タカサゴノキ属の樹木(その3)
23.Homalium tomentosum BENTHAMの概要
Homalium tomentosum BENTHAM(Blackwellia tomentosa VENTENAT)はインド東北部、バングラデシュ、ビルマ、タイ、インドシナ、スマトラ西部、ジャワ中部、東部、小スンダ列島の比較的乾燥した処に生ずる。英名を
Burma lancewood、Moulmein
lancewood、ビルマで
myakchaw、タイで
kha nang、chang phuek luang、puei khang hai、カンボジアで
phloeuo nieng、ラオスで
khen nang、インドネシアで
dalingsam、gelinseng、kaladdo、neku、obなどという。
高さ50mまで、直径90cmまでになる落葉中高木ないし大高木である。樹幹は円柱状で、高さ1mまでの板根があり、枝を水平に近く張り出す。樹皮は薄く平滑、白色または淡灰色の表皮が剥げた跡は緑色を帯びる。若枝には細綿毛を布く。葉は広倒卵形な
いし倒卵状長楕円形で長さ7.5~25cm、幅4~13cm、鈍頭または短凸頭、基部はほぼ楔形を呈する。やや革質で、離れた浅い腺状鈍鋸歯があり、側脉は10~14対あって著しい平行をなす。上面は無毛で、下面は細綿毛を生ずる。葉柄の長さは1~5mmで太い。
腋生する長い穂状様の総状花序は単純または基部近くで一、二分岐し、長さ10~35cm、花序軸に黄色の細綿毛を布き、下垂する。花は軸に沿って2~5個ずつが束出するものがらせん状につき、ほとんど無柄に近い。花は5~6数性で小さく、帯緑色で不快
な匂いをもつ。がく筒部は円錐形で、細綿毛があり、がく裂片と花弁はともに線状長楕円形で長さ約1.5mm、絨毛を被むる。雄ずいは各花弁の前に1個ずつがつき、花糸の長さは2mmである。花柱は2~3個で無毛である。さく(蒴)果は長さ約3mmで裂開せず
、種子1個を含む。
24.Homalium tomentosum BENTHAMの材の組織、性質と利用
散孔材。辺・心材の境界は不明瞭で、心材は黄褐色、褐色、暗褐色を呈する。肌目は精である。
道管は単独および2~4個が放射方向に接続し、単独のものは少ない。分布数は31/mm2ほどである。単独道管の断面形は広楕円形などで、道管の径は0.04~0.14mmを示す。せん孔板は傾斜し、単せん孔をもつ。
材の基礎組織をなす繊維(繊維状仮道管と思われる)に隔壁はほとんど見られない。径は0.01~0.025mm、壁厚は0.004~0.007mmである。
軸方向柔組織の存在はきわめて少なく、僅かに単独散在状のものが見られる。柔細胞の径は0.01~0.03mm、壁厚は0.001~0.002mmほどである。
放射組織は1細胞幅および2~3細胞幅の多列であるが、多列のものでは軸方向両端のほかに中間でも8層までの単列部が入りまじる。構成は異性で、単列部はほとんど直立細胞または方形細胞層からなり、多列部は丈が低い平伏細胞層からなる。辺縁など
の大型細胞に菱形の結晶が多く含まれる。また一般の細胞内に内容物が多い。
材の気乾比重に0.80~1.12の範囲の記載がある。材質数値に次の例がある。生材から全乾までの全収縮率は接線方向9.2%、放射方向5.1%、縦圧縮強さ689kg/cm2、曲げ強さ1,32
3kg/cm2、曲げヤング係数14.6×10(4)kg/cm2、せん断強さ100~107kg/cm2、衝撃曲げ吸収エネルギー1.04~1.17kg・m/cm2、ヤンカ硬さは横断面1,103kg、縦断面957kg。
製材はやや困難、乾燥は困難で割れ、狂いが出やすい。鉋削などの切削加
工はやや困難であるが、仕上げ面は良好である。心材の耐朽性は接地・外気条件でも高く、白蟻・昆虫に対する抵抗性は大きい。
用途として一般構造物、建築構造材・造作材、家具、器具、農機具、車両、船舶、柵柱、などの土木材その他があげられ、マッチにも使われる。燃材として良く木炭は良質である。
25.Homalium grandiflorum BENTHAM
Homalium grandiflorum BENTHAM(異名
Homalium damrongianum CRAIB、Homalium parvifolium HOOKER FIL.ex BENTHAM、Homalium fallax VAN SLOOTEN、Homalium calciphilum
RIDLEY)はビルマ、タイ、インドシナ、マレー半島、スマトラ、ボルネオ、ジャワに生ずる。ビルマで
