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平井信二樹木研究
トネリバハゼノキ属の樹木
13.トネリバハゼノキの概要
 トネリバハゼノキ(トネリコバハゼノキ、トリバハゼノキ、ナンバンハゼ、ハゼモドキ、ランシンボク、カイノキPistacia chinensis BUNGE(異名Pistacia formosana MATSUMURA、Pistacia philippinensis MERRILL et ROLFE)は支那、台湾、フィリピンに分布する。英名をChinese pistachio、独名をchinesische Pistagie、仏名をpistachier de Chine、中国で黄連木、黄棟樹、黄色リ頭、楷樹、台湾で爛心木、脳心木、フィリピンでsangilo、agiau、mamagなどという。楷書の楷はこの樹がまっすぐなことからきたといわれるが、樹幹がとくに直幹性で目立つとはいえない。枝が比較的まっすぐで垂 れることが少いことによるものであろうか。中国山東省曲阜の孔子廟に門下の子貢が植えて、以来植えつがれたものがよく知られており、わが国への渡来も、1915年に白沢保美氏がこのものの種子を持ち帰り育苗したものが最初とされている。その後孔子 をまつる東京の湯島聖堂を始め各処に植えられたものがある。中国で進士の及第者にこの材の笏を授けたことがあるという。
 高さ25m、直径1mまでになる落葉高木である。樹幹はむしろ屈曲し、下方から枝を出す。樹皮は褐色で、浅い割れ目が入って鱗片状に剥がれる。小枝には細軟毛をもつ。葉は偶数または奇数羽状複葉で長さは20cmほど、小葉は10~20個あり、対生または やや互生して短柄をもつ。皮針形などで長さ4~8cm、幅0.6~2cm、鋭尖頭、基部は左右不同の楔形を示す。ほとんど無毛または主脉上に僅かに毛があり、葉柄の長さは5~7cmである。秋に紅葉または黄葉して美しい。
 春に開花し、雄花は腋生または頂生する長さ5~8cmの密な総状花序につき、花序軸は有毛である。がく片は2~4個あって辺縁有毛、花弁はなく、雄ずいが3~4個ある。雌花は長さ18~22cmの疎らな円錐花序につき、長卵形で径2mmの有毛の小包があり、 雌ずいは1個で、花柱は3裂し、柱頭は紫色を呈する。果実は球形ないし卵形で、径は0.3~0.6cm、先瑞は小尖頭になり、始め黄白色であるが、秋から冬に熟して暗紅色から暗紫色となる。  
14.トネリバハゼノキの材の組織
 通常環孔材であるが、ときにやや散孔材に近い状態のものがある。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は黄白色、薄黄褐色を呈し、幅は5~7cmある。心材は帯緑褐色、褐色などで、ときに暗褐色の同心円帯の縞があり、材色は時日の経過とともに暗色を 増す。木理は通常交走し、肌目はやや粗からやや精にわたる。大径のものではしばしば樹心付近が空胴となり、台湾名の爛心木はこのことによるという。心材の水浸出液は紫外線で蛍光を発する。
 環孔材のものでは、孔圏は1~4道管幅、道管は単独のも のが多く、ときに放射方向などに2個が接続し、分布数は12~18/mm2、単独道管の断面形は円形、卵形など、道管の径は多くは0.06~0.26mmである。孔圏外に入るとやや急に径を減じ、小径の道管がしばしば数個の放射組織を横切って斜線状などに十数個 まで接続またはグループになって近接配列し、また放射方向あるいは団塊状に数個が接続またはグループをなして配列するものもある。分布数は30~70/mm2にわたり、道管の径は0.01~0.06mmのものが多い。せん孔板はほぼ水平ないし傾斜し、単せん 孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、その径は0.006~0.010mmである。道管・放射組織間の壁孔対はほとんど単壁孔で、大きさは前者と同様であるが、楕円形から不規則な形を示す。小径道管の内壁にはらせん肥厚をもつ。心材では通常チ ロースの発達が著しい。
 材の基礎組織を形成するのは真正木繊維または繊維状仮道管で、長さは0.3~1.2mm、径は0.01~0.03mm、壁厚は0.004~0.006mmである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織は不規則でおおよそ0~3細胞層であるが、孔圏では道管の間は埋めて基礎組織になっているものがある。柔細砲の径は0.01~0.04mm、壁厚は0.001~0.002mmである。
 放射組織は1~4、ときに5細胞幅、1~44細砲高または以上であるが、多くは25細胞高までである。水平組胞間道を内包するものはその部分で8細抱幅まであり、高さも高くなる。その構成は異性で、単列のものおよび多列のものの軸方向両端のおもに1層 、ときに2~3層の単列部はほとんど低い直立細胞または方形細胞の層で、他は平状細胞の層からなる。細胞中には樹脂様物質を含み、またおもに縁辺の細砲中にしゅう酸石灰の結晶が見られる。
 水平細胞間道は放射組織の中央付近に1個含まれるが、出現数は比較的少い。接線断面における形は円形ないし広楕円形で、高さ0.06~0.08mm、幅0.04~0.07mmである。  
