タカサゴノキ属の樹木(その2)
13.Homalium kwangsiense HOW et KO
Homalium kwangsiense HOW et KO は支那・広西省の西南部に生じ、中国名を
広西天料木という。常緑小高木で、樹皮は褐色を呈し割れ目は出ない。小枝に灰黄色の毛を生ずる。葉は長楕円形で長さ17~20cm、幅6~8cm、長い鋭尖頭、基部は楔形を示す。紙質で、細かい鋭鋸歯があり、
側脉は9~11対、上面は脉に沿って有毛、下面は一面に疎毛、脉に沿って密毛を生ずる。葉柄の長さは2~3㎜で褐色毛を密布する。
円錐花序を腋生し長さ10~13cm、花序軸は有毛である。花は8ときに9数性で、白色を呈する。花盤は9個の腺体からなり有
毛である。さく(蒴)果は円錐形で、種子3~4個を含む。
14.Homalium mollissimum MERRILL
Homalium mollissimum MERRILL は支那・海南島とベトナムに生じ、中国名は
毛天料木という。
高さ10mまでの小高木で、若枝に密毛がある。葉は楕円形で長さ5~11cm、幅2.5~5cm、鋭尖頭ないし鋭頭で、基部は広い楔形を示す。薄い革質で、細鋸歯があり、側脉は6~8対である。若葉
に黄色の毛をもつが、成葉は上面で次第に脱落する。葉柄の長さは2~5㎜である。密生毛をもつ。
長さ4~8cmの総状花序を出し、花序軸に密生毛がある。花は径4~6㎜で白色を呈する。がくと花弁はともに有毛で、花弁はがく裂片よりやや大きく、果時
に長さ3㎜以上となる。さく(蒴)果は倒卵形である。
15.Homalium paniculiflorum HOW et KO
Homalium paniculiflorum HOW et KO は支那・広東省、海南島産で、中国名を
広南天料木、紅皮という。
高さ12mまでの常緑高木で、若枝は有毛である。葉は卵状楕円形で長さ6~10cm、幅3~6cm、短鋭尖頭、基部は楔形から円形を呈する。薄い革質で、細鋸歯があり、側脉は6~7対、細
脉は不明瞭、無毛または下面の脉腋が有毛である。葉柄の長さは4~6㎜で有毛である。
円錐花序は長さ9~11cmで、花序軸に絨毛を布く。小花柄の長さは2~2.5㎜で有毛である。花は7ときに5~6数性、有毛である。材は家具、器具その他に用いられ
る。
16.Homalium phanerophlebium HOW et KO
Homalium phanerophlebium HOW et KO は支那広東省、海南島産で、中国名を
顕脉天料木という。
高さ12mまでの常緑高木で、樹皮は灰色から灰褐色を呈し割れ目が出ない。若枝に絨毛がある。葉は楕円形などで長さ3~12cm、幅2~6cm、短鋭尖頭ないし尾状鋭尖頭、基部は広い楔形を示す。鋸
歯があり、側脉は5~7対、下面の脉腋に短い束毛がある。葉柄の長さは8~15㎜である。
総状花序またはこれらが複成した円錐花序を頂生または頂生に近く出し、花序軸は有毛である。花は6~7ときに5または8数性で、白色を呈し、芳香がある。
がく裂片は長さ2㎜で、果時には2倍の長さに増大する。花弁はがく裂片よりやや長い。花盤腺体の裂片はがく裂片と同数で、腺体全体でこま形を呈する。子房は無毛を被むる。
17.Homalium sabiaefolium HOW et KO
Homalium sabiaefolium HOW et KO は支那・広西省に生じ、中国名を
柳葉天料木という。
常緑低木で、樹皮は灰褐色を呈し、割れ目は入らない。葉は皮針形または長楕円形で長さ8~10cm、幅2~2.2cm、やや鎌状で、鋭尖頭、基部は広い楔形を示す。波状細鋸歯があり、側脉は6~7対、ほぼ無毛であるが、下面の脉腋に束毛をもつ。葉柄の長
さは6~8㎜である。
総状花序は長4~6cmで、花序軸に黄色絨毛を生ずる。小花柄の長さは2~3㎜である。花は10ときに8~9数性で、径は8㎜まで、淡緑色を呈する。花弁はがく裂片よりやや大きく、果時には長さ3㎜以上に増大する。花盤腺体の裂片はがく裂片と同数である
。
18.Homalium stenophyllum MERRILL et CHUN
Homalium stenophyllum MERRILL et CHUN は支那・海南島に生じ、中国名を
海南天料木、狭葉天料木、母生という。
高さ6~21mの常緑高木で、樹皮は灰白色または灰褐色を呈し、小枝は有毛である。葉は長楕円状皮針形などで、長さ4~8cm、幅1~2cm、鈍頭または急鋭尖頭、基部は広い楔形を示
す。ほぼ革質で、鈍鋸歯があり、側脉は4~6対、無毛ときに下面脉腋に束毛がある。葉柄の長さは2~3㎜である。
総状花序が複成した長さ4~12cmの円錐花序を頂生または腋生し、花序軸は有毛である。小花柄の長さは1.5~2㎜を示す。花は8~9数性で
、がく筒部はこま形、疎毛があり、がく裂片は帯状へら形で、短軟毛とともに長い緑毛をもつ。花弁は帯状皮針形で長さ4㎜である。
雄ずいは各花弁の前に1個ずつがつき、花糸の中部以下で有毛である。子房に疎毛があり、花柱は3~4個あって中部以下で合着する。さく(蒴)果は、宿存して増大したがく裂片と花弁に囲まれる。材は硬く靱性があり、建築、家具その他に用いられる。
19.Homalium hainanense GAGNEPAIN の概要
Homalium hainanense GAGNEPAIN は支那・海南島とベトナムに生じ、中国名を
紅花天料木、母生、天料、竜角、高根などと称し、海南天料木の名もあげられることがあるが、この名称は正規には
Homalium stenophyllum MERRILL et CHUN にあてられる。
高さ40m、直径1mまでになる常緑大高木で、樹幹は通直である。樹皮は灰白色ないし灰褐色を呈し、ほぼ平滑で小片で剥落する。小枝は無毛である。葉は長楕円形などで長さ6~10cm、幅2.5~5cm、短鋭尖頭で鈍端、基部は広い楔形を示す。全縁または波
状縁でまれに鋸歯がある。側脉は8~10対、網脉は明瞭である。葉柄の長さは8~12㎜である。
腋生する総状花序は長さ5~15cmで、花序軸は有毛である。小花柄の長さは約2㎜である。がく筒部の長さは1㎜で短軟毛をつけ、がく裂片は4~6個あって長楕
円形、長さ1.5㎜で両面に短軟毛がある。花弁は4~6個、広いへら形、長さ2㎜、外面は紅色を帯び、内面に短軟毛をもつ。雄ずいは各花弁の前に1個ずつがつき、花糸は花弁より長くて無毛である。子房は有毛、花柱は4~6個ある。さく(蒴)果は倒円錐
形または紡錘形を呈する。
20.Homalium hainanense GAGNEPAIN の材の組織、性質と利用
散孔材。辺・心材の区別はほぼ明瞭ないし不明瞭でその境界は明らかでなく、辺材の灰黄褐色から心材の紅褐色、暗褐色に次第に濃色となる。生長輪は不明瞭である。木理は斜走または交走し、肌目は精で均質、光沢があり、特別な匂いと味はない。
道管は単独および2~4まれに7個までが放射方向に接続し、単独のもの少ない。単独道管の断面形は広卵形、楕円形などで、道管の接線方向の径は0.07~0.14㎜または以上である。せん孔板は傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は
交互配列をし、その長径は0.004~0.006㎜である。道管と放射組織の間の半縁壁孔対もこれに類似している。チロースはないか、または不明瞭である。
材の基礎組織を形成するのは繊維状仮道管で、常に隔離が存在する。長さは1.1~2.5㎜、径は多くは0
.02~0.025㎜、壁厚は中程度からやや厚い。
軸方向柔組織は欠如しているか、またはきわめて僅少である。放射組織は1~4、多くは3~4細胞幅で、1~43細胞高または以上であるが、15~25細胞高のものが多い。多列のものは軸方向両端のみならず中間で
も単列部分が混在する。その構成は異性で、単列部分は直立細胞または方形細胞の層、多列部はおおよそ平伏細胞の層からなる。細胞内に菱形の結晶が多くみられ、また常に樹脂様物質を含む。
材の気乾比重に0.82~0.84記載がある。次の材質数値があげられている。含水率1%当たりの収縮率は接線方向0.34%、放射方向0.21%、体積0.57%、縦圧縮強さ639kg/c㎡、曲げ強さ1,142kg/c㎡、曲げヤング係数11.6×10(4)kg/c㎡、衝撃曲げ吸収エ
