カキバチシャノキ属の樹木
41.Cordia alliodora OKENの概要
Cordia alliodora OKEN(異名
Cordia cujabensis MANSO et LKOTZKY ex CHAMISSO、Cordia velutina MARTIUS、Cordia cerdana ROEMER et SCHULTES、Cordia gerascanthus JACQUIN、non LINNAEUS、Cerdana alliodora RUIZ et PAVON、Lithocardium
alliodorum O.KUNTZE)はメキシコ、中米、西インド諸島、南米北部からブラジル、ボリビアまでに生ずる。また早生樹として太平洋諸島、サバなどで造林されている。英名を
American light cordia、cordia、salmwood、Ecuador laurel、Spanish
elm、prince wood、仏名を
bois soumi、chene caparo、bois de rose、プエルトルコで
capa、キューバで
varia、baria amarilla、トリニダードで
cypre、メキシコで
bojon、hormiguero、中米、エクアドルで
laurel、laurel
blanco、コロンビアで
canalete、canalete du humo、ベネズエラで
pardillo、ペルーで
ajo、ブラジルで
arbore do alho、louro amarello、louro、alho urua、freijorgeなど多くの名称がある。
高さ15~25m、大きいものは高さ45mまで、直径70cmまでになる落葉の中~大高木で、樹幹は通直である。板根はあるかまたはない。樹皮は灰緑色から褐色、黒緑色を呈し、初め平滑であるが年とともに狭い割れ目が入る。小枝は初め星状細軟毛があ
り、先端に蟻のかