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平井信二樹木研究
バチカ属の樹木(その6)
34.Vatica borneensis BURCK
 Vatica borneensis BURCKSect.Sunapteaに属し、ボルネオ北部(サラワク、ブルネイ)産である。Vatica urbanii HEIMはその異名で、ブルネイでresak kamudiという。中高木からやや大高木になるものがあり、大きいものは高さ35m、直径65cmになる。樹幹は円柱状で通直、板根は小さい。葉は楕円形でやや小型、長さ6~10cm、幅2.5~5cm、側脉は7~9対、短い中間側脉が出て、ほとんど無毛、葉柄の 長さは1.5~2.5cmである。
 花序は長さ5cmまで、果実は球形で、これをとりまくがく裂片の2個は長さ5.5cmまでの翅になり、3個は長さ1.8cmまでで短い。これらは基部まで離生する。
 材の気乾比重は0.95~1.05で重硬、耐朽性がある。材はresakとして扱われる。  
35.Vatica coriacea ASHTON
 Vatica coriacea ASHTONSect.Sunapteaに属し、ボルネオ北部産で、ブルネイでresak daun tebal、resak hitamという。
 中高木で高さ20m、直径50cmまでになる。樹幹は円柱状で通直、板根は小さい。葉は倒卵形で長さ6.5-15cm、幅2~6cm、側脉は10~11対、短く細い中間側脉がある。厚い革質でほとんど無毛である。葉柄の長さは1~1.5cm。
 花序は長さ20cmまでで花を疎らにつける。果実は球形で径0.8cmまで、これをとりまくがく裂片のうち2個は長さ7cmまでの翅になり、3個は2cmまでで短い。これらは基部まで離生する。
 材は重硬で耐朽性があり、resakとして扱われる。  
36.Vatica micrantha V.SLOOTEN
 Vatica micrantha V.SLOOTENSect.Sunapteaに属し、ボルネオ産で、ブルネイでresak kijau、サバでresak buluという。
 中高木からやや大高木となり、高さ35m、直径50cmまでのものがある。樹幹は円柱状で通直、板根は小さい。樹皮は灰褐色で溝があり僅かに割れ目が出る。葉は長楕円形などで長さ4.5~16cm、幅1.5~6cm、側脉は8~15対あって、1部中間側脉が発達する 。薄質でしばしば脉間がふくらまっており、下面脉上に短毛がある。葉柄の長さは0.5~1cmである。
 花序の長さは7.5cmまでで、花弁は始め紫色を呈し、後に黄白色で底が淡紅色となる。果実は楕円形で長さ1.4cmまで、これをとりかこむがく裂片のうち2個は長さ6cmまでの翅になり、3個は長さ2.5cmまでである。これらは基部まで離生する。
 材は重硬で気乾比重0.83~1.01の記載がある。材はresakとして扱われる。  
.Vatica dulitensis SYMINGTON
 Vatica dulitensis SYMINGTONSect.Vaticaに属し、ボルネオ北部に生ずる。サバでresak bukitといい、サラワク、ブルネイでresak tiongの名が提案されている。
 中高木で高さ30m、直径50cmまでになり、樹幹はほぼ円柱状であるが、しばしば曲がりがある。板根はきわめて小さいか、または現れない。葉は狭倒卵形から楕円状皮針形で長さ4~12.5cm、幅0.8~4cm、側脉は10~14対あってしばしば短い中間側脉が2~ 3対ある。ほぼ無毛で、葉柄の長さは0.6~1cmである。
 花序の長さは2.5cmまでで、花弁は白色を呈する。果実は球形で径0.8cmまであり、付着するがく裂片5個はほぼ同形の長楕円形などで長さは約2.3cm、離生し回旋して反巻する。
 材はやや重硬で気乾比重に0.74~0.90の記載があり、材はresakとして扱われる。  
38.Vatica granulata V.SLOOTEN
 Vatica granulata V.SLOOTENSect.Vaticaに属し、ボルネオ産で、ブルネイでresak ranting bersisek、resak pengasohという。2つの亜種にわけられる。Vatica granulata V.SLOOTEN subsp.granulataは基本型で、Vatica granulata V.SLOOTEN subsp.sabaensis ASHTONは托葉およびがく裂片が大きい形である。
 ふつう中高木で高さ30cm、直径65cmまでのものがある。樹幹は円柱状で通直かまたは曲がりがある。板根は小さい。葉は狭い倒卵形で長さ10~20cm、幅2.5~7cm、側脉は12~14対で、ほとんど無毛、葉柄の長さは1.2~2cmである。
 果実は卵形で長さ4cmまで、表面に粒状の突起がある。がく裂片5個は同形で長さ4cmまで、これらは全く離生し反巻する。
 材の気乾比重は0.80~0.92で、材は多分resakとして扱われるものと思われる。  
39.Vatica oblongifolia HOOKER FIL.
 Vatica oblongifolia HOOKER FIL.Sect.Vaticaに属し、ボルネオ産で、ブルネイでresak membangan、resak daun panjangという。
 中高木からやや大高木になり、高さ35m、直径50cmまでになる。樹幹は円柱状で通直、板根は小さい。葉は長楕円形、倒卵形などで変化が多く、長さ6.5~31cm、幅2.5~10.5cm、側脉は10~27対、中間側脉はやや多く出て、ほとんど無毛、葉柄の長さ は1.5~5cmあって先端で膝曲する。
 花序は長さ8cmまでで側偏する。花は黄白色で基部が紫色を呈する。果実は球形で長さ2cmまで、これにつくがく裂片5個は同形で果実より短くて長さ約1.5cmまで、木質で通常反巻する。
 材の気乾比重は0.70~1.07である。材はresakとして扱われ、家屋建築その他に用いられる。  
40.Vatica sarawakensis HEIM
 Vatica sarawakensis HEIMSect.Vaticaに属し、ボルネオ産である。Vatica ramiflora V.SLOOTENはその異名で、マレー名をresak sarawak、サラワク・サバでresak daun besarという。
 小高木から中高木で、高さ25m、直径32cmまでになるが、通常はずっと小さい。樹幹は通直で、板根は小さい。葉は長楕円形、倒卵形などで大きく、長さ20~40cm、幅7~15cm、側脉は15~28対あって、短い中間側脉が現れる。下面脉上に短毛を疎生 し、葉柄の長さは1~2cmである。
 花序の長さは12cmまでで多く分枝し、花弁は黄白色を呈する。果実は球形に近いものから卵形で長さ2.5cmほど、果皮面に粒状の突起がある。がく裂片5個はほぼ同形で、果実の長さと同長程度、全く離生し、反巻するようになる。
 材の気乾比重に0.71~0.91の記載がある。材はresakとされるが、樹が小さいので多く利用されない。  
41.Vatica vinosa ASHTON
 Vatica vinosa ASHTONSect.Vaticaに属し、ボルネオ北部産で、ブルネイでresak tangkai unguという。
 小高木から中高木で高さ30m、直径40cmまでとなる。樹幹は円柱状で通直、板根は小さい。葉は楕円形、皮針形で長さ6~15cm、幅1.5~4.5cm、側脉は12~20対ある。薄質で下面脉上に短毛を生じ、葉柄の長さは0.6~1.3cmである。
 花序の長さは7cmまで、花は黄白色を呈する。果実は球形で径は0.8cmまで、密に紅褐色の短毛を被むる。がく裂片5個は同形で長さ0.9cmまで、全く離生し、回旋して反巻する。
 材の気乾比重に0.92の記載があり、材はresakとして扱われる。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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