カワラケツメイ属の樹木
1.カワラケツメイ属の概要
カワラケツメイ属
Cassiaは
マメ科
Leguminosaeジャケツイバラ亜科
Caesalpinioideaeに属するが、
マメ科を分割してそれぞれ独立の科とする場合には
ジャケツイバラ科
Caesalpiniaceaeとなる。属の名称は英名に
cassia、senna、独名に
Cassie、Gewurzrinde、中国名に
決明または
鉄刀木、山扁豆が用いられる。熱帯、亜熱帯を主にして約600種が含まれる大きな属である。
属としての通性をあげる。1年生または多年生の草本、低木または高木で、木本は常緑または落葉である。葉は互生する偶数羽状複葉で、多くのものは葉柄上または葉軸上に腺体をもつ。花は腋生の総状花序または頂生の円錐花序につくかあるいは葉腋
に束生するが、またこれらが複生して大きな円錐花序様になる。花序に包と小包がある。花は比較的大きく黄色、白色または淡紅色で、がく片は離生して5個、花冠は蝶形にならず花弁5個が同形に近いか少し不同で、雄ずい10個は離生しときに4~5個まで
に退化している。葯はふつう底着し頂端で開口するかまたは短く縦裂する。雌ずいは1個。莢果(豆果)は円柱形、扁平な線形などでときに隔壁があり、開裂または不開裂である。種子は多数で円形、菱形などを呈し胚乳をもつ、
日本には草本のカワラケツメイCassia mimosoides LINNAEUS subsp.nomame
OHASHIが雑草として自生しているが木本性のものはない。この属で
タガヤサンが木材として最もよく知られているが、他に市場材となるものは少ない。低本ないし小高木で花が美しいものが多いので南方地域では花木、行道樹として多く植栽されている。
草本性で栽培のハブソウCassia occidentalis LINNAEUS、エビスグサCassia obtusifolia
LINNAEUSを主にし、木本性のものも含めて多くの種類が世界各地で緩下、強壮などの薬用に広く使われている。有効成分はオキシアンスラキノンその他である。緑肥に栽培されるものもある。
2.ナンバンサイカチ
ナンバンサイカチCassia fistula LINNAEUSはインド、ビルマあたりが原産地とされるが、熱帯を中心に広く植栽されている。樹いっぱいに黄色の花穂を下垂してつけることから、英名で
golden showerとしてよく知られ、また
Indian laburnum、pudding-
pipe tree、purging cassia、monkey stickの名があり、独名は
Rohren
cassie、中国名は
臘腸樹、阿勃勒、午角樹、波斯皂莢という。各地の名称はインド:
amaltas、sonaru、kiralaなど;セイロン
:ehela;ビルマ:
ngu、ngsat;マレー
:bireksa;インドネシア
:kapoee;フィリピン
:fistula、cana fistula、bistulaなどがある。
高さ15mくらいまでになるおもに落葉性の高木で、樹皮は灰白色でほぼ平滑であるが、老木では褐色で粗面となる。葉は長さ15~45cmで、4~8対の小葉からなる偶数羽状複葉、小葉は楕円形など、長さ5~15cm、葉に腺体をもたない。長さ30~60cmの腋生
の総状花序を下垂し黄色の花を数多くつける。花径は3~5cmで芳香があり、雄ずいは10個で長さ不同である。莢果は円柱形で長さ30~60cm、黒褐色になる。種子の数がきわめて多く、扁平な卵形、長7mmほどで紅褐色を呈する。隔壁部分に黒褐色のパルプ
がある。
辺材の幅が広く、心材は黄紅色から紅褐色で空気にさらされて暗色となる。材の気乾比重に0.83~1.17の範囲の記載があり、重硬またはきわめて重硬であるがやや脆く割れやすいという。加工困難であるが、仕上げ面は光沢が出て美しい。耐朽性は高い
。柱および建築内装、家具、農機具・機械の台板・道具の柄・木槌・杵などの器具、車両・船舶、杭などの土木用材、旋削などによる細工物、薪炭その他に用いられる。ただし樹が小さいのでほとんど市場材とはならない。樹皮はタンニンを含み鞣皮、染
色に用いられ、アンスラキノンを含む果実のパルプその他はおもに緩下剤として利用される。花が美しいので庭園樹、行道樹としてきわめて広く各地で植栽されている。
3.マルババライロセンナ
マルババライロセンナCassia renigera WALLICHはビルマ原産で、英名は
Burmese
cassia、ビルマ名は
ngushwe、pwabetという。高さ13mまでの落葉高木で、小枝と葉には白色の短毛を残存する。葉は8~21対の小葉からなる偶数羽状複葉で、小葉は長楕円形など、鈍頭である。総状花序は直立して短かく、淡紅色の花をつける。花には芳
香があり、雄ずい10個のうち3個が長く7個は短い。莢果は円柱形で長さ6~45cmある。樹皮のタンニンが利用されるが、ふつう鑑賞用として熱帯各地で植栽されている。
4.モクセンナ
モクセンナCassia surattensis BURMAN FIL.C異名
Cassia glauca LAMARCKは、インド原産と考えられ、現在は各地で広く植栽されいたる処で見られる。英名は
glaucous
cassia、中国名は
黄槐、決明、黄槐、粉葉決明という。高さ7mぐらいまでになる常緑、ときに落葉の大低木ないし小高木である。葉は小葉4~7対からなる偶数羽状複葉で、小葉は卵状楕円形、倒卵形など、長さ2.5~10cm、下面はときに灰白色を呈する。
葉軸に腺体がある。総状花序を腋生し、径2~4cmの美しい鮮黄色の花をつける。雄ずいは10個とも完全である。莢果は扁平な線形で長さ7~20cmある。樹皮はタンニン原料となり、葉・種子などは薬用となる。花木。
5.Cassia timorensis DE CANDOLLE
Cassia timorensis DE CANDOLLEはインド、セイロン、ビルマ、インドシナ、マレーシア、フィリピンの石灰岩地に分布する。英名は
limestone cassiaといい、現地名には、ビルマ
:taung mezali;インドシナ:
muong
trang;マレー:
batai;フィリピン
:bagauなどがある。高さ8mまでの常緑低木ないし小高木で、小枝・若葉・花序に短毛がある。小葉は10~24対と数が多く、長楕円状皮針形などで長さ2.5~4cmと小さい。花は頂生の円錐花序につき、径3.5cmほどで濃黄色を
示す。莢果は長さ13~15cm、幅1.3cmほどである、心材は濃褐色から黒褐色を呈し、材の気乾比重に0.91、0.96の記載があり重硬である。ただし耐久性は低いとの報告がある。家屋建築、家具などに用いられることがある。
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