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平井信二樹木研究

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イトスギ属の樹木(その5)
20.ベーカーヒノキ
 ベーカーヒノキCupressus bakeri JEPSON(異名Cupressus bakeri JEPSON subsp.mathewsii C.B.WOLF、Cupressus macnabiana A.MURRAY var.bakeri JEPSON)はアメリカのカリフォルニア北部、オレゴン南部の太平洋岸付近の山地に生じ、英名はModoc cypress、Baker cypressという。
 高さ30mまでの高木で、樹冠は広い円柱形を呈する。樹皮は薄く淡紅褐色などで、裂片になって剥げる。鱗状葉をつける小枝は1平画内に配列せず、細く断面は4稜形で径は0.5~1.3mmである。鱗状葉は鋭頭または鈍頭、鮮緑色または暗緑色、背面に竜骨 稜があり、白色の樹脂腺体は顕著でレモンの匂いをもつ。
 雄花は楕円形などで長さ2~3mmである。球果はほぼ球形で径1.2~2cm、熟して褐色または銀灰色を呈し、種鱗4、6または8個からなる。楯形の上面で中央の短い小突起に急にしぼられる。各種鱗に種子が10個ほどがつき、長さ3~5mm、淡褐色などを呈し、 両側に狭い翼をもつ。
 Cupressus bakeri JEPSON subsp.mathewsii C.B.WOLFの名で亜種とされたものはオレゴンのシスキュー山地などに稀に生じ、英名はSiskiyou cypressという。種鱗の突起が母種ほど著しくないなどの点で区別できるとされるが、あまり明らかでない。
 
