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エコロジー住宅の奨め

 ―伝統民家の住まいと暮らしに学ぼう

―秋田県立大学木材高度加工研究所 

教授 鈴木 有


「エコロジー建築」とは
  消費者運動の盛んなドイツで生まれた 『エコロジー建築』の概念は、「地球環境 と地域の環境と人」という3つの対象に 負荷をかけない建築を意味します。
地球 環境への負荷を抑制することが第一の目 標で、その営みの積み重ねが地域と人へ の負荷を抑えることにつながる、という 思想です。
いわゆる「健康住宅」に代表 される「人が主役」の既存価値観とは根 底で異なります。
人間が健康で暮らせる ように自然環境を保全するのが「健康住 宅」の考え方でした。
さて、木造建築の構法で、上記のよう な意味での環境保全型を目指したもの、 優れたエコロジー性を持つものは何でし ょうか。
それは、わが国の木造伝統構法 のなかに見い出すことが出来ます。
これ は一つの完成された環境保全型構法、世 界で最高水準のエコロジーな構法と言え るかもしれません。
その理由を以下に示 します。
材料がエコロジー
  日本の伝統構法の建物は、鉱物資源と 植物資源によってのみ、極めて省エネル ギーな加工で造られます。
 屋根や壁や基礎に使われる土と石と砂 。
これらに代表される鉱物資源はほぼ無 尽蔵な大地の産です。
 木・竹・藁・茅(屋根材料の総称。
葭 、薄、稲藁などを指す)はあらゆる構造 造作・下地材に、屋根や建具に使われ ます。
畳や和紙は植物の2次製品、塗装 剤や接着剤も大半が植物性です。
これらの植物資源は1年から3年程度で 生育し供給されます。
この間の太陽エネルギーが生育の源です。
木だけが特別で、数十年以上を要します が、これまた無尽蔵な太陽エネルギーが 供給源です。
 加工は、切る、削る、混ぜる、焼く、 そしてバクテリアの働きで発酵させる、 等々。
 材料使用の基本はムク(素材のまま使 う)で、塗装や接着は必要最小限に抑え ます。
 そして、自然産の材料は出来るだけ地 場のものを使うので、運搬も省エネルギ ーです。
地球温暖化と木の住まい
  地球環境の保全は、人間が生態系の一 員と認識する限り、必然の事柄です。
住 まいや暮らしもその延長上にあらねばな らないでしょう。
 「人は自然を征服しうる」と考える西 欧合理主義。
この思想が明治以降のわが 国を席巻して以来、数々のツケが溜まり 、いま私たちの周りに深刻な「環境問題 」として渦巻いています。
 環境科学の専門家は次のように言いま す。
多くの環境問題の中で、いま影響が 最もグローバルで、深刻で、そして数量 による未来予測が可能なのは「地球の温 暖化」だ。
温室効果ガスの主役は炭酸ガ スCO2。
これを無尽蔵の太陽エネルギ ーのみで大量に吸収・分解し、炭素化合 物として固定するのが木・林・森。
「光 合成」の過程で、糖類主体の根・幹・枝 葉をつくる。
木を育て、低エネルギーで 木製品(木造建築)に加工し、長寿命に
使い、伐採した以上に木を植え育てる循 環の営み【写真1】が、自然界のCO2 収支を確実にマイナスに導き、温暖化の 阻止には寄与が大きい、と。
恐らくは最 後の、そして最大の拠り所になろう、と。
木を最も多く、長寿命に使うのは木造 の住宅です。
工法がエコロジー
  木材が主体の構造は必然的に組立式に なりますが、精巧な木の組み合わせをク サビ・セン・ダボ・シャチなどで固める 接合法には、特別の意味があると思いま す。
組み立てと逆の過程をたどれば必ず 解体が出来るのは、部材に用いた木材の 再利用を前提にした工法とみるべきでし ょう。
生育に特別時間を要する木材の使 用期間を延ばす工夫です。
事実、木材の 使い回しは徹底しています。
家屋の太い 材は性能がある限り何度も建て替えに、細い材や板材は倉庫や動物小屋に使われ ました。
  次回にお話ししますが、伝統的な家屋 は地震などの大きな力に襲われると、ま ず土壁の土に亀裂や剥落を生じて、軸組 を破壊するエネルギーをここでまず吸収 します。
土を先に壊すにも意味がありま す。
入手に時間がかかる木材の軸組を護 るとともに、剥落した土は塗り直しに再 使用され、不足分は大地からすぐに補充 できるからです。
維持管理でエコロジーに
  伝統構法では、「建物自身が呼吸する 」ことを大切にしてきました。
 調湿に優れた土や木を使うのも、構造 材を外気に曝す真壁工法とアラワシ構造 も、床下通気を旨とする基礎工法も、い ずれも木部の含水率の上昇を抑えて、腐 朽を防ぎ、長寿命に用いる工夫です。
 併せて、木部の腐朽は地盤回りや雨掛 かりに局限して、部分的補修で対処しま した。
「根継」に代表される見事な修復 の技と、構造材の点検がしやすい上記の 工法と、日々の手入れや季節の大掃除が 当たり前だった日常点検の仕組みが組合わさって、少なくとも50年前までは、 木造の維持管理はわが国で機能していた のです。
 伝統構法はメンテナンスフリーを目指 さず、維持管理の容易なシステムを作っ て、木材の、特に太径材の長寿命化を図 ったのです。
例えば、外壁の下見板は雨 に弱い土壁を護るものですが、その厚さ に地域性があります。
風化の早い海岸近 くなどで意外に薄いのは、外壁張替の時 期とその内側の構造体点検の時期を合わ せようとした工夫でしょうか。
■ 自立循環型社会システムの一環
  木材を例に取りましょう。
他の建築材 料も同様です。
 上記のように建物で使い回しをした後 は、燃料として使われました。
あとの灰 も組織的に回収され、酒造り、和紙づく り、陶磁器の釉薬、織物の染色、汚れ物 の洗剤など多目的に使われました。
なか でも多く使われたのは肥料。
優れたカリ 肥料としてわが国に多い酸性土壌の田畑 や雑木林に施されました。
こうして木は 大地に還り、次の植物あるいは鉱物資源 の再生へと循環しました。
 江戸期の後半には、藩を一つの圏域と して、『農系の自立循環型社会システム 』が構築されていたと言います。
木材も このシステムの中で、各種の専門業(例 えば、湯屋の木拾いや灰買い)を介して 循環したのでしょう。
伝統構法はこの循 環の仕組みに相応しく、形を整えていっ たものと思われます。
■ 文化としての「構造即意匠」
わが国の伝統構法は「構造即意匠」に 著しい特徴があります。
あらゆる造形要 素に構造的機能を持たせようと努めてい ます。
例えば、座敷の造作「長押」もく り抜いて柱にはめ込み、その接合部の剛 性を高めて、軸組の変形を抑え粘りを持 たせる一助にしました。
 