te bo、タイで
taeng sang、cha khian phuek.phikun pa、ob、ベトナムで
ky yen、インドネシアで
kayu batu、kayu batu kuning、kayu batu
areng、kayu manau、manu、bias、kerbok、langit、bajud、pau rusah、petjah pinggan、tutur batuなどという。
高さ10~40mの高木で、嶮しい板根をもつ。樹皮は灰褐色ないし淡褐色を呈し、平滑で皮目を散生する。葉は長楕円形、卵状楕円形などで長さ7~37cm、幅3~15cm、短い鋭尖頭で鈍端、基部は広い楔形ないし円形を示す。薄い革質で、全縁または
これに近い。側脉は7~11対あり、脉理は両面で明瞭な網状をなす。両面無毛で光沢がある。葉柄の長さは4~15mmで太い。
総状花序は単純ときに複成して短い分枝ある円錐花序をなす。長さ5~15cmまれに22cmまでで、花は花序軸に沿ってほとんど単出で散着し、花序軸は有毛である。小花柄の長さは約25mm、苞葉は皮針状長楕円形で長さ4~5mm、無毛、脱落性である。花は6
~8、ときに5または9数性である。がく筒部は倒円錐形で長さ3mm、細綿毛がある。がく裂片は長楕円形で、花時は長さ5~6mm、反捲し、脉がありやや無毛、果時には長さ10~16mmに増大して星状に開出する。花弁は三角状長楕円形で長さ3~4mm、子房の上
におおいかぶさり、やや無毛で、果時には長さ8mmまでに増大する。雄ずいは各花弁に対生して4~12個ずつあるが、そのうち1~3個ずつが花盤腺体の裂片の間に挿入され、残りが各花弁の基部につく。花糸に軟毛がある。裂片化した花盤腺体に細綿毛を布
く。子房は5~8個の隆条があり、細綿毛を被むり、花柱は5~8個でやや短い。さく(蒴)果は紡錘形を呈し、5~8弁からなる。
材の気乾比重に0.95~0.99の記載があり、建築その他にかなり利用される。
変種
Homalium grandiflorum BENTHAM var.javanicum SLEUMER(異名
Homalium javanicum KOORDERS et VALETON)はジャワに生じ、同地で
uru watu、Langit、langit
laweという。母種にくらべて花序は多毛で、長さ18~26cmとより長く、疎らに花をつける点が異なる。
26.Homalium caryophyllaceum BENTHAM
Homalium caryophyllaceum BENTHAM(異名
Homalium frutescens WARBURG、Homalium sumatranum MIQUERL、Homalium obovale MIQUEL、Homalium hosei
MERRILL)はインドシナ、タイ南部、マレー半島、スマトラ、ボルネオバンカ、ジャワ西部、セレベス中部、南部と分布する。カンボジアで
tralak'tuk'、タイで
neng、phlom kod、マレーで
petaling ayer、anjing ayer、data
ruan、サバで
takaliu、インドネシアで
tangan mungit、tenau、warra、mentulang kerak、barasなどという。
高さ4~15mの低木ないし高木で、樹幹は円柱状である。樹皮はほぼ平滑、若枝は無毛でやや稜がある。葉は楕円形、長楕円形などで長さ7~19cm、幅2~10cm、短鋭尖頭で鈍端、基部は広い楔形から円形を示す。革質で、全縁または僅かに疎らな鈍鋸
歯があり、側脉は7~8対あって、下面で顕著、網脉はとくに下面で明瞭である。下面は無毛または細軟毛を散生する。葉柄の長さは2~5mmである。
総状花序は穂状様で、単一またはまれに基部付近で二、三分岐し、長さ7~10cmまれに15cmまであり、花序軸に細軟毛を散生する。花は軸に沿って単出または2まれに3~5個ずつが束出し、小花柄の長さは1mm、苞葉は卵形で長さ1mm、やや残存性であ
る。花は5~6数性で、白色を呈する。がく筒部は長く4~6mm、やや軟毛であるかまたは無毛、乾くと紅褐色となり明らかな溝がある。がく裂片は革質で長楕円状卵形、長さ約2.5mm、やや鋭頭で直立し細綿毛を布く。花弁はがく裂片と同様であるが僅かに
長く、両面に灰色の伏生する細綿毛を密布する。雄ずいは各花弁の前に3~4個ずつが束出してつき、長さは花弁より少し長い。花糸は無毛である。花盤腺体は黄色を呈する。子房は長い円錐形で細綿毛を被むる。花柱は4~5ときに7個まであり、円柱状
