コウエンボク属の樹木(その1)
1.コウエンボク属の概要
コウエンボク属(
トゲナシジャケツ属)
Peltophorum はマメ科
Leguminosae の亜科
Subfam.,Caesalpinioideae,
またはマメ科の3亜科をそれぞれ科に独立させた場合の
ジャケツイバラ科
Caesalpiniaceae に属する。
インドから東南アジア、マレーシア・インドネシア地域、オーストラリア北部、アフリカ、中米、南米の熱帯地域を主にして約10種が分布している。
この属のものの名称として、英名は
yellow flame,インドで
iyavakai,中国で
盾柱木、双翼豆、ベトナムで
lim xet,hoang linh,カンボジアで
trasek,
マレーで
jemerelang,batai,インドネシアで
soga,フィリピンで
siar,アルゼンチンで
canfistula,ibirapuita などがある。
落葉の小~中高木で、刺は出ない。樹皮は灰褐色などでほぼ平滑であるが、また割れ目が入ってフレーク状になって剥げるものもある。
葉は互生する大きな2回偶数羽状複葉で、葉軸に腺体はない。羽片は対生し、小葉は多数で対生し無柄である。
花序は頂生または枝の頂端に近い処から腋生した総状花序が、複成して頂生の円錐大花序のようになる。花は大きく濃黄色などで装飾的で、芳香がある。
両性花で5数性である。がくは短い筒部にがく裂片5個がつき、裂片はほぼ同形である。花弁は5個あって開出し円形で、がく裂片も花弁も覆瓦状に配列する。
雄ずいは10個あって短く基部は有毛、葯は丁字着する。雌ずいは1個で、花柱は長く柱頭は楯状を呈する。
果実は豆果で、大きく紡錘形などで扁平、背腹縫合線に沿って全周に翼がつく。熟して裂開しない。中に扁平な種子数個を含む。
2.コウエンボク属の材の組織、性質と材その他の利用
材は散孔材。辺・心材の区別は不明瞭なものとやや明瞭なものとがあり、心材は淡紅褐色、紅褐色などを呈し、ときに暗色の縞がでるものがある。
生長輪は通常判別できる。木理は僅かに波状または交走し、肌目はやや粗~粗である。
道管は単独および2~4個がおもに放射方向に接続、またはやや団塊状に集合して接続するものがあり、分布数は比較的少なく、道管の径は中位からやや大である。
単せん孔をもつ。基礎組織をなす真正木繊維に隔室木繊維がある。
軸方向柔組織では、周囲柔組織がかなり発達するが、翼状または連合翼状柔組織になるものは比較的少ない。
晩材末端に放射方向に2~3個細胞層のターミナル柔組織が現れる。
放射組織は1~3細胞幅、おおよそ20細胞高までできわめて低い。構成はほぼ平伏細胞からなる同性である。
材の気乾比重は0.48~1.04の広い範囲にわたり、それぞれ比重に相応して材質に変化があるが、おおよそ中位からやや重硬程度のものが多い。
加工は一般に容易である。材の耐朽性は低いものもかなり高いものもある。
材のやや重硬なものは家具、器具、車両、構造材その他に用いられるが、一般に大きい材が少ないので市場材としてはあまり重要でない。
樹皮は染料、薬用となる。花がきわめて美しいので、庭園樹、行道樹として熱帯各地で広く植栽されており、またコーヒーやチャノキの庇陰樹として用いられている。
3.コウエンボクの概要
コウエンボク(
黄炎木、トゲナシジャケツ、ジュンケイボク)
Peltophorum pterocarpum BACKER ex K.HEYNE (異名
Peltophorum ferrugineum BENTHAM,Peltophorum inerme NAVES)
はスリランカ、アンダマン諸島、インドシナ、マレーシア・インドネシア地域、フィリピン、オーストラリア北部に広く分布し海岸に自生する。
また東南アジア、アフリカなどの熱帯各地で植栽される。英名を
yellow flame,yellow gold mohur,rusty shield-bearer,インドで
iya-vakai,
中国で
盾桂木、双翼豆、ベトナムで
lim xet,hoang linh,him vangh,カンボジアで
trasek,tramkang,マレーで
batai,batai laut,jemerelang, インドネシアで
soga,フィリピンで
siar,baringbing などという。
ほぼ落葉の小~中高木であるが、高さ30m近く、直径70cmになるものもある。樹冠は傘形となり、樹皮は灰色などを呈する。枝の頂芽がのびない仮軸分枝をする。
若枝・葉軸・花序軸・がくの外面などに銹色の細軟毛を布く。
葉は互生する2回の偶数羽状複葉で、長さ15~30cmになり、羽片は5~15対、各羽片に小葉が10~20対つき、長楕円形で長さ1.5~2cm、幅0.4~0.8cm、
円頭で僅かに微凹端または微凸端となり、基部は円形などで左右不同である。両面または下面に細軟毛があり、無柄である。
花は頂生して円錐状になった複成の大花序に多数つく。濃黄色で大きく芳香があり装飾的である。花梗の長さは0.2~1cmで、花径は約4cm、
花弁は倒卵形で縁が波状に縮れ、両面の基部近くに褐色毛がある。雄ずいの長さが約1.3cmで、花粉は濃橙色を呈する。
熱帯では年2回開花する。
豆果は長楕円形などで長さ6.5cm~14cm、扁平で上向きにつき楯のように見える。熟すると果柄で折れて飛散する。初めから銹褐色を呈し、中に2~7個の黒色の種子をもつ。