名前 ヒノキ、ひのき、檜(桧)、扁柏
Hinoki cypress
学名 Chmaecyparis obtusa
属性 ヒノキ科ヒノキ属
由来 昔は木の板を錐でもんで発火させたが、この木がよく使われ、発火しやすかったことから「火の木」、ヒノキと呼ばれたのが起源とされている。
ヒノキは、スギと並んで日本を代表する常緑針葉樹で、造林木としてもスギに次いで 多く植えられている。造林に際しては、スギよりやや乾燥に耐えられるので、山地の 中腹以上の場合が多く、スギよりも目が詰み、成長が遅いので、60~90年生で伐採され、 柱材等に使われる。
常緑の高木で、樹高30~40m、胸高直径1~1.5mまでにもなる。
材の重さは中程度。やや軽めで、気乾比重が0.35~0.5程度。年輪は早材から晩材 (年輪)への移行が緩やかで、年輪幅は狭く、木口や柾目材では、年輪境界が細い線状 に見える。ここから肌目は精細で光沢がある。葉は、幅2mm程度の小型の鱗片葉で十文字に対生し、良く似たサワラよりも小型である。 裏面に白色のY字型の気孔群が見える。春に短い小枝の先に開花し、球果はその年の秋 に球型1~1.2cmの実が成熟する。
昔からヒノキの家は高価なものとされ、「総桧普請の家」は、豊さや地位を表現する ひとつともなっていた。日本書記には、スサノオノミコトが、当時の宮人たちにであろ うか、「ヒノキを建築材に」と言ったことが記されているが、その当時から高級材だっ たことが窺われる。ヒノキの皮も桧皮(ひわだ)と言われ、濃赤褐色で飛鳥時代から神 社の屋根葺などに使われてきた。
今でも神社仏閣や高級建築物にはヒノキ造りが多いが、有名なのは伊勢神宮で、遷宮材 は全てヒノキが使われている。かっては隣接する神宮林材が使われていたが、今は木曽 桧が頼りで、そのために250年生材が残されている。
ヒノキが神社仏閣や仏像の彫刻などに使われ、高級材として扱われてきたのは、直径 30cm以上になるには、200年は有に要する成育期間の長さからくる大量・短期成育材で はないことがひとつの理由になる。もっと大きな理由は、細かい年輪が美しく、特殊な 香気を放つこと。辺材は淡黄色で白く感じ、芯材は黄褐色から淡桃色で高貴な色合いを 持ち、木目も強くないこと。耐朽性や保存性が千五百年以上と高く、強度も落ちない。 加工も容易で狂いも少なく、世界でも最もすぐれた針葉樹と言われることが高級材とし ての価値をつくっている。
「清水の舞台から飛び降りる」で有名な清水寺をはじめ能楽や歌舞伎などでの格の正し い舞台はヒノキ板で作られており、ヒノキ舞台と言われている。ヒノキの重くなく、色 良く、強く、狂わない特性が生かされてのものだし、表面の乾きや適度な樹脂が足袋の すべりに適しているからである。(ヒノキ舞台は、転じて、自分の腕前を表わす晴れの 舞台としても表現される)
福島県以南の本州から四国、九州の屋久島までに分布する。
天然の自生林が残るのは、木曽、飛騨、高野山、高知などがある。 中でも木曽桧は日本 *三大美林のひとつで、江戸時代から伐採が禁 じられ、明治維新以降は国有林として維持管理されたことにより、 今日まで残っている。禁伐とされたのはヒノキだけでなく、ヒノキ とまぎらわしいサワラなど *木曽五木と呼ばれる五種の樹木がある。 木曽桧は、樹高30m前後、胸高直径0.5~1mの、節の少い通直材 が多く、芯材も黄色味がかった淡桃色で、ヒノキの特色を代表する 高級材として扱われ、尾州桧とも呼ばれている。
木曽桧、青森ヒバ、秋田スギの天然林を指す。これらの天然林が減少したとは言え、今 日なお健在なのは、幕府と尾張藩や各藩が厳しく伐採を禁じて森林保護策をとってきた ことによる。木曽桧については、スギと比べ成長が遅いため、伐採による減少、さらに は、近畿地方や周辺地域から求められるようになったため、江戸時代初期に、森林資源 の枯渇を防ぐために尾張藩が、ヒノキとヒノキによく似ている四樹種を「木曽五木」と して守ってきたもの。
幕府と諸藩が、このように森林資源保護のためにとった処置は「留山」「留木」と呼ば れるもので、現在の国有林野事業の中にも受け継がれ木曽桧、青森ヒバ、秋田スギのほ か、北海道の広葉樹や山口のナメラマツ等が計画伐採の対象とされているし、屋久杉は 根株や風倒木、枯木、小杉以外は伐採が禁じられている。
ヒノキとヒノキにまぎらわしいサラワ、アスナロ〈アスヒ〉、コウヤマキ、ネズコの五 樹種で、盗伐は厳罰に処せられた。
木曽五木とともに有名なのが、高野五木(実際には六木)のヒノキ、コウヤマキ、スギ、 アカマツ、ツガ、モミの六樹種。高野山が資源保護のために伐採禁止にして守られて いる。
優れた性質を持ち、高級感、高品質であるところから、非常に多くの用途を持っている。
神社仏閣から建築、家具、彫刻、木型、曲物、風呂桶、器具、土木用材、車軸用と、均質な材が求められるマナ板、卓球のラケット等と対象は広い。
この内、建築用として床材、天井板、欄間、柱、土台柱、鴨居、廻縁、敷居、長押、縁板、母屋、棟木、垂木、天井竿など、構造材、造作材として使われる。集成材の表面化粧材に単板〈ツキ板〉としても良く使われる。価格は、市況品質的要素があり、変動するが、原木販売価格で、立方メートル当り人工林材で並材が4万~8万円。木曽桧が50万~100万円位が多い。
人工林木は、スギに次いで多く、各地に植林されているが、地域、山毎によって品質の差がある。産地銘柄として評価が高いのは、吉野・尾鷲・高野・土佐と中国地方の一部があり、60~90年生の直径15~28cm材が出されている。
海外のヒノキでは台桧〈たいひ〉、米桧〈べいひ〉が良く知られている。
台桧は、台湾産のヒノキで、国産ヒノキに類似し大径材が多かったが、近年入手は困難になっている。国産ヒノキに比べると、1樹脂が多く、芯材は淡黄褐色または黄褐色。2材質は国産ヒノキより重硬で保存性が高い。用途は主に器具、車軸、船舶と高級建築用。
米桧は、太平洋側のオレゴン州、カリフォルニア州に産し、材は淡黄色でわずかに紅色を帯びて放香性がある。材質はかなり堅く、木目が通っていて耐久性がある。このため木曽桧の代用として使われることもあり、化粧材、建具、柱材、土台などに用いられる。
中国では扁柏と呼ばれるが、中国ヒノキは、同じヒノキ科でも針葉樹ビャクシンを指す。ヒノキは、長崎県の県木とされている。