フカノキ属の樹木(その1)
1.フカノキ属の概要
フカノキ属
Schefflera は
ウコギ科
Araliaceae の大きな属で
Agalma,Heptapleurum,Sciadophyllum,Parapanax,Paratropia,Brassaia を異名とし、さらに、
Tupidanthus その他を含める考えもあるが、
Tupidanthus は雄ずいの数が著しく多いので除いた方がよいと思われる。属の範囲のとり方によって種数が異なるが、上記の広くとった考え方で200種以上が含まれる。
英名で
umbrella tree,rubber tree,star
leaf,中国名で
鵝掌柴が通名である。分布はスリランカ、インドから東方のアジア大陸東南部、支那、日本、フィリピン、マレー諸島、ニューギニア、オーストラリア北部、ニュージーランド、ミクロネシア、サモアまでの太平洋諸島、アフリカ、マダガス
カル、セイシェル、中南米と熱帯、亜熱帯のきわめて広い範囲にわたっている。
植物の形態の概要をあげる。おもに常緑の低木、高木あるいは木本性のよじのぼり植物で、また着生植物、ことに幼時にそうであるものも多い。葉は互生する掌状複葉で3個以上の小葉からなるが、稀に1小葉のみ、あるいは単葉と見られるものがある。
小葉は革質で全縁であるが少数の疎歯または切れ込みまたは細鋸歯をもつものがある。葉柄はきわめて長く2個の托葉は舌状で葉柄に合着しときにその先端が長く伸びる。花は通常小さな散形花叢(散形小花序)または頭状、まれにばらついてやや総状に
集まり、この小花序が有柄で花軸分岐に総状に(まれに無柄で穂状に)分散または輪生してつき、全体として複生の大きな円錐花序をつくる。花は通常両性で萼筒は鐘形で子房と合着し、縁は全縁、波状または5歯があり花弁は5個または12個まで、雄ずい
と子房の室数は通常花弁と同数、雄ずいは1個で花柱は短または長、合一または僅かに離生あるいは欠如している。子房下位で各室に1個ずつの卵子を含む。果実は液果状の石果で球形に近く、少し隆条のあるものがある。
材は散孔材で、組織的に特徴あるのは放射組織中に水平細胞間道をもつものが出ることである。大部分は小径で市場材として意味のあるものはきわめて少ない。
2.ヤドリフカノキの名称、分布と形態
ヤドリフカノキの学名は
Scheffelera arboricola HAYATA で異名に
Heptapleurum arboricola HAYATA がある。台湾、支那南部、海南島に分布する。台湾名は
鵝掌蘗、狗脚蹄、中国名は
鵝掌藤である。常緑で自生のものはよじのぼり性の着生低木で細長な枝を分岐する。葉は5~9個の小葉からなる掌状複葉、小葉は倒卵状長楕円形などで長さ7~15cm、幅3~
7cm、鋭頭、鈍端、全縁、革質で光沢がある。総葉柄は円柱状で長さ10~20cmある。秋に開花し頂生した大きな複生の円錐花序を出す。花軸分岐に4~8花からなる散形小花序を総状につける。花は淡緑色で萼筒は扁円錐形、全縁に近く花弁は5~7個あって
楕円形、長さは約2.5㎜、3本の縦線がある。雄ずいは花弁と同数、花糸の長さ約3.5㎜、雄ずいは1個で花柱部分はほとんどなく子房は短い円錐形である。果実はほぼ球形で径は約5㎜、5~6個の稜があり黄色から紅色、黒色となる。種子5~7個を中心に含む
。
3.ヤドリフカノキの材の組織
金平亮三氏による台湾産材の組織の記載があるのでその要点をあげる。心材はなく全体灰色を呈し生長輪は不明瞭で軽軟である。横断面上で道管孔は均等に分布し単独または数個までが接続、その分布数は33~45/m㎡、単独道管の断面は楕円形で径は放
射方向0.05~0.10㎜、接線方向0.04~0.08㎜、せん孔板は傾斜し階段せん孔、階段の数に変化がある。接続道管の間の相互壁に階段壁孔をもつ。木繊維はしばしば隔離をもち長さは0.4~1.4㎜、径は0.015~0.025㎜、壁厚は0.004~0.005㎜である。軸方向
柔組織には完全でない周囲柔組織と基礎組織中に散在する柔細胞がある。放射組織は1~6細胞幅、10~35細胞高で異性、縁辺は通常直立細胞で構成される。ときに放射組織中に水平細胞間道(schizogenous cavityと記載)が現われる。
4.ヤドリフカノキの園芸品
このごろグリーン・インテリアとして流行している観葉植物に俗に
カッポクといっているものがあるが、これは
ヤドリフカノキの園芸品である。本当の
カッポク(kapok)は全く違った
キワタ科
Bombacaceae の
パンヤノキ Ceiba pentandra GAERTNER で、その種子を包む繊維が利用されているものである。似ているのは掌状複葉という処だけに過ぎない。それ故
ヤドリフカノキの園芸品は
シェフレラあるいは
アンブレラ・ツリーという方がよい。よじのぼり植物のなよなよした幹なので鉢植では支柱を立
てて仕立てる。繁殖はさし木、とり木で行われ、0℃以上に保てば越冬することができる。主な品種をあげる。
cv.Variegata:葉に黄斑が入る。
cv.Hongkong:総葉柄が短く小葉の幅が広く先端が鈍~円頭でやや厚い。いわゆるホンコンカッポク。
cv.Hongkong Variegata:前者の黄斑入り。
cv.White Hongkong:ホンコンの白斑入り。
cv.Compacta:矮生で小葉も小さい。
cv.Renata:ホンコンの葉の先端が2~3裂したもの。
5.ホザキフカノキ
ホザキフカノキには別名
シマコシアブラがあり、学名は
Schefflera taiwaniana KANEHIRAで異名に
Agalma taiwaniana NAKAI がある。台湾の海抜2,000~2,500mの処は自生する固有種で台湾名に
台湾鵝掌柴があてられる。常緑の小高木で小枝は太く髄に階段状の隔膜がある。葉は枝端に叢生し4~9個の小葉からなる掌状複葉、小葉は皮針形で長さ10~15cm、尾状鋭尖頭で鈍端、基部
は鋭形、全縁である。円錐状に複生した花序を直立して頂生する。花軸分岐には散形小花序をほぼ無柄で長い穂状につけ、1つの散形小花序は1~3個の小花からなる。花軸は有毛。花は不明瞭な萼歯・花弁・雄ずい・子房の室のそれぞれ6数からなる。果実
は球形で径が約7㎜、熟して紫色を呈し先端に花柱を残存する。
材の組織についての金平亮三氏の記載の要点をあげる。散孔材で心材がなく全体淡黄色、生長輪は不明瞭、肌目は精、軽軟である。道管は単独または2個以上が各方向に接続し、径は0.02~0.05㎜、階段せん孔で階段は0~7、内面に細いらせん肥厚があ
る。仮道管が通常道管の近くに存在し内面にらせん肥厚をもつ。木繊維にしばしば隔離があり長さ0.95~1.70㎜、径0.012~0.020㎜、壁厚0.003㎜である。軸方向柔組織はむしろ少なく繊維中に散在するものが見られる。放射組織は1~5細胞幅、10~40細胞
高でその構成は異性である。
平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る