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平井信二樹木研究
イトスギ属の樹木(その1)
1.イトスギ属の概要
 イトスギ属(ホソイトスギ属、シダレイトスギ属、セイヨウイトスギ属、セイヨウヒノキ属、サイプレス属、クプレックス属)CupressusヒノキCupressaceaeに属する。モロッコからイランに至る地中海地域とアジア西部、ヒマラヤ地域と支那中部・ 南部、アメリカ東南部、メキシコ・グァテマラ・ホンジュラスの暖帯・亜熱帯・熱帯の沿海地や高地の風衝地などに20種などが自生している。また熱帯・亜熱帯の高地などに造林されるものもあり、さらに育成された多くの栽培品種とともに世界中の亜熱 帯・暖帯・温帯地域でコニファーの観賞樹としてきわめて広く植栽されている。
 英名をcypress、独名をZypresse、仏名をcypres、スペイン名をcipres、中国名を柏木、メキシコでcedro、cedro amarillo、cipres de Mexico、gretado amarillo、pinabete、teatlale、tlatzcanなどという。
 cypressというのは本来地中海地域・西アジア産のイトスギCupressus sempervirens LINNAEUSの名称であるが、ヒノキChamaecyparisのものを始め、これらによく似た材をもつ針葉樹に種々の形容詞をつけてcypressの名が多く用いられている。
 常緑の高木ときに低木で、若齢木ないし壮齢木では樹冠は円錐形や円柱形を呈するが、高齢になると平頂に近くなる。樹幹は通常単幹で、枝を上向または水平に開出し、鱗状葉をもつ小枝は断面が円形または4稜形で、ふつう元枝のまわりに展開して1平 面上に配列しないが、まれにヒノキChamaecyparis obtusa ENDLICHERに似た1平面になるものがある。成葉は鱗片状で長さ1~3mm、通常小枝に密に圧着する十字対生をなして4列につく。ふつう表裏葉と側葉はすべて同型であるが、ときに2型を示すものがある。縁はきわめて微細な牙歯があり、幼木や萌芽枝では突 錐形で長さ4mmまでの針状葉の幼型を示す。
 雌雄同株で雄花と雌花は別の小枝の頂に単生する。雄花は円筒形ないし長楕円形で長さ3~7mm、鮮かな黄色などを呈する。多数の雄ずいからなり、各雄ずいに2~10個の葯をつける。葯隔は顕著で鱗片状をなす。雌花は球形などで直立し、淡緑色など を呈する。通常6~16個の楯形の心皮からなり、各心皮の基部に5ないし多数の胚珠を着生する。球果は第2年目に成熟し、球形ないし楕円形で径は通常1.5~4cm、密についた6~16個の楯形の木質鱗片(種鱗)を十字対生してすり合わせ状につける。楯面は 4角形から6角形で、外面中央にumboと称する突起をもつ。稔性の各種鱗の内側にはふつう6~20個、まれに3~5個の種子をつける。種子は長楕円形などでやや扁平、稜角があり、両側に狭い翼をもつ。子葉は2~5個である。球果は種子を放出した後もとき に数年間樹上に残るものがある。
 イトスギ属とヒノキ属はきわめて近縁で、ChamaecyparisCupressusに含める考えもあるが、現在は次のことをおもな相違点とし別属として扱うことが多い。すなわちChamaecyparisでは、鱗状葉をつける小枝の断面は多少とも扁平で1平面をなすように 配列し小枝に表裏の別がある、鱗状葉の縁に細牙歯がない、球果は小く径が0.4~1.2cm、開花の当年に成熟し、稔性の種鱗に種子が2、ときに5個がつく、種子の翼の幅が広い、などの特徴がある。しかしこのように区別した両属にそれぞれ例外的な性質を もつものまたは不分明なものがある。シダレイトスギCupressus funebris ENDLICHERの鱗状葉をつける小枝は扁平で1平面内に配列し、球果が小く、各種鱗につく種子数も少いので、Chamaecyparisとし、アラスカヒノキChamaecyparis nootkatensis SUDWORTHは球果が第2年目に成熟するので、Cupressusとする考えも有力である。  
2.イトスギ属の材の組織
 辺・心材の区別は明瞭で、辺材は灰白色、薄黄褐色など、心材は淡黄褐色、淡褐色、黄褐色、褐色などを呈する。天然生のものは生長が遅いので生長輪の幅がきわめて狭いがほぼ明瞭である。晩材は一般に著しく狭く、早材から晩材への推移は緩かであ る。木理は通常通直、肌目は精で均質である。材面はやや光沢があり、香気をもつ。しばしば節が多いものがある。
