イトスギ属の樹木(その4)
15.アリゾナイトスギの概要
アリゾナイトスギ(
アリゾナヒバ、アリゾナビャクシン)
Cupressus arizonica GREENE(異名
Cupressus arizonica GREENE var.arizonica、Cupressus arizonica GREENE var.glomerata MARTINEZ、Cupressus arizonica GREENE var.minor
MARTINEZ、Cupressus benthamii ENDLICHER var.arizonica MASTERS)はアメリカのアリゾナ西南部、ニューメキシコとその近接地のメキシコに分布する。欧米を始め各地で植栽され、わが国へは明治中期に渡来した。英名は
Arizona cypress、rough-
barked Arizona cypress、独名は
Arizona-Zypresse、仏名は
cypres d' Arizona、中国名は
緑乾柏という。
高さ25m、直径1mまでになる高木で、樹冠は狭い円錐形をなし円頭となる。樹皮は初め緑褐色で平滑であるが、やがて長い割れ目が入って剥落し、高令木では灰色となり溝が生ずる。短い枝が密に水平に出る。鱗状葉をつける小枝は1平面をなさず、断面
は4稜形でやや太い。鱗状葉は斜方状卵形で長さ1.5~2mm、先端は鋭尖で背面は稜角があり、腺体はその程度に変化があるがふつう不顕著である。灰青緑色を呈する。
球果は球形または楕円形で長さ1.5~2.5cm、熟して暗紅褐色となる。種鱗は6、8または10個あり、楯形の上面は平坦または僅かに凹み、中央に小さいが顕著な突起をもつ。種子は各種鱗に8~10個ずつつき、楕円形ないしやや不規則な形で長さ4~6mm、
暗褐色を呈し、両側に狭く薄い翼をもつ。子葉は3~5個である。
心材は帯橙黄褐色などを呈し、辺材はこれより淡色である。木理は通直、肌目は精である。材の気乾比重に0.48の記載があり、加工は容易である。心材の抽出成分にはトロポロン化合物のBツヤプシノールが含まれていることの報告がある。
16.アリゾナイトスギの変種とその栽培品種
アリゾナイトスギの栽培品種として植栽されているものが多いが、その大部分は次に記す
グラブライトスギの栽培品種と考えられる。
アリゾナイトスギの変種とその栽培品種は次のようである。
(1)
グラブライトスギ(ウスカワアリゾナヒバ)Cupressus arizonica GREENE var.glabra LITTLE(異名
Cupressus glabra SUDWORTH、Cupressus arizonica GREENE var.bonita LEMMON):アリゾナに生じ、英名は
smooth-barked Arizona
cypress、smooth-barked cypress、red-barked Arizona cypress、red-barked cypress、Sudworth's silver
cypressという。母種と異なるのは、樹皮が平滑で橙褐色、紅褐色、紫褐色を呈することが主な点で、そのほか樹が小さい、葉に樹脂腺点が著しく葉をつぶすとグレープフルーツの匂いがするなどがあげられる。きわめて多くの栽培品種があるが、数例を
あげる。
(i)
Cupressus arizonica GREENE var.glabra LITTLE cv.Aurea:葉は金黄色を呈する。
(ii)
Cupressus arizonica GREENE var.glabra LITTLE cv.Compacta:矮性で球形のブッシュ。葉は灰緑色を呈する。
(iii)
Cupressus arizonica GREENE var.glabra LITTLE cv.Conica:樹冠は円錐形、枝は上向、小枝は密集するが間をあけて枝につく。葉はかたく圧着し、著しい灰青色を示す。
(iv)
Cupressus arizonica GREENE var.glabra LITTLE cv.Fastigiata:樹冠は狭く、枝は上向して密につく。葉は灰青色を呈する。
(v)
Cupressus arizonica GREENE var.glabra LITTLE cv.Fastigiata Aurea:前者と同様で、小枝は硫黄色を示す。
