12.Pithecellobium jiringa PRAIN
異名に
Pithecellobium lobatum BENTHAM がある。和名は
ジリンマメでビルマ名:
tanyin;マレー名:
jering,jiring,neing,bua jering がある。ビルマ、タイ、マレー、スマトラ、ジャバに分布し、マレーでは二次林、人里付近にきわめて普通でありまたよく植栽される。ふつう小~中高木で高さ12mくらいであるが、ときに高さ24m、直径100~125cmに達する。樹幹は通常曲がりが多く樹皮
は淡褐色、平滑で小枝は角ばらない。若葉は紫色でしなやかに垂れよく目立つ。羽片は1対、小葉は1羽片に2~3対つき長楕円形など、歪形とならず長さ5~28cm、幅2.5~10cmと大きい。花は黄白色などで、3~6個が径1.8cmほどの頭状花序を作りこれが長さ
10~23cmの円錐花序様に複生する。豆果は大きく長さ15~25cm、幅5cmほどで、種子を含む部分ごとに裂片化し中央付近で逆転するコイルを巻く。紫色を帯びた淡黄褐色で革質。種子は3~6個、偏平な球形で径2~4cm、紅褐色でニンニク様の匂いがある。
心材は褐色、材の気乾比重0.37の記載がありあまり有用でない。植栽は果実が目的で、生の種子は悪臭があるが熱を加えるとそれが消え広く食用とされている。ただし大量に食べると中毒を起こす。果実はまた染料、洗髪料、葉は薬用、若葉は食用となる
。
13.Pithecellobium ellipticum HASSKARL
マレー名:
saga gajah,jiring tupai,kenoah,kabau:フィリピン名:
bugas,salangkogi,tabid tabid などがある。ニコバル諸島、マレー、スマトラ、ボルネオ、ジャバ、フィリピンに分布する。高さ18mまでになる小~中高木で樹皮は銀灰色、ほぼ平滑、小枝は角ばらず軟毛がある。羽片はふつう2対、小枝は上の羽片に2~4対、下の羽片に1~2対、長楕円
形などでおおよそ歪形とならない。長さ8~33cm、幅3~14cmと大きい。花は黄色で2~5花がごく小さな頭状花序をなし、それが長さ30~50cm、ときに100cmの円錐花序様に複生する。豆果は幅2.5~4cmで径7.5~9cmの円形のコイルにかたく巻く。くすみ紅色
でやや薄い革質である。種子は3~7個あり長楕円形で長さ約0.9cm、黒色で細い糸状柄でぶら下がる。
材の顕微鏡写.真があるのでそれによって記載する。散孔材。道管は単独または2~3個が放射方向に接合する。分布は接合したものも1として2~4/m㎡、管孔は円形~広楕円形で径は0.08~0.20㎜、単せん孔、せん孔板は水平からやや傾斜。真正木繊維は径
0.015~0.035㎜、壁厚0.02~0.03㎜である。軸方向柔組織には周囲柔組織と少数の散在する柔細胞とがある。周囲柔組織は翼状柔組織に伸びるものがほとんどなく、管孔を囲んで1~2細胞層である。多室結晶細胞は見られなかった。柔細胞の径は0.02~0.0
5㎜、壁厚0.001~0.002㎜である。放射組織はほとんど単列で稀に2細胞幅の部分がある。2~20細胞高、構成は平状細胞のみよりなる同性である。材は雑用材に使われる程度で、刀の鞘によいという。樹皮は洗髪料に用いられる。
14.Pithecellobium globosum KOSTERMANS
異名に
Pithecellobium affine BAKER がある。マレー名は
keredas でアッサム、ビルマ、インドシナ、マレー、スマトラ、ボルネオ、ジャバに分布する。高さ8mまで、直径15~20cmの小高木で小枝・葉軸に軟毛が著しい。羽片は1~2対、小葉は上の羽片に3~4対、下の羽片に1~2対、倒卵状菱形で左右不同、長さ7.5~17.5
cm、幅4~9cm。花は白色で径2cm足らずの密な頭状花序をなし、これが長さ20~38cmの頂生円錐花序様に複生する。豆果は長さ約20cm、幅約3cmのものがコイル状に巻き、薄い革質でくすみ紅色または黄色。種子は6~8個あって長楕円形で長さ約2.5cm、黒
色で青白粉を帯び糸状柄でぶら下がる。材は雑用材となり、果実は煮てカレーに入れる。
15.Pithecellobium kunstleri PRAIN ex KING
和名に
ヤチジリンがあり、マレー名は
keredas,belengas hutan である。マレー、スマトラ、ボルネオに分布する。高さ9mまでの小高木で、羽片は1~2対、柄に細毛を布く。小葉は上の羽片に3~4対、下の羽片に1対、楕円形で左右不同、長さ5~12.5cm、幅2~5cmである。花は他種より大きく花冠の長さ1.3cm、4~12個
がやや大きい頭状花序をなし、それが長さ15~30cmの頂生円錐花序様に複生、花序軸には細毛を布く。雄ずいは挺出し長さ2cmまである。豆果は長さ12.5~15cm、幅1.2~2cmで径約5cmの円形のコイルにかたく巻き、薄い革質、外面は褐色で絨毛があり内面
は紅色を呈する。種子は8~10個で長楕円形、黒色、糸状柄で垂下する。若葉を煮食いし果実は洗濯に用いる。
16.Pithecellobium microcarpum BENTHAM
