シンドラノキ属の樹木
17.ジャワシンドラ
ジャワシンドラSindora javanica BACKER ex K.HEYNEはジャワ西部・中部産で、インドネシア名を
ukuaka、samparantuという。
高さ35m、直径70cmまでになる高木で、樹幹は円柱状、通直、枝下高は20mまである。葉は偶数羽状複葉、小葉は4~5対で長さ3.5~14cm、幅2~6.5cm、革質、下面に疎らに短毛を生ずる。花のがく裂片は短毛を布き刺はない。豆果は楕円形から円形に
近いものまであり長さ8.5cmまで、多数の樹脂質の短い刺があってその基部はふくれている。
材にはときに装飾的な縞が出る。材は市場で
sepetirとして扱われる。樹幹から得られる油はかつて灯用に使われ、果実は民間薬に用いられる。
18.Sindora sumatrana MIQUEL
Sindora sumatrana MIQUELはスマトラ産で、インドネシア名を
sindur、tampar hantuという。
中高木からかなりの大高木になるものがある。葉は偶数羽状複葉で、小葉は3対、長さ6~11.5cm、幅2.5~6.5cm、革質、無毛である。豆果は円形~広楕円形で長さ4cmまで、短くて太い刺を多く生じその基部はふくれている。
心材は黄褐色、紅褐色などを呈する。材の気乾比重に0.70~0.80の記載があり、心材は耐朽性があるという。材は市場でsepetirとして扱われ、家屋建築、家具、器具などに用いられる。樹幹から得られる油は灯用、ボートのコーキング材料などに使
われる。果実は“
saparantu”として取引され、熱病、子宮出血、皮膚病に用いられる。
19.Sindora galedupa PRAIN
Sindora galedupa PRAINはセレベス、モルッカ諸島産で、インドネシア名は
kayu galedupa、aygoa、mobingoである。
中高木。葉は偶数羽状複葉、小葉は3~4対、長さ3.5~12.5cm、幅2.5~6cm、薄い革質で、初め下面に短毛があるが後に無毛となる。花のがく裂片には縁を除いて短毛を生じ刺はない。豆果は円形~広楕円形で長さ6、ときに9cmまで、平滑で刺はない。
材の気乾比重に0.85の記載があり、市場でsepetirとして扱われる。
20.スパ
スパ(
supa、フィリピン名)
Sindora supa MERRILLはフィリピン産で、現地名にはそのほか
beloyong、tapulao、parina、manapoなどがある。
高さ30m、直径1.8mまでになる高木で、樹幹は円柱状で通直、枝下高は12mまである。板根は著しくない。樹皮は灰褐色などで、幹を取りまく横の細い稜線が現われる。
葉は偶数羽状複葉で、小葉は2~3対、楕円形など、長さ2.5~9cm、幅2.5~5cm、革質、無毛である。花のがく裂片は短毛を布き全面に刺状突起がある。豆果は多くは卵形で長さ5cmほど、刺を多く生じその基部はふくれている。
材は散孔材。辺心材の別は明瞭で、心材は鮮黄褐色、紅褐色など、しばしば濃色の縞が出る。木理は交走するものが多くときに著しいリボンもく(杢)を現わす。肌目はやや精でやや光沢がある。金平亮三氏によれば材の水浸出液は著しい蛍光を発する
。
道管は単独および2~3個が放射方向に接続し分布数は3~4/mm2、径は0.07~0.19mmてある。せん孔板は水平かやや傾斜し単せん孔である。ときに紅色のゴム状の内容物をもつ。材の基礎組織をなすのは不明瞭な有縁壁孔をもつ繊維状仮道管または真正
木繊維で、径は0.01~0.03mm、壁厚は0.003~0.005mmである。
軸方向柔組織のうち、周囲柔組織は薄く0~2細胞層である。ターミナル柔組織は放射方向に3~8細胞層で、垂直樹脂道はこの組織の中に内包されている。散在柔細胞はほとんどが放射組織に沿って存在し、5~25室の多室結晶細胞であることが多い。柔細
胞の径は0.02~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである。垂直樹脂道はターミナル柔組織に内包され、きわめて小さく径は0.02~O.04mmである。
放射組織は1~2細胞幅ときに3細胞幅で3~25細胞高。その構成は判然としない異性で、単列部の大部分と多列部の1部は直立細胞、方形細胞または高さが大きく長さが短い大型の平伏細胞からなり、他は高さが小さく長さが長い小型の平伏細胞からなる
が、ごれらの細胞種の区別は判然とせず移行的である。
材の気乾比重は0.73~0.83の記載がある。材の切削加工はときにやや困難とされるが、仕上げ面は良好である。乾燥はあまり速くないが損傷は少ないという。心材の耐朽性はかなり高い。
縞があるなどの美しい材面をもつものは高級家具、建築装飾材、楽器などに用いられ、その他の一般の材は建築、家具、器具、車両、船舶、土木用などに広く使われる。樹幹から得られるスパ油(Supa
oil)はペイント・ワニス・透明紙の製造、他の油への混合に、また地方的に灯油、皮膚病などの薬に用いられる。
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