(vi)
Cupressus arizonica GREENE var.glabra LITTLE cv.Glauca:樹冠は円錐形または円柱形、葉は明瞭な灰青色を示す。
(vii)
Cupressus arizonica GREENE var.glabra LITTLE cv.Golden Pyramid:樹冠は円錐形、葉は鮮黄色を示す。
(viii)
Cupressus arizonica GREENE var.glabra LITTLE cv.Pyramidalis:樹冠は円錐形で密、葉は鮮灰青色を呈し、個々の葉は顕著な白色の腺点をもつ。
(ix)
Cupressus arizonica GREENE var.glabra LITTLE cv.Hodzinsii:葉は灰青色を示す。
(2)
ネバダヒバCupressus arizonica GREENE var.nevadensis LITTLE(異名
Cupressus nevadensis ABRAMS):カリフォルニアのパイユート山地に生じ、英名は
Piute
cypressという。高さ20mまでの高木で、樹皮は灰色ないし暗褐色を呈し、樹幹に溝が入る。葉は灰緑色で、著しい腺体をもつ。球果は熟しても閉じたままで数年間樹上に残る。
(3)クヤマカヒバ
Cupressus arizonica GREENE var.stephensonii LITTLE(異名
Cupressus stephensonii C.B.WOLF):カリフォルニアのクヤマカ山地にあり、英名を
Cuyamaca
cypressという。母種と
グラブライトスギとの中間型である。葉にかなり著しい腺体がある。
(4)
Cupressus arizonica GREENE var.montana LITTE(異名
Cupressus montana
WIGGINS):カリフォルニアに生ずる。高さ20mまでの高木で、樹皮は灰色ないし暗褐色、樹幹に溝がある。葉は暗緑色で、腺体は顕著である。球果は熟すれば裂開する。
17.カリフォルニアイトスギの概要
カリフォルニアイトスギ(
カシュウイトヒバ、カシュウヒノキ)
Cupressus goveniana GORDONはアメリカのカリフォルニア北部の太平洋沿岸地域に生ずる。庭園樹として植栽され、わが国へは明治末期に渡来した。英名
はGowen cypress、North Coast
cypressという。
高さ20mまたは以上、直径90cmまでになるが、自生地のものは通常高さ10mまでの小高木または低木状である。樹冠は通常円錐形ときに広く開出した形になる。樹皮鮮紅褐色から暗紅褐色などで平滑であるが、高令木では淡灰褐色を呈し裂片になって剥げ
る。枝は開出し、鱗状葉をつける小枝は1平面内に配列せず、その断面は4稜形で径は約1mmである。麟状葉は卵形で長さ1~1.5mm、鋭頭または鋭尖頭、小枝に密に圧着し、光沢ある暗緑色などを呈して灰白味はない。背側に不顕著な腺体がある。つぶすと
シトロネラ油またはペトロールの匂いがする。
球果は球形または楕円形で径1~2.5cm、灰褐色ないし暗褐色を呈し、種子を放出した後も樹上に残存する。種鱗は6、8または10個あり、楯形の上面は平滑で、平坦な円頭または中央に尖がった小突起をもつ。種子は各種鱗に10~12個がつき、長さ3~5mm
、暗褐色またはほとんど黒色に近く、両側に狭い翼を具える。
心材は黄褐色から褐色を呈し、木理は通直、肌目は精で、僅かに芳香がある。心材の抽出成分中にはトロポロン化合物のピグメイン、Bドラブリン、aツヤプシノールが含まれるとの報告がある。心材は耐朽性が大きいと考えられるが、市場材とはならな
い。
18.カリフォルニアイトスギの栽培品種と変種
カリフォルニアイトスギに次の栽培品種がある。
(1)
Cupressus goveniana GORDON cv.Bregeonii(異名
Cupressus bregeonii R.SMITH):低木性で、小枝は薄く青緑色を呈し、球果は球形で径1.5cm、灰色である。
(2)
Cupressus goveniana GORDON cv.Compacta:樹冠は整のった広い円錐形で先端は鈍頭となる。
