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平井信二樹木研究
シンドラノキ属の樹木(その3)
9.Sindora coriacea MAINGAY ex PRAIN の概要
 Sindora coriacea MAINGAY ex PRAIN はタイ半島部、マレー、スマトラ、ボルネオ産で、タイで kling,khaman,マレーでsepetir lichin,sepetir minyak,インドネシアでsindur,malamari という。マレーで最もふつうなシンドラ属の種類である。
 高さ45m、直径1.4mまでになる中高木~大高木で、樹幹は円柱状、枝下高21mまでのものがある。葉は偶数羽状複葉で、小葉は3~4対、卵状楕円形などで長さ6.5~10(~15)cm、幅2.5~5(~10)cm、鋭頭、基部は円形、革質で無毛、両面で網脉が明瞭に みられる。
 腋生する花序は長さ15~20cmで、がく裂片に短毛は布くが刺はない。豆果は卵形~長楕円形で長さ10cmまであり、扁平、平滑で刺はないが、ときに無梗の腺体がある。種子2~3個を含む。  
10.Sindora coriacea MAINGAY ex PRAIN の材の組織、性質と利用
 散孔材。辺材・心材の境がやや不明瞭で、心材はふつう紅色を帯びた褐色である。木理は通直ないし浅く交走し、肌目は中位。
 材の顕微鏡的な構成要素とそられの材構成割合測定の例は次のようである。道管10.0%、真正木繊維67.2%、軸方向柔組織9.8%、垂直樹脂道1.0%、放射組織12.0%。
 道管は単独および2~3(~6)個がおもに放射方向に接続し、分布数は3~11/m㎡、径は0.03~0.22㎜、せん孔板は水平か僅かに傾斜し単せん孔をもつ。材の基礎組織を形成する真正木繊維は長さ1.20(0.73~1.57)㎜、径0.01~0.025㎜、壁厚0.00 3~0.005㎜である。
 軸方向柔組織のうち、周囲柔組織は薄く0~3細胞層、ときに僅かに翼状となり接線方向に4細胞まで連なる。ターミナル柔組織は放射方向に5~12細胞層で垂直樹脂道を内包する。散在柔細胞は単独のものが放射組織に隣接して放射方向にある程度間をお いて並ぶ傾向があり、その他に基礎組織中に散在するものはほとんど見られない。これらはほとんど多室結晶細胞のものがある。柔細胞の径は0.02~0.03㎜、壁厚は0.001~0.002㎜である。垂直樹脂道は同心円状の接線方向に少し間をおいて並び、ターミ ナル柔組織に包まれている。分布数0~6/m㎡、径0.002~0.10㎜である。
 放射組織は1~4細胞幅、3~35細胞高で、ややあいまいな異性である。単列のものおよび多列のものの上下両端1~3層の単列部のうち、最端1層が方形細胞ないし直立細胞または高さが大きく長さが短い大型の平伏細胞からなり、他の部分は高が小さく長 さが長い小型の平伏細胞からなるが、これらは変化が多く各細胞種の形態は移行的である。
 材の気乾比重に0.56~0.76の記載があり、0.69ものもで縦圧縮強さ474kg/c㎡、横圧縮強さ61kg/c㎡、曲げ強さ938kg/c㎡、曲げヤング係数13.9×10(4)・kg/c㎡、せん断強さ138kg/c㎡を示す。
 材はこの属のうちではやや軽軟な方で耐朽性はあまりない。装飾的な紋様がある材は家具、キャビネット、建築内部の装飾的な造作などに賞用される。普通材は一般的に各種用途に広く用いられる。樹幹から油が少量採取されて薬用などとされる。   平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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