健康を増進する健康住宅の基本は、まさしく自然と共生し、自然の癒しと蘇 生の力をもたらしてくれるマイナスイオンや・ゆらぎ・を採り容れ生きてい る自然の素材を使うことにこそある。
その中で、建築素材として最も価値のある材料で普及しているのが木材であ るが、洋風化の下で踏みにじられ、教育の中からも抹殺されてきたのが、木 と木の住まいだった。
その上、木材と言うとすぐに、俗に言う欠点が並べられる。白く、腐る、燃 える、曲がる、使いにくい……等である。確かに一面では欠点のようであり、 工業資材化への流れの中で木材攻撃のために使われたセリフでもある。 しかし、欠点とされているところにこそ木材の素晴しさとか、自然の為せる 偉大さがあるとは余り考えられていない。
まず「腐る」という問題については、木は生きている自然の素材である限り 腐朽菌によって腐るという必然性を持っている。しかし水分調節(乾燥)し て含水率を20%程度にすればまず腐ることはない。奈良の東大寺や法隆寺を はじめ、古い社寺仏閣その他の木の建造物が、今もって存在し続けることを 見ても、乾燥した木材の寿命は鉄やコンクリートの比ではない。土台等の地 中に埋める部分は人間と自然に害のない程度の防腐処理を施せば基本的に問 題は生まれない。
要は、自然の植物性素材であることを忘れないで、上手に使うことで、生き る材である。同時に腐るからこそ自然と環境に良いと言える。加工にもエネ ルギーを殆んど要しないだけでなく、廃棄しても土に還る優れた環境素材で ある。
人工的に作った無機質材等、自然の営みに還れない材が自然にも人間にも良 くないことと対比すれば、一層木材の良さが見えてくる。
次に「燃える」という批判について。確かに木は燃えるが、その炭化速度は 一分間に平均0.5ミリ程度で、30分燃やすと15ミリ程度燃えることになるが、 それだけでも105ミリ、120ミリの柱は充分強度を維持し、建物が壊れること はまずなく、火災の場合の初期消火を助けることになる。
木材は内部に小さなパイプ状の細胞をいっぱい持ち、空気がつまって熱が伝 わりにくい性格を持っているから、表面が燃えても内部までなかなか燃えな いし、燃えても表面が炭化することで防火能力を発揮する有能な素材である。 反対に、鉄は火災に際してはすぐ高熱化し折れ曲がるし、コンクリートは崩 れ落ちる。化学的に作った資材は有毒ガスを大量に発生させる等、際立った 違いがある。
このように、木材は燃えるが燃えにくいし、燃えても悪影響を及ぼさず、灰 になって自然に還る材料であると知ることができる。「曲る」と言われるが、もともと自然の素材で、形状が一様でないのは当り 前のこと。それを規格工業品と比較されても困るが、木の成育過程で傾斜地 等で樹心が一方に偏って肥大成長したあて(陽疾)と呼ばれる部分が、製材 後に水分変化によって曲るのが主な原因で、きちんと乾燥されてから製材す れば問題は少ない。
「使いにくい」と言う人もいるが、木の性格を知ればそれ程難しい問題では ない。規格品とは違うから手を加えなければならないが、それは当り前のこ とと受け止めてもらいたいもの。