 材の顕微鏡的構成要素とそれらが材を構成する割合は、仮道管が95~97%程度を占有し、軸方向柔細胞は微量、放射組織は2~3%程度である。まれに傷害垂直樹脂道が現れるものがある。
 仮道管は長さ1.5~3mm、放射方向の径は早材で0.03~0.05mm、晩材で0.01~0.03mm、接線方向の径は0.02~0.05mm、壁厚は早材で0.001~0.0025mm、晩材で0.0025~0.004mmを示す。有縁壁孔は1列で、早材の放射壁に多い。晩材では接線壁に現れるものが ある。径は早材で0.01~0.02mm、晩材で0.005~0.015mm程度である。孔口は早材で円形、楕円形など、晩材でレンズ形、楕円形などを示す。内壁にらせん肥厚は見られない。クラッスレー(crassulae、サニオのバー)はほぼ明瞭である。
 軸方向柔細胞は樹脂細胞で、中に濃色の樹脂を含み、やや接線方向に並んで配列する傾向がある。量はきわめて少い。径は0.02~0.03mm、壁厚はO.001~0.002mmほどである。
 放射組織は1まれに部分的2細胞幅、1~15細胞高である。放射柔細胞のみで構成される。放射断面でみられる放射柔細胞の隅にインデンチャー(indenture、凹陥)が明らかに存在する。仮道管と放射柔細胞との接触面をあらわす分野に出る半縁壁孔対は 早材で1~6個、晩材で1~2個あり、ほぼ円形のヒノキ型(cupressoid pit)で、孔口は楕円形などを呈し、壁孔縁の幅は狭い。  
3.イトスギ属の材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重に0.44~0.70の範囲の記載がありその重さ硬さはやや軽軟ないし中位程度である。造林木はふつう軽軟である。樹種を明らかにした記載された材質数値はそれぞれの項にあげる。心材には各種の精油分が含まれるが、とくにトロポロン 化合物(七員環)のBツヤプリシン(ヒノキチオール)、Bドラブリン、ピグメインなどの存在が知られている。
 一般に製材は容易、乾燥は速く損傷が出ることは少い。切削加工は容易で、仕上げ面は良好である。ふつうとくに樹脂質が著しいということがないので、ペンキなどの塗装にはほとんど支障がない。心材の耐朽性はきわめて高く、白蟻に対する抵抗性は 中位程度とされる。
 材が比較的軽軟で加工しやすく耐朽性が大きいので有用であるが、天然木は樹の形質が悪く、量的にまとまって出ることはほとんどないので、市場材として扱われることは少い。しかし東アフリカその他で造林されているものは今後多少有望かと思われ る。用途をあげると、建築とくに内装造作材すなわちフローリング・窓枠・ドアーおよび外装部材、器具、家具、車両、船舶などで、これらにはブロックボードの形で用いられるものがあり、また柵柱・枕木・橋梁などの土木材、箱と包装材、数量的に少 いが棺、楽器、鉛筆、マッチ、彫刻その他があり、燃材としても多く用いられる。
 枝葉、材、根、球果などから精油が得られ、香料、薬用に用いられるものがある。樹は観賞用として庭園樹、行道樹、生垣などに世界中で広く用いられ、多くの栽培品種が育成されている。アフリカ東部、南部を始めとして、やや乾燥性の山地、熱帯・ 亜熱帯の高地で造林されており、また沿海地域の風衝地などに植栽されているものもある。  
4.シダレイトスギの概要
 シダレイトスギ(イトヒバ)Cupressus funebris ENDLICHER(異名Cupressus pendula LAMBERT、Chamaecyparis funebris FRANCO)は支那中部・南部に分布し、また植栽も多くされている。わが国へは明治中期に渡来した。英名をmouring cypress、funeral cypress、Chinese cypress、weeping cypress、Chinese、weeping cypress、独名をTrauer-Zypresse、仏名をcypres funebre、中国名を柏木、柏木樹、柏樹、柏、香扁柏、垂糸柏、黄柏、掃帚柏、密密柏、柏香樹、柳柏、川柏、瓔珞柏、花香柏、材柏、垂柏、唐柏、宋柏、柏沙木などという。
 高さ35m、直径2mまでになる高木で、樹幹は通直、樹冠はふつう円錐形を呈する。樹皮は灰褐色などで、割れ目が入り長く狭い条片になる。大枝は細く、多くは水平に開出または上向するが、小枝になるとすべて縦に下垂する。先の方の鱗状葉をつける 小枝は一つの平面にひろがって2分岐し、枝の断面は扁平で幅約1mm、緑色であるが年を経ると円柱形で暗紫褐色となる。鱗状葉は表裏葉と側葉とで形がやや異なり、密に小枝に圧着し、長さ1~1.5mm、鋭尖頭で先端は離生する。淡緑色を呈し、中央の葉の 背面に条状の腺体があり、側葉の背部は稜をなす。