ネルギー0.40kg・m/c㎡、ブルネル硬さは横断面10.3kg/m㎡、放射断面8.4kg/m㎡、接線断面9.3kg/m㎡。
製材は困難、乾燥も困難で木口割れ、表面割れが出る。鋸削では平滑な仕上げ面が得られる。釘の保持力は大きい。接着ではあまり問題がなく、塗装
後の光沢は良い。心材の耐朽性は大きく、白蟻に抵抗性があり、海虫にもよく耐える。
海南島では竜骨、船底板その他の船舶部材として、とくに重要とされている。そのほか一般構造物、建築構造材、家具、車両、器具・機械部材、埠頭設備・水工材な
どの土木材、彫刻、施削物その他の用途があり、燃材としても有用である。技条は釣竿に用いられ、樹は紫膠虫の寄主となる。
21.Homalium laoticum GAGNEPAIN
Homalium laoticum GAGNEPAIN はタイ、支那・雲南省南部、ラオスに生じ、中国名を
老?天料木という。
高さ20mまでの常緑また半常緑高木である。樹皮は灰白色を呈し粗?である。若枝は有毛であるが後に脱落する。葉は楕円形で長さ11~15cm、幅5~7cm、短鋭尖頭で基部は円形を
呈する。薄い革質で、鋸歯があり、側脉は9~10対、下面は有毛である。葉柄の長さは約10㎜で有毛である。
腋生の総状花序は長さ2~2.5cm、小花柄の長さは1.5㎜である。がく筒部と4個のがく裂片があり有毛、花弁は長さ約2㎜でがく裂片よりやや大き
く、果時には長さ3㎜以上に増大する。花は白色を呈する。雄ずいは各花弁の前に1個ずつがつく。
花盤は7~10個の腺体からなり、こま形を呈し、その中の1~2個はがく裂片基部につく。さく(蒴)果は有毛で、種子3~7個を含む。
変種
Homalium laoticum GAGNEPAIN var.glabratum C.Y.WO は支那・雲南省産で、中国名を
濶葉天料木という。高さ18m、直径80cmまでになり、樹皮は灰白色を呈し、粗?または細い縦の割れ目が入って砕片になって剥落する。材は
Homalium hainanense
GAGNEPAIN に似るが、多列放射組織は狭く通常2~3まれに4細胞幅で、その他の組織および材の性質、利用は上記の種とほぼ同様である。
22.Homalium dasyanthum WARBURG
Homalium dasyanthum WARBURG(異名
Homalium griffithianum KURZ,Blackwellia dcdasyantha TURZANINOW)
はビルマ、タイ、インドシナ、マレー半島に生じ、マレーで
telor buaya,ayer anjiing,petaling jantan,meserah puteh,lenggundi laut という。
ふつう高さ4~12m、直径10~20cmの小高木であるが、ときに高さ30m、直径70cmまでになる。
若枝には淡褐色の細軟毛を布く。樹皮は帯状になって剥げる。葉は卵状楕円形、倒卵状楕円形などで長さ5~12cm、幅3~5.5cm、鋭尖頭で鈍端、基部は円形から浅心形を示し、ときに左右不同である。
薄い革質で、ほとんど全縁ないし疎らな鈍鋸歯がある。側脉は5~7対あって下面では不顕著、網脉も不明瞭である。若葉は両面に細軟毛を散生、ときに密生、とくに下面脉上に多いが、成葉では無毛またはこれに近くなる。葉柄の長さは4~5㎜で淡褐
色の細綿毛を布く。
総状花序は単純で穂状に近く、長さ6~12cm、花序軸に淡褐色の細綿毛を布く。花は花序軸に沿って間隔をおいて2~4個ずつが輪生状に束出し、小花柄の長さは2~3㎜で細綿毛がある。
花は10~12、ときに9数性で、径は8㎜まで、黄緑色または白色を呈する。がく筒部は倒円錐形で長さ約3㎜、がく裂片は三角状線形で長さ2㎜、やや鋭頭、花弁は長楕円状倒卵形で長さ2.5~3㎜、がくにも花弁にも淡褐色の軟毛または開出毛を布き、とくに
緑毛が目立つ。雄ずいは各花弁の前に2個ずつがつき無毛である。子房に軟毛を被むり、花柱は5個ほどである。