15.トネリバハゼノキの材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重に0.80~1.12の範囲の記載があり重硬である。次の材質数値の例がある。気乾比重0.82のもので、含水率1%当りの平均収縮率は、接線方向0.33%、放射方向0.20%、体積0.55%、縦圧縮強さ471kg/cm2、曲げ強さ1,146kg/cm2、曲げヤング係 数9.9×10(4)kg/cm2、衝撃曲げ吸収エネルギー1.46kg・m/cm2、ブリネル硬さは横断面9.3kg/mm2、放射断面8.5kg/mm2、接線断面9.0kg/mm2で、このうち衝撃値がとくに高いと思われる。
 乾燥は通常とくに困難ではなく、欠点が出ることが少い。切削加工なども比重の割には容易であり、仕上げ面は光沢がある。接着、塗装も良好で、釘の保持力は大きい。心材の耐朽性は高い。
 材は量的にまとまって出て市場材となることは少いが、建築構造材・内装材、家具、工具の柄・秤の悼・そろばんの玉と框・小箱・滑車・槍の柄その他の器具材、農機具、木造船、彫刻・寄木などによる工芸品、特殊のものでは宝石箱、碁盤、銃床、マ ドロスパイプ、ステッキなどの用途があげられる。
 中国では新葉を茶とし「黄リ茶」、「黄児茶」という。また芳香油をとる。根、枝葉、樹皮は薬用とされ、とくに葉芽は解熱、解毒などに用いられる。樹皮、果実からのタンニンが用いられることがある。樹は紅葉が美しいので庭園樹、並木に植栽され 、ヨーロッパなどでピスタシオノキPistacia vera LINNAEUSの接木台木に用いられる。  
16.セイコウボクの概要
 セイコウボクPistacia weinmannifolia J.POISS. ex FRANCHET(異名Pistacia coccinea COLLET et HEMSLEY)はビルマ北部、チベット、支那西南部に生じ、中国名を清香木、香葉樹、紫葉、昆明烏木などという。
 高さ10~20mになる常緑高木で、樹皮は灰色、灰褐色を呈し、裂片化する。小枝、若葉、花序に銹色の細軟毛を密布する。偶数羽状複葉の長さは6~15cm、小葉は6~16個が通常互生し、楕円形などで長さ1.5~4cm、幅0.8~2cm、円頭ないし鈍頭で微凹端 、基部は楔形を示す。革質で、上面はやや光沢があり、下面は灰白色を帯び、細軟毛を疎生する。葉軸に狭い翼がある。
 円錐花序を腋生し、紅紫色の小花を密につける。無花弁で、雄花のがく片が1~5個で有毛、雄ずい3~5個、雌花のがく片が2~5個、雌ずいが1個、子房は1室で無柄である。果実は球形で径は0.6cm、紅色を呈し網紋がある。  
17.セイコウボクの材の組織、性質と材その他の利用
 散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は淡黄褐色など、心材は暗紅褐色で黒色の縞があり、長くさらされて暗色を増し暗紫紅色、黒褐色となる。生長輪はほぼ明瞭または不明瞭である。木理はやや傾斜し、肌目はやや精である。
 道管は散在するが、その分布は均等でない。単独および放射方向に2~5個または以上が接続し、団塊状となるものも少数ある。分布数は30~45/mm2である。単独道管の断面形は円形などで、道管の接線方向の径は0.05~0.11mmを示す。せん孔板は水平な いし傾斜し、単せん孔をもつ。接続道管の間の有縁壁孔は交互配列をし、多角形などでその長径は0.009~0.014mmを示す。道管・放射組織間の壁孔対は大きい円形あるいは不規則な形を呈する。小径の道管の内壁にはらせん肥厚がある。チロースは豊富で 、ときに中に結晶を含む。
 材の基礎組織をなすのは真正木繊維、または狭い壁孔縁の有縁壁孔をもつ繊維状仮道管で、長さは0.6~0.9mm、径は0.01~0.02mm、壁厚は厚い。
 軸方向柔組織は発達が少く、薄くて不完全な周囲柔組織があり、ときに翼状、まれに短い連合翼状柔組織になるものがある。細胞内にはときに樹脂様物質を含む。
 放射組織は1~5細胞幅であるが、単列のものは少く、1~31細砲高または以上あり、多くは9~20細胞高である。その構成は異性で、単列のものおよび多列のものの両端1~2、ときに4層までの単列部、まれに中間でも直立細胞または方形細砲層からなり 、その他は平状細胞の層である。細砲中には菱形の結晶と樹脂様物質を含む。
 水平細胞間道は放射組織の中央部付近に1個が含まれており、その径は0.03~0.04mmである。
 材はトネリバハゼノキPistacia chinensis BUNGEよりも重硬で、強度もやや大きい。切削加工などはやや困難で、心材の耐朽性は高く、昆虫の食害に対しては抵抗性がある。
 建築構造材・内装材、家具、工具の柄・秤の棹・そろばんなどの器具材、農機具、楽器部品、彫刻・旋削などによる工芸品、ステッキ、マドロスパイプその他に用いられる。家具などではシタン(紫檀Dalbergia spp.コウキ(紅木)Pterocarpus santalinus LINNAEUS FIL.の代用とされる。葉から芳香油が得られ、葉の粉末を香料とする。
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