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平井信二樹木研究
キバナヨウラク属の樹木
20.クイーンズランド・ホワイトビーチの概要
 ここではクイーンズランド・ホワイトビーチGmelina dalrympleana H.J.LAM(異名Gmelina macrophylla BENTHAM,non WALLICH)はGmelina leichharditii F.MUELLER ex BENTHAMおよびGmelina faciculiflora BENTHAMと同一種との見解に従っておく。それ故、後の二つの学名は異名の取扱いになる。
 オーストラリアのニューサウスウエールズとクイーンランドの東部・北部のおもに近海地域とニューギニアに生ずる。英名にQueensland white beech、New South Wales Beech、Dalrymple's white beechまたは単にwhite beech、beechがあり、grey teakの名もある。
 高さ30m、直径2mまでになる半落葉の高木で、大きいものの例では高さ59mの記録がある。樹幹は通直であるが、やや板根が出るか、または基部付近に隆条がある。樹皮は灰色から暗灰色を呈し鱗片化する。若枝には細軟毛を生ずる。葉は卵形から広卵形 、または心臓形となり、長さ5~25cm、幅4~15cm、鈍頭、基部は広い楔形から浅心形にわたる。側脉は7~8対あり、上面は無毛、下面と葉柄に細軟毛を布く。
 集散小花序が複成して頂生の大きい円錐花序となり、長さ15~20cmで多数の花をつける。花は長さ2.5cm、幅2cmほどで、がくは鐘形で長さ5mm。頂端は裂片する。花冠は下方が筒部、上方が5裂片になり、裂片は長さ、幅が5~7mmのほぼ三角形である 。多くは白色で紫色を帯び喉部に黄班がある。外面に暗色の密毛がある。雄ずいは4個の2強雄ずいで長さ10~15mm、子房は球形で疎毛があるか無毛、花柱は細くて長さ約20mm、頂端は2叉の不同長の柱頭となる。石果はほぼ球形で長さ2~3cm、両端がいく らか平らで淡紅色か紫色、青色を呈する。基部に宿存して大きくなったがくが密着している。中果皮は肉質、内果皮は硬い核で長さ1.5cm、中に4個の種子をもつ。  
21.クイーンズランド・ホワイトビーチの材の組織
 散孔材。辺・心材の区別は不明瞭で、心材相当部分は淡褐色を呈する。生長輪は不明瞭である。木理はしばしば交走し、肌目は中位である。
 道管は単独およびおもに放射方向に2~4個、ときに5個が接続し、またさらに小径の道管を伴って接続数が多くなる。分布数は5~20/mm2の範囲にあり、個体によって変化が多いと思われる。単独道管の断面形は広楕円形などで、道管の径は0.04~0.25mm を示す。せん孔板は水平ないし、やや傾斜し、単せん孔をもつ。薄壁のチロースを多く含む。材の基礎組織をなすのは繊維状仮道管と思われ、その径は0.01~0.03mm、壁厚は0.002~0.003mmで少数の隔壁をもつ。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織は一般に きわめて薄く0~1ときに2細胞層、僅かに翼状柔組織となる傾向があるものは接線方向に3細胞まで伸びる。ときにターミナル柔組織と思われるものが見られるが不明瞭である。また少数の単独で散在する柔細胞もある。柔細胞の径は0.01~0.045mm、壁厚は 0.001~0.002mmである。
 放射組織は1~5細胞幅で単列のものは少なく、個体によって2~3細胞幅、4~5細胞幅がそれぞれ優先すると考えられる。高さは3~30細胞高である。その構成は。ほとんど同性またはやや異性で、軸方向端末の単列部のものは軸方向の高さが高く放射方 向の長さが短い大型の平伏細胞ないし方形細胞へ移行型のものの層となる傾向があり、その他は通常の小型の平伏細胞の層である。細胞内の含有物は一般に少ない。  
22.クイーンズランド・ホワイトビーチ材の性質と利用
 材の気乾比重には0.47~0.51の記載がある。材質について次の値が報告されている。生材から気乾までの収縮率は、接線方向3.5%、放射方向1.5%、縦圧縮強さ367~408kg/cm2、曲げ強さ622~755kg/cm2、曲げヤング係数9.0~11.2×10(4)・k g/cm2、ヤンカ硬さ204~296kg。
 乾燥は比重の割に著しく遅いが、品質低下は少なくその後の寸法は安定する。製材と鉋削などの切削加工は容易である。接着はときに不良との記載が見られる。心材の耐朽性は屋内使用では良好で、屋外でもややあるものと評価されている。またキクイ ムシ、白蟻に対する抵抗性があるとの報告がある。
 クイーンズランド・ホワイトビーチはオーストラリアでは有用材の一つで、広く利用されてきたが、近年はその供給がきわめて少なくなっている。用途をあげると、建築を含む軽構造材、パネル・フローリング・枠材その他の建築内装材・造作材、家具・ キャビネット、各種器具、車両材、ボートの外板・カヌーその他の船舶材、各種型材、箱・包装材などがあり、また彫刻、旋削物にも用いられる。  