21.イワヒノキ
 イワヒノキCupressus guadalupensis S.WATSON(異名Cupressus macrocarpa HARTWEG var.guadalupensis MASTERS)はアメリカのカリフォルニア西南部とメキシコのグァダルペ島に産し、乾いた若石地などに生ずる。英名もGuadalupe cypressという。
 高さ12mまたはそれ以上、直径80cmまでになる高木で、ときに低木状を呈する。樹冠は球形で広がり、樹皮は灰褐色から深紅色で、ほぼ平滑で光沢があり、パッチになって剥げる。鱗状葉をつける小枝は細長、径は1~1.5mm、葉は細く長さ1.5~2mm、や や鋭頭または鈍頭、緑色から青緑色を呈し、背側の腺体は不明瞭である。
 球果はほぼ球形で径2.5~4cm、淡灰色を呈する。通常種鱗は6または8個ありきわめて厚い。楯形の上面の中央に不顕著な小突起をもつ。種子は各種鱗に10個余りがつき、暗褐色でときにやや灰色味を帯びる。
 変種ヒメイワヒノキCupressus guadalupensis S.WATSON var.forbesii LITTLE(異名Cupressus forbesii JEPSON)はアメリカのカリフォルニア西南部とメキシコのカリフォルニア半島に生じ、英名をTecate cypressという。高さ19mまでの小高木で、樹皮は紅褐色など呈し平滑であるが、薄い裂片になって剥げる。枝は多数で上向する。葉は緑色で、背側に腺体は明瞭または不明瞭である。球果は球形で径2~3cm、灰色から褐色を呈し、種鱗は6、8または10個で 、楯形の上面中央に、不顕著な突起をもつ。種子は暗紅褐色で白粉を被むらない。  
22.モンテレーイトスギの概要と材の利用
 モンテレーイトスギモンテレーヒノキ、オオミイトスギ、オオミノクプレッサスCupressus macrocarpa HARTWEG(異名Cupressus lambertiana CARRIERE、Cupressus hartwegii CARRIERE、Cupressus macrocarpa HARTWEG var.lambertiana MASTERS)の自生はアメリカのカリフォルニア・モンテレー地方の狭い区域に限られているが、その栽培品種を含めて庭園樹、行道樹として広く亜熱帯・暖帯地域に植栽され、また山地造林木としてアフリカ東部を始め各地で植栽されている。わが国へは 明治中期に渡来した。英名はMonterey cypress、Large-fruited cypress、Lambert's cypress、独名はZypresse von Monterey、grossfruchige Zypresse、仏名はcypres de Montereyという。
 高さ25mまで直径1mまでになる高木で、樹冠は若令木では円錐形または円柱形であるが、後に広くなり円頭を呈し、高令木では大枝が水平に出ており開出して樹冠は平頂となる。樹幹は単幹で太いが、ときに多幹のものがある。樹皮は若令木で薄褐色ま たは灰色でやや平滑に近いが、年を経ると割れまたは溝が入り、繊維質の裂片化する。鱗状葉をつける小枝は短くて、1平面上になく各方向に不規則に開出し、断面は円形または僅かに4稜形で径は1.5~2mmである。つぶすとレモンの匂いがする。鱗状葉は 規則的な4列になって小枝にかたく圧着し、その基部でのみ互いに重なり、概形は菱形で長さ約1.5mm、やや鋭尖頭である。緑色を呈し僅かに白粉を被むる。背側に不顕著な腺体が葉の中央でなく偏った処に存在する。
 球果は短い小枝に単出または2~3個がつき、球形ないし楕円形で長さ2.5~4cm、灰褐色から褐色を呈する。種鱗は8~14個(4~7対)あり、楯形の上面は同形でなく円形または不規則に角ばる。凸面または僅かに凹面になって、中央に短い突起をもつ 。種子は各種鱗に8~20個ずつがつき、形は不規則で褐色を呈し、微小な樹脂瘤と両側に狭い翼をもっている。
 辺、心材の区別は明瞭で、辺材は灰白色ないし薄黄褐色、幅は5~10cmあり、心材は淡黄褐色、淡紅褐色、黄褐色、褐色などを示す。生長輪は目立たない。木理は通常通直、肌目は精で均質、やや芳香がある。天然木では節がかなり多い。
 材の気乾比重は天然木で0.63、アフリカの造林木で0.47の記載がある。重さの割合いには強く、天然木で曲げ強さ1,045kg/cm2、曲げヤング係数10.7×10(4)kg/m2の例がある。製材、乾燥、切削などの加工は容易で、心材の耐朽性は大きい。
 自生地では量が少く、樹の形質が悪いためほとんど市場材とならないが、東アフリカその他で造林されたものは一般用材として利用される。すなわち建築構造材および造作材、家具、器具、箱と包装材、柵柱などの土木材その他に用いられる。
23.モンテレーイトスギの栽培品種
 モンテレーイトスギの栽培品種はきわめて多く、世界中で庭園樹として広く植栽されている。おもな例をあげる。
(1)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Coneybearii Aurea(異名Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Aurea Saligna):高木または低木、小枝は糸状で下垂し、葉は金黄色を呈する。
(2)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Crippsii:枝は短く太くて剛く、広く開出する。突錐形の幼型の針状葉をもち、新葉はクリーム白色を呈する。
(3)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Donard Gold:樹冠は円錐形または円柱形で、生長は遅い。葉は金黄色を呈する。
(4)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Fastigiata(異名Cupressus lambertiana CARRIERE var.fastigiata CARRIERE):樹冠は円柱形または狭い円錐形で、枝は上向する。
(5)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Gold Cone:コンパクトな樹冠で、枝は上向する。成葉は強い金黄色を呈する。
(6)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Gold Crest:樹冠は狭い円錐形で、幼型の針状葉を数年保つ。良い金黄色を示す。観賞樹のコニファーとしてこのごろ最も流行しているものの一つである 
(7)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Golden Pillar:樹冠はきわめて狭い円錐形で、すべての枝は上向し、葉は良い金黄色を呈する。
(8)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Glove:やや矮性で、樹冠は球形を呈し、圧着する鱗状葉のみからなる。
(9)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Horizontalis:枝を水平に開出することが著しい。
(10)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Lutea(異名Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Aurea):英名をgolden Monterey cypressという。樹冠は広い円錐形を示す。新葉は黄色であるが第2年目には緑色となる。球果も黄色を呈する。
(11)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Minima:矮性で、樹冠は球形である。始めおもに幼型の針状葉をつけ、時を経て鱗状葉が混じる。
(12)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Pendula:樹冠は円錐形で、小枝が下垂する。
(13)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Pygmaea:矮性できわめて低く高さ50cmまでである。ほとんど鱗状葉であるが、枝の基部に針状葉をもつ。
(14)Cupressus macrocarpa HARTWEG cv.Variegata:新葉に不規則に白斑が現れる。
24.サージェントイトスギ
 サージェントイトスギ(サージェントヒノキCupressus sargentii JEPSON(異名Cupressus sargentii JEPSON var.duttonii JEPSON)はアメリカ・カリフォルニアの沿海地域のきわめて限られた区域に生じ、英名をSargent cypressという。
 高さ35mまでになる高木であるが、ときに高さ10m以下の小高木または低木状となる。樹冠は狭い円錐形ないし広いブッシュ状である。樹皮は灰色、褐色またはほとんど黒色を呈し、厚い繊維質で構が入る。鱗状葉をつける小枝は不規則に分岐し、径は1. 5~2.5mmである。蝶状葉は鋭頭で鈍端、灰緑色を呈し、背側は円いかまたは角稜があり、ふつう不活性の樹脂腺体をもつ。
 球果はふつう球形で径は1.5~3cm、褐色または灰色を呈し灰白味を帯びない。種鱗は4~10個(2~5対)あり、楯形の上面に樹脂瘤を散布し、通常不規則な刺状突起をもつ。種子は各種鱗に十数個がつき、長さ4~6mm、褐色で灰白味を帯びる。
 辺・心材の区別は明瞭で、辺材は白色、心材は淡褐色を呈し、軽軟で強度は低い。心材の抽出成分にトロポロン化合物のBドラブリン、Bツヤプシノールが存在する。

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