和名:
ヒメジリン;英名:
red pepper tree;マレー名:
keredas である。マレー、スマトラ、ボルネオに分布する。高さ6~9mの小高木で樹皮は淡紅褐色、平滑または小さい鱗片状になる。小枝は角ばらず細毛がある。若葉は紫色でしなやかに垂れる。羽片は2対または1対、軸に始め細毛を布く。小葉は上の羽片に2~4
対、楕円形で歪形にならず、長さ5~12.5cm、幅2~5cmである。花は黄白色で3~8個が径約1cmの頭状花序をなし、それが長さ10~20cmの円錐花序様に複生する。豆果は長さ4.5~13cm、幅約1.3cmで小さく、ややゆるいコイル状に巻く。橙緋色を呈する。種
子は8~10個、ほぼ球形で径約0.5cm、黒色である。果実は匂いがあるが、chutney(調味料)に入れられる。莢を煮食いに、葉を薬用とする。
17.Pithecellobium bubalinum BENTHAM
マレー名:
keredas,keredas padi;インドネシア名:
kabau で、マレー、スマトラに分布する。高さ15cmまでの小高木で、樹皮は密に溝が入り小枝に細毛がある。若葉は紅褐色を呈する。羽片は1対で無毛、小葉は羽片に1~2対、長さ7.5~19cm、幅3.5~7.5cmである。花は白色で5~8個が径0.75cmほどの頭状花序を
なし、それが長さ10~20cmの疎な円錐花序様に複生し軸に絨毛がある。豆果は長さ3.5~10cm、幅約2.5cmで鎌形様に僅かに曲がる程度であってコイル状に巻かない。くすみ紅色で2片に裂開する。
材の顕微鏡写.真があるのでそれについて記載する。散孔材。道管は単独または2~3個が放射方向に接合、ときに小道管が2個接線方向に接合して介在することがある。接合したものも1として分布数は2~5/m㎡、管孔は円形~広楕円形で径0.05~0.20㎜、
単せん孔、せん孔板は水平からやや傾斜する。真正木繊維の径は0.02~0.04㎜、壁厚は0.002~0.003㎜である。軸方向柔組織では周囲柔組織が管孔の周囲に1~3細胞層あってほとんど翼状とならない。散在する柔細胞はほとんど見られない。多室結晶細胞
は少ない。柔細胞の径は0.02~0.05㎜、壁厚は0.001~0.002㎜である。放射組織はほとんど単列でときに部分的に2細胞幅、2~20細胞高、構成は平伏細胞のみよりなる同性である。材は雑用材に使われ、豆果は食用となる。
18.Pithecellobium montanum BENTHAM
異名に
Pithecellobium subacutum BENTHAM がある。フィリピン名は
alobahai,tiken その他で、アッサム、ビルマ・テナッセリウム、マレー、ジャバ、モルッカ諸島、西イリアン、フィリピンに分布する。常緑高木で小枝は著しく角ばり褐色軟毛がある。羽片は6~10対、小葉は6~12対で著しく歪んだ長方形、羽片の上下ともほとんど同大
で長さ1.3~2.5cm、下面有毛である。花は白色で10個ほどが頭状花序をなし、それが円錐花序様に複生する。豆果は長さ10~12.5cmでコイル状に巻き、種子を含んだ部分が裂片化して著しく厚い。大径木は少ないが良質の硬質材で建築、家具などに用いら
れる。
19.Pithecellobium scutiferum BENTHAM
フィリピン産で
anagap,bag,baluk-baluk,busilak その他の名称がある。高さ20cm、直径60cmまでになる小~中高木である。散孔材。辺心材の境界は明瞭で心材は黄色、ときに紅褐色、生長輪が多少認められることがある。木理は通直、肌目はやや精で光沢がある。材の水浸出液は蛍光をもちフラボン反応
は陽性である。道管は単独または2~4個が放射方向に接合、接合したものも1として分布数2~5/m㎡である。管孔は円形~広楕円形、径は0.04~0.20㎜、単せん孔、せん孔板は水平ないしやや傾斜する。真正木繊維の径は0.02~0.03㎜、壁厚は0.002~0.003
㎜である。軸方向柔組織では周囲柔組織がよく発達してほとんどが翼状柔組織となり、ときに連合翼状柔組織ないし帯状柔組織を形成する。管孔の上下放射方向には2~5細胞層、翼状のものは接線方向に12細胞またはそれ以上に伸び、帯状部は輪郭が不規
則な波状をなし放射方向に3~12細胞層である。多室結晶細胞はこれらの中に点在し結晶は5~20個が軸方向に鎖状に連なる。散在する柔細胞も存在しこれにも多室結晶細胞となっているものがある。柔細胞の径は0.02~0.04㎜、壁厚は0.001~0.002㎜であ
る。放射組織は多く単列、まれに2細胞幅で3~28細胞高、平伏細胞のみよりなる同性である。
材は軽軟で気乾比重に0.46の記載があり強度も低い。生材から気乾までの収縮率は放射方向0.8%、接線方向2.0%、軸方向0.1%、体積2.9%という報告がある。乾燥容易で反り、割れなどは少ない。切削加工も容易で仕上げは良好である。耐久性は低い。用
途に軽構造材、器具、彫刻・額縁などの細工物その他があるが、市場材となることは少ない。
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