 雄花は球形または卵形で長さ2.5~3mm、雄ずいは通常12個あり、葯隔は常に鋭尖頭をなす。雌花は球形に近く長さ3~6mmである。球果は球形で径0.8~1.2cm、熟して暗褐色を呈し、短柄をもつ。種鱗は8個で、楯形の上面は不規則な5角形または4角形で幅 5~7mm、中央に尖った突起があるかまたはない。稔性の種鱗には種子が5~6個ずつつく。種子は広い倒卵状菱形または円形に近くて扁平、長さ約2.5mm、熟して淡褐色を呈し光沢がある。両側に狭い翼をもつ。子葉は2個で条形である。
 小枝の断面が扁平で1平面内に配列すること、球果が小いこと、1種鱗につく種子の数が少いことはヒノキChamaecyparisにきわめて近いことを示すものでイトスギ属Cupressusから外してChamaecyparisとする考えも有力である。
 中国各地で庭園樹として、また寺院や墓地にも広く植栽されている。名木では四川省成都の諸葛孔明の墓にある柳柏がよく知られている。
 栽培品種に次のものがある。
 (1)Cupressus funebris ENDLICHER cv.Gracilis:枝は疎らにつき、小枝は外方に開出して下垂し規則的な2列に配列する。
 (2)Cupressus funebris ENDLICHER cv.Viridis:枝の分岐が整っており、葉は鮮緑色を呈する。  
5.シダレイトスギの材の組織
 辺・心材の区別は明瞭またはほぼ明瞭で、辺材は黄白色ないし淡黄褐色を呈し、幅は6~8cmまたは以上あり、心材は黄褐色など、ときに淡紅色を帯び、外気にさらされていくらか暗色となる。生長輪は明瞭で、晩材はきわめて少く、早材から晩材への推 移は緩かである。木理は通直、肌目は精で均質である。光沢があり、さわってやや油質感があり、芳香をもつ。
 仮道管の平均長さは早材で2.25mm、晩材で2.5mm、接線方向の径は平均0.033mm、最大0.04mmまたは以上である。有縁壁孔は1列で早材の放射壁に多く、円形または卵形で、径は0.016~0.020mm、孔口は円形ないし楕円形を示す。晩材の放射壁では径0.00写 真~0.011mm、孔口はレンズ形ないし楕円形を示す。晩材では接線壁にも有縁壁孔が存在し明瞭である。
 軸方向の柔組織すなわち樹脂細胞は散在状で少く、接線方向に配列する傾向を示す。水平壁の肥厚はほぼ明瞭または不明瞭である。
 放射組織は1ときに部分的2細胞幅、1~14細胞高である。放射柔細胞のみで構成される。インデンチャー(凹陥)は明瞭である。仮道管との間の分野の半縁壁孔対はヒノキ型(cupressoid pit)で、1~6個、通常2~4個が1段または2段に並ぶ。少数の細胞中に濃色の樹脂物質を含んでいる。
 まれに傷害垂直樹脂道が現れるとの記載がある。  
6.シダレイトスギの材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重に0.44~0.59の記載がある。材質数値には次の報告がある。気乾比重0.45のもので、含水率1%当りの平均収縮率は接線方向0.20%、放射放射0.11%、体積0.33%、縦圧縮強さ343kg/cm2、曲げ強さ768kg/cm2、曲げヤング係数9.2×10(4)kg/cm 2、衝撃曲げ吸収エネルギー0.34kg・m/cm2、ブリネル硬さは横断面4.3kg/mm2、放射断面2.7kg/mm2、接線断面2.7kg/cm2。
 心材の抽出成分には各種精油成分のほか、トロポロン化合物でBツヤプリシン(ヒノキチオール)、Bドラブリン、ピグメインなどの存在が知られている。
 製材は容易、乾燥は容易で損傷が出ることは少く、乾燥後の寸法は安定している。切削加工も容易で平滑な良い仕上げ面が得られる。接着、塗装はふつう問題はなく、釘の保持も比較的良い。耐朽性は高く、白蟻に対する抵抗性は中位程度とされる。
 材の用途は建築内装・造作材すなわち壁面板・フローリング・窓枠・ドアー・シャッターおよび外壁板など、器具・機械部材、家具、農具、車両、船舶、箱と包装材、柵柱・枕木・橋梁などの土木材、楽器、棺、マッチ、鉛筆、彫刻などがあり、また燃 材にも用いられる。
 材・枝葉・根・球果から得られる精油は柏木油で、線香を含む香料や薬用とされる。樹は行道樹、庭園樹として中国では広く植栽される。
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