キワタ属の樹木(その3)
15.Bombax brevicuspe SPRAGUEの概要
Bombax brevicuspe SPRAGUE(異名
Rhodognaphalon brevicuspe ROBERTY)は熱帯西アフリカのシェラレオネからギニア湾沿岸地域を経てガボンまでの森林に生ずる。
英名は
cotton tree,bombax,kapok,コートジボアールで
kondroti, ナイジェリアで
awori,ogiukpogha,akpudele,nyamenyok, カメルーンで
bouma という。
大きいものは高さ45m、直径3.2mに至る大高木で、鈍頭の板根が出るが、枝下の通直な樹幹部は長い。樹皮は灰褐色で、若令木では平滑であるが、その後凹凸ができてきわめて厚くなる。葉は互生する掌状複葉で、小葉は4~7個あり、倒卵形などで長
さ3~10cm 、幅1~4cm、円頭または短凸頭、基部は楔形を呈し、
革質、無毛である。小葉柄はなく、総葉柄の長さは1.5~5㎝である。
花は単生または少数が束生し、がくは緑色で宿存性である。この点を主にして
キワタ属
Bombax から分離し、別属
Rhodognaphalon として扱われることも多い。
花弁は白色、皮針形で長さ3.5~5㎝、雄ずいは多数で花糸は黄白色である。雄ずいは1個で、花柱はにぶい紅色を呈する。果実はさく(槊)果で、倒卵形などを呈し長さ5~8㎝、褐色を呈する。熟して5個の厚い果片に裂開する。果皮の内面に褐色の綿毛が
あり、梨形で長さ1㎝ほどの種子を包んでいる。
16.Bombax brevicuspe SPRAGUE の材の組織、性質とその他の利用
散孔材。辺・心材は一応区別され、辺材の幅は8~10㎝で灰白色など、心材は淡褐色、褐色、暗褐色を呈する。木理は通直、ときに不規則に交走することがあり、肌目はおおよそ粗である。縦断面でリップルマークが見られることがある。
道管は単独および放射方向などに2~3個、ときに小塊状に数個が接続する。単独道管の断面形は楕円形などで、心材の道管にはチロースを含む。
材の基礎組織は放射方向に1ときに2細胞層で交互に積層する繊維(繊維状仮道管または真正木繊維)と短接線柔組織とで形成される。繊維には隔壁がある。
軸方向柔組織は、0~2細胞層で薄く不完全な周囲柔組織と、前記の短接線柔組織とがある。放射組織は1~3、ときに4細胞幅、2~35細胞高である。
その構成は異性で、方形細胞ときにやや直立細胞の層と平状細胞の層とでなるが、これらは不規則に入り混じっている。細胞内に樹脂様物質の含有が多い。
ときに比較的大きい傷害垂直細胞間道が現れる。
材の気乾比重は0.50~0.60で、収縮は少なく、比重の割には強度がやや大きい。製材、切削加工などは容易で、人工乾燥でコラップスのおそれがあるが、乾燥後の寸法は安定する。接着、塗装、針の保持などに問題は少ない。心材の耐朽性はあまりよく
ないが、辺材の防腐処理は容易である。
材の利用は箱、包装材料、建築内装材・造作材、家具、器具などで、またロータリー切削をして合板に作られる。果実の綿毛は枕、クッションなどの詰め物その他に用いられる。
17.アフリカキワタ
アフリカキワタ Bombax buonopozense BEAUVOIS は熱帯アフリカのシェラレオネからナイジェリア、ウガンダ、ザイール、アンゴラに分布し、
英名を
red cotton tree,bombax, 仏名で
kapokier といい、ナイジェリアで
ponpola,obokha,akpan などの地方名がある。
高さ40mまでになる落葉大高木で、樹皮面に小さい疣状の隆起物があって粗い。高令木では縦の割れ目が入りコルク質の裂片となる。
またしばしば円錐状の刺があり、若令木ではその先端が黒い針となる。小枝は無毛である。葉は掌状複葉で、小葉は5~8個、倒皮針形などで長さ6~20cm、幅2.5~7cm、急鋭尖頭、基部は楔形、側脉は中央の小葉で12~25対ある。総葉柄の長さは7~
24cmある。
花は通常葉のない期間につき単生する。がくは黄緑色で食べられる。花弁は長さ6~9cmで、紅色を呈し、雄ずいは多数である。
さく果は円筒形で長さ10~25cm、5稜があり暗褐色を呈する。裂開すると白色または灰色の豊富な綿毛をあらわし、その中に多数の種子を包んでいる。