で直立して挺出する。
材は淡褐色を呈し、気乾比重0.93の記載がある。一般構造物、建築その他に用いられる。樹はジャワで生垣に植えられる。
27..Homalium dictyoneurum WARBURG
Homalium dictyoneurum WARBURG(異名
Pierrea dictyoneura HANCE)はタイ、インドシナ、マレー半島に生ずる。
高さ36mまで、直径75cmまでとなる中ないしかなりの大高木で、小さい嶮しい板根をもつ。樹皮は灰褐色から黄褐色で、平滑またはときに隆起した皮目が出る。小枝は無毛である。葉は卵状長楕円形で長さ10~18cm、幅4~9cm、鈍端の鋭尖頭である。
厚い革質で、全縁または浅い波状を呈し、両面無毛で光沢がある。
穂状様の単純な総状花序は長さ15~20cmで、花は花序軸に沿って間隔をおいて単出または束出する。小花柄の長さは2~3mm、苞葉は卵形で5~6mm、残存性である。花は9~10数性で、がく裂片と花弁に絨毛がある。がくは果時には長さ15mmまでの翅状に
増大してきわめて顕著である。雄ずいは各花弁の前に6個ずつが多少グループになってつき、さらに2~3個ずつがやや球形の花盤腺体の裂片の間に挿入されている。
マレー半島では、普通に見られる木材用の大きさになる樹種の一つである。
28.Homalium longifolium BENTHAM
Homalium longifolium BENTHAM(異名
Blackwellia macrostachya TURCZANINOW)はタイ半島部とマレー半島に生ずる。タイで
chen kiang、マレーで
petaling gajah、selumbar、masikang、sangkah、kemapなどという。
高さ40mまで、直径1.2mまでになる小高木から大高木である。樹皮は灰色ないし褐色を呈し、小鱗片化する。葉は皮針形、長楕円形などで長さ7~17cm、幅3~5cm、短鋭尖頭、基部は楔形を示す。薄い革質で、全縁ないし浅い鈍鋸歯があり、側脉は
7~10対、脉理は上面で不明瞭、下面で不明瞭か網状に顕著に出る。無毛で上面にやや光沢がある。葉柄の長さは5~10mmである。
長さ10~22cmの穂状様の総状花序を単出するが、まれに基部近くで分岐し、花序軸に白色または淡黄色の細綿毛を布く。花は軸に沿ってやや間隔をおいて3~5個ずつが束出し、小花柄の長さは1~1.5mmである。花は5~6数性で、白色を呈する。がく筒部
は倒円錐形で短く、がく裂片は長楕円形で長さ1.2~2mm、花弁も同様であるが少し幅が狭い。がく裂片・花弁ともに縁に微細な細綿毛がある。雄ずいは各花弁の前に1個ずつがつく。花盤腺体は細綿毛を被むり白色または黄色を呈する。花柱は4~5個であ
る。
散孔材。丸太の外周部は黄白色ないし淡黄褐色で心材と考えられる中心部は濃色で暗褐色を呈し僅かに縞がある。材の気乾比重に0.71~0.99の記載があり、きわめて硬い。生材から全乾までの全収縮率は接線方向8.1%、放射方向4.1%の報告がある。
製材は困難で動力を多く要する。乾燥も割れなどが出やすく困難と考えられる。鉋削の仕上げでは平滑な面が得られる。心材の耐朽性は高いと考えられ、材はキクイムシの食害はないとされている。建築、器具その他に利用される。
29.Homalium undulatum KING
Homalium undulatum KING(異名
Homalium verruculosum
CRAIB)はタイ南部、マレー半島の石灰岩地に生ずる。高さ10~20mの高木で、若枝は無毛である。葉は楕円形などで長さ6~10.5cm、幅2.5~5cm、鈍端の短鋭尖頭、基部は楔形などのときに左右不同である。やや革質で、浅い鈍鋸歯があり、側脉は8~10対
、無毛で上面は光沢がある。葉柄の長さは3~7mmである。
穂状様の総状花序数個が複成した円錐花序を最上部の葉腋から出し、長さ7~10cm、花序軸に細綿毛を散生する。花は軸に沿って疎らに着生し、小花柄の長さは4~8mmで細い。苞葉は微小で卵形、鋭尖頭、きわめて早く脱落する。花は5~6数性で、黄
緑色を呈する。がく筒部はラッパ形で長さ約2mm、灰白色の細綿毛を布き、がく裂片は皮針形、長さ4mm、鈍頭で両面に灰色の細綿毛を被むる。花弁は倒卵形で、基部は爪状となり、長さ5mm、網状脉があり、細綿毛を布く。受粉後にいくらか増大する。雄
ずいは各花弁の前に4~5個ずつが束生してつき、花糸は長さ2mmで無毛である。子房に細綿毛を被むり、花柱は3個で上部に向かって無毛となる。