材利用は極めて難しくなると思われます。
外材依存率が現在の80%から20%~30%減少は近いと思われますが、それだけでも 大変なことになり、国産材の活用を真剣に考えざる得なくなります。
その時に、構 造材としての木材は、人工林材を中心に十分供給が可能で、梁材などについても対 応する方法はいくらでもあるでしょう。
そこで問題となるのがムク板です。
当面の傾向としては、ムク板供給への要求が 一段と強まることと思われます。
ところが、現状から言えば、外材を含めてムク板 としての供給量は僅かしかありません。
しかも、最近の生活者の要求傾向から言えば、従来の12~15㎜程度の板ではな く、30~50㎜という厚板への要求の高まりが見られます。
木材生産者の姿勢と体 制から言えば、このようなスギ材をはじめとしたムク板の供給体制が十分でない ことは明らかで、それが出来たとしても、需要の高まりに応え切ることは非常に 難しいと言えるのです。
その最大の理由は、伐採可能な林分の大部分が人工林で、その大部分が7~8 齢級(1齢級は5年)です。
厚板をとれる直径40㎝上の出材が可能なのは九州、 四国の温暖地でも10~11齢級以上となりますから、このような材は、現段階では 人工林の中でも数%にしかならないと思われます。
このことは、ムク材要求が本格化すれば、スギ、ヒノキだけで対応し切れなく なるのは必至です。
ムク板としては、国内外の広葉樹材が相当量、需要を待って いますから、ある程度までは対応が可能でしょう。
それにしても対応し切れなくなるのは時間の問題ですから、今からムク材とス ライスウッドの化粧貼りとの適所利用を広げて行くことを考えなければなりませ ん。
●ムク板と化粧合板で21世紀の内装を 一般的には、ムク材に木材としての価値や効果を求め、化粧貼りには、それが薄 いと考えられています。
ところが、基材を、ムク材としては使い辛い間伐材なども含めた木材とすれば、 その効果は決して劣るものではなく、それ以上に一定の意匠性を得られることにな ります。
ここで問題とされるのが恐らく接着剤と塗料の問題でしょう。
この問題は、別の 機会に改めて詳しく考える予定ですが、ひとつの大きなポイントはホルマリン問題 です。
過度のホルマリン含有が問題とされたのは当然だとしても、一部の人たちと マスコミによる異常反応と異常なホルマリン攻撃がありました。
ホルマリン=害悪 という風潮から、ノンホルマリンが救世主のように言われ、木材関係者や建材メー カーもその方向に走りました。
しかし、ここには簡単に言ってふたつの問題があります。
ひとつは、ノンホルマ リン接着剤は、長期使用後の結果を見ない限り、決して安全と断言できないことで す。
厚生省の認可は、過去の公害問題を語るまでもなく、決して将来に責任を持っ たものではありませんし、接着剤メーカー自身が、ノンホル剤の将来的危惧を持っ ているからです。
その上、ノンホル接着剤は従来のホルマリンを含んだ接着剤より も高くつくという難点もあります。
もうひとつは、ホルマリンの成分は、人間を含む地球上の全生物の生存に不可欠 な自然の産物であるということです。
自然の水や木や空中にも人間の体内にもその 成分は含まれていて、防腐・抗菌をはじめとする様々な効力を持っています。
現実 にノンホル接着剤を使用した結果、各地各所で青カビや腐触の問題が広がり出して おり、ごく近い将来には大問題になると思われます。
これらのことから言えることは、ホルマリンを排除することで万事OKではなく 、シックハウスが治まるわけではないということです。
シックハウスになるのは100種以上、主要なものでも約30種類の化学薬品が影響 しているのですし、塩ビなどの石油製品による害や近代生活の中でのプラスイオン 、電磁波、低周波音によるもので、食卓にもたくさんんの危険があることをもっと 知ることが大切です。
ですから、ホルマリンは敵でも害でもなく、一定量が必要条件であることを知り 、上手に利用することが必要なのです。
ただ以前のように〝過ぎれば害〟というこ とを無視した使用が質されたのは当然のことでしょう。
このことを知ればJAS規格F2程度のものであれば一般的には問題視すること はなく、基材が合板や木質材であれば、ムク材に比べ断片が小さいことからくる不 十分さはあっても、機能的にはさほど心配するには及ばないと言えるでしょう。
気密性の高いところでもF1程度なら大きな問題とはならないでしょうが、F1 段階までホルマリン含有量を下げると青カビ、虫触いの被害が出ることを知って使 うことが必要でしょう。
以上に立って21世紀の住まいづくりの中心に木を捉え、内装には洋風、和風を 問わずムク材とスライスウッドによる化粧合板で、生活空間を演出し、潤いと安ら ぎを呼び、情緒と活力を育てたいものです              (酒井)

新聞の五大紙である朝日新聞、産経新聞、日本経済新聞、毎日新聞、読売新聞(五十音順)の木に関する記事の要約をまとめたホームページです。新聞記事をさらに要約しているので、必要な情報が短時間で得ることができます。現在は、2004年から2006年までの要約が公開されています。2007年以降のものは出来次第、公開されるそうです。新聞での木に関する情報を手っ取り早く探すにはちょうどいいのではないでしょうか。また、あの年のあの日にあんな事があったんだ、などとちょっと違った目線から利用することも楽しいかもしれません。 ホームページは  5大新聞の要約 です。
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