23.ニューギニア・ホワイトビーチの概要
 ニューギニア・ホワイトビーチGmelina moluccana BACKER ex K.HEYNE(異名Gmelina salomonensis BAKHUIZEN、Gmelina glandulosa H.HALLIER)はモルッカ諸島、ニューギニア、ニューブリテン、ソロモン諸島に分布する。英名でNew Guinea white beech、white beech、gmelina、Pacific gmelina、インドネシア(モルッカ、イリアン・ジャヤ)でkayu titi、oarawarahaという。
 常緑の中高木からかなりの大高木になり、高さが40m、直径が1mに達することは稀ではない。樹幹は円柱状で枝下は20mまでのものがある。樹皮は黄褐色を呈する。葉は広卵形で長さ10~40cm、幅7~35cm、鋭頭ないし鋭尖頭、茎部は広楔形から浅心形 となる。側脉は8~12対あり、下面に細軟毛を布く。
 花は集散小花序が複成してできた大きな頂生の円錐花序につく。がくは鐘形で小さく、端部に牙歯があり、花冠は2唇にわかれ、さらに上唇は2裂、下唇は3裂する。白紫色から青色または紫色を呈し、喉部は黄色となる。子房に密毛を生ずる。果実は下 方に幅が広い扁球形である。樹に芳香がある。  
24.ニューギニア・ホワイトビーチの材の組織
 散孔材。辺・心材ぼ境界は不明瞭で、辺材は白色、ときに部分的に緑色、黄色を帯びることがある。心材は淡褐色、黄褐色で、やや淡紅色を帯びるものもある。生長輪は不明瞭なものと、やや認められるものがある。木理は交走し、肌目は中位でやや光 沢がある。
 道管は単独およびおもに放射方向に2~5個が接続、また小道管を伴って最大14個までが提灯状となり、ときに接線方向に2個までの接続を含む団塊状となるものもある。分布数は3~15/mm2である。単独道管の断面形は円形、広楕円形などでやや角ばるも のがあり、道管の径は0.04~0.32mmである。せん孔板は水平から傾斜するものまであり、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔じは交互配列をしその径は0.008mmほどである。薄壁のチロースを多く含むことが著しい。
 材の基礎組織をなすのは少数の隔壁をもつ繊維状仮道管で、径は0.01~0.03mm、壁厚は0.002~0.004mmである。
 軸方向柔組織では、薄い周囲柔組織はあり0~2細胞層である。ときにターミナル柔組織と思われるものがあるが不明瞭である。単独で散在する柔組織も不明瞭である。柔細胞の径は0.015~0.03mm、壁厚は0.001~0.0025mmほどである。繊維と柔細胞中に 粒状のシリカの存在が知られているのは、この属ではこの種のみである。
 放射組織はふつう2~4細胞幅で、単列のものはきわめて稀であり、2細胞幅のものも少ない。5~35細胞高を示す。その構成はほぼ異性で、軸方向両端の単列部1層はおもに方形細胞、ときに丈の高い平伏細胞、他は通常の丈の低い平伏細胞からなる。  
25.ニューギニア・ホワイトビーチの材の性質と利用
 材の気乾比重に0.25~0.56の範囲の記載がある。が、多くは0.45~0.50の比較的狭い間におさまる。収縮率はキダチヨウラクGmeline arborea LINNAEUSと同程度と思われる、その他の材質数値の例をあげると、縦圧縮強さ367kg/cm2、曲げ強さ622kg/cm2、曲げヤング係数9.0×10(4)・kg/cm2、せん断強さ71~82kg/cm2、ヤンカ硬さは縦断面204kgである。
 製材は容易である。乾燥は比重の 割にはかなり遅いが品質低下はない。鉋削加工は容易である。ロータリー単板切削は前処理なしで行われるが、乾燥が素材と同様に遅い。接着は酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤ではほぼ良いが、他の合成樹脂接着剤ではあまり良くない。心材の耐朽性 はややあるとも、またないとも評価されている。心材への防腐剤注入は困難である。
 材の利用はキダチヨウラクと同様であるが、列挙すると、建築を含む軽構造材、建築造作材、家具・キャビネット、機器、ボートの板張り・カヌー・オールなど、箱・容器・包装材、楽器、玩具その他があり、これらのうちには合板の形で利用されるも のがある。  
26.Gmelina smithii MOLDENKE
 Gmelina smithii MOLDENKEはニューギニア産の高木である。散孔材で、道管は単独およびおもに放射方向に、また不規則に小道管を含み6個までが接続し、分布数は多い。単独道管の断面形は円形、広楕円形を示す。   平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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