(3)
Cupressus goveniana GORDON cv.Cornuta:低木性で、球果の形が不規則で大きく、ほとんど黒色、先端部の種鱗に角状の突端をもつ。
(4)
Cupressus goveniana GORDON cv.Pendula(異名
Cupressus californica CARRIERE):低木性で、枝は長く優美に下垂する。幼型の針状葉が1部にあり、鋭い鋭尖頭をもつ。
カリフォルニアイトスギの変種に次のものがある。
(1)
サンタクルーズヒノキCupressus goveniana GORDON var.abramsiana LITTLE(異名
Cupressus abramsiana C.B.WOLF):カリフォルニアのサンタクルーズ地方に生じ、英名を
Santa Cruz cypressという。ふつう高さ18m
までの高木であるが、ときに大きいものは高さ50mまで、小さいものは高さ20cmくらいのことがある。樹冠はふつう広い円錐形、また球形から円柱形までの変化がある。樹皮は灰色、褐色などを呈し、深い縦の溝が入る。主枝は水平に開出、二次枝は鋭角
で上向し、鱗状葉をつける小枝は、平面内にはなく、断面は4稜形で径1~1.5mmである。鱗状葉は卵形などで長さ1.5mm、広く開出して鋭頭で鈍端、鮮緑色を呈し灰白味はない。背面に腺体が不顕著であるかまたはない。雄花の長さは3~4mmである。球果は
球形ないし卵形で長さ2~3cm、熟して灰褐色を呈し灰白味を帯びない。種鱗は6、8または10個あり、楯形の上面は平坦で中央の突起はほとんどない。種子は各種鱗に10~12個がつき、長さ3~4mm、扁平で、褐色またはほとんど黒色を呈し、ときに僅かに灰
白味を帯びる。心材の抽出成分にトロポロン化合物のBドラブリン、Bツヤプシノールが含まれる。
(2)
チャポカシュウヒノキCupressus goveniana GORDON var.pygmaea LEMMON(異名
Cupressus pygmaea SARGENT):カリフォルニア北部のメンドシノ地方に生じ、英名を
Mendocino cypress、pygmy cypress、dwarf
cypressという。母種よりも強大になる高木で、良い処では高さ30mまたは以上になるので名称とはあわない。母種にくらべて葉が鈍端で、暗緑色を呈し、種子は通常光沢がある。材は淡紅褐色を呈する。心材の抽出成分にトロポロン化合物のピグメイン、
Bツヤプリシン(ヒノキチオール)、ヌートカチン、Bドラブリン、aツヤプシノールが含まれる。
19.マクナブイトスギ
マクナブイトスギ(マクナブヒノキ)
Cupressus macnabiana A.MURRAY(異名
Cupressus glandulosa HOOKER、Juniperus macnabiana LAWSON)はアメリカのカリフォルニアとオレゴン西南部に稀に生じ、英名は
MacNab cypress、fragrant cypressという。
高さ6~25mの高木ときに低木で、通常多幹でブッシュ状を呈し、樹冠は広い。樹皮は暗紅褐色、高令木で灰褐色となり、繊維質で粗く、構が入る。鱗状葉をつける小枝は1平面上になく、短くて断面は円形で径は0.5~1mmである。鱗状葉はかたく小枝に
圧着し、卵形で長さ1.2~1.5mm、鈍頭、光沢ある暗緑色から灰白味ある緑色を呈し、背側に明瞭な腺体をもつ。
球果は球形などで径2~2.5cm、熟して紅褐色または灰褐色を呈する。種鱗は通常6ときに8個、楯形の上面に曲がった円錐形の太い突起をもつ。
種子は各種鱗に多数がつき、長さ2~5mmで、褐色を呈し両側に翼をもつ。
心材は淡黄褐色、淡褐色で、木理は通直、肌目はきわめて精である。材の気乾比重に0.56の記載がある。市場での利用はほとんどない。
次の栽培品種がある。
(1)
Cupressus macnabiana A.MURRAY cv.Fastigiata:樹冠は円柱形を呈する。
(2)
Cupressus macnabiana A.MURRAY cv.Lilah:小枝は紅染する。
(3)
Cupressus macnabiana A.MURRAY cv.Sulphrea:小枝の先端は黄色を呈する。