材は紅白色で、やや光沢があり、軽軟で気乾比重に0.30~0.45の記載がある。材は箱、雑用材その他に用いられ、また合板に作られる。
18.Bombax chevalieri PELLEGRIN
Bombax chevalieri PELLEGRIN はあるいは
キワタ属
Bombax から分離される別属
Rhodognaphalon に入れられるものかも知れない。
ガボンに生じ、現地名を
alone,ogoumalanga という。
高木で、alone
の名で出材される丸太の径は55~75cmである。板根が出る。葉は掌状複葉で、小葉は4~7個あり、倒卵形など、短凸頭、基部は狭い楔形を呈し、革質、無毛である。小葉柄はきわめて短く、総葉柄は長さ5~8cmで長い。花は白色で大きく、
がくは花冠や雄ずいといっしょに脱落しない。さく果の綿毛は明褐色を呈する。
散孔材。材は褐色を呈し、alone の名で出材されるものの気乾比重に0.50~0.60の記載がある。材は箱、包装材料その他雑用に用いられる。
19.Bombax costatum PELLEGRIN et VUILLET
Bombax costatum PELLEGRIN et
VUILLET はセネガルからナイジェリアを経て中央アフリカ、スーダンに至る熱帯アフリカのサバンナに生じ、ナイジェリアを経て中央アフリカ、スーダンに至る熱帯アフリカのサバンナに生じ、ナイジェリアで
kurya,baruhi,velta などという。
高さ3~15m、直径30cmほどまでの落葉高木で、樹皮は灰色を呈し、通常深い縦の割れ目が入り、太い刺をもつが、ときに平滑である。
小枝は初め密毛を被むる。葉は掌状複葉で、小葉は5~7個あり、倒卵形で長さ6~13cm、幅3~6cm、かなり急に鋭尖頭となり、基部は楔形を呈する。
中央の小葉で測脉は8~10対あり、総葉柄の長さは7~20cmである。
花は通常葉がない時期につくが、葉があってもつくことがあり、単生する。がくは暗紅色、花弁は橙色または紅色で、長さ4~7cm、雄ずいは多い。
さく果は円筒形から球形に近いものがあり、長さ6~16cmで稜角はない。熟して5片に裂開し、豊富な白色の綿毛をあらわし、中は黒色の種子を埋めている。
材は汚白色またはやや心材化して帯紅色を呈し、軽軟である。
20.ヒガシアフリカボンバックス
ヒガシアフリカボンバックス Bombax rhodognaphalon K.SCHUMANN et ENGLER(異名
Rhodognaphalon schumannianum A.ROBYNS )
はアフリカ東部のケニアからモザンピークに至る森林生の高木で、英名は
East African bombax, ケニアで
musufi-mwitu,muari,モザンピークで
munguzaという。
高さ15~35mの中~大高木、樹皮は黄灰色を呈し平滑である。葉は互生する掌状複葉で、小葉は3~7個、長さ2.5~7.5cmである。
小葉柄の長さは約6㎜、総葉柄の長さは約7cm先端は肥大する。花は葉脈に単生または2~5個が束生し、径が18cmまでと大きくがくは鐘形できわめて短く分裂し無毛に近く、宿存性で果実とともに生長する。花弁は5個あり、緑白色またはやや淡紅色を帯
び、狭い皮針形で長さは約10cmある。
雄ずいは多数であるが、下方は5個の束に集成し、花糸は紅色を呈して長さ約5cmで直生し、花冠から約6cm提出する。さく果は木質で、卵形長さは5cmほど、中に多数の褐色で平滑な種子をもち、暗褐色または紅褐色の綿毛に包まれる。キワタ属
Bombax から別属として
Rhodognaphalon を分離する場合は、その方に含められるものである。
現地民は種子を包む綿毛をクッションなどの詰め物に用い、また樹皮は紅褐色の染料とする。
21.Bombax flammeum ULBRICH
Bombax flammeum ULBRICH はコートジボアールからザイールに至る赤道アフリカに生ずる高木である。英名を
bombax, 仏名を
kapokier という。
材は
アフリカキワタ Bombax buonopozense BEAUVOIS に含めて同一に扱われる。すなわち、丸太の直径は1.0~1.5m、材は紅白色を呈し、かなり光沢がある。気乾比重は0.30~0.45、軽軟である。箱などの包装材、合板・ねり芯の心板などに用いられる。