力学的合理性に裏打ちされた造形はそ れ自体が「美」です。
それ故に、この構 法による建物はどれも、緊張感のある均 整の取れた美しさを持っています。
 加えて、伝統構法は環境保全型、すな わち「永続可能な」材料と工法を基盤に しています。
それ故に、この構法は日本 文化を支える一翼たり得たのです。
 現代の化学工業製品に装われた箱形住 宅【写真2】と比べるとき、伝統民家に は気品と風格を、洗練された美しさを、 とりわけ強く感じるのは筆者だけではな いでしょう。
長い時間をかけた伝統構法 の形成とこれによる建物の建設と保全の 営みは、わが国の街並みを形づくってき ました【写真3】。
住まいと暮らしの在 りようにも色濃く影響を及ぼして、日本 の文化水準を高めていたと思うのです。

■ 伝統民家の住まいと暮らしに学ぶ  エコロジーな住まいはそこでの暮らし がエコロジーになって初めて成立します 。
私たち日本人の祖先が形づくってきた 伝統民家の住まいと暮らしには、見事な エコロジー的調和がありました。
 私たちはいま西欧の環境先進国を手本 にする前に、日本人本来の優れた伝統と 智恵を見直し、率直に向き合い、謙虚に 学び、現代の技術と融合させながら、私 たちの家づくりに再生しなければならな い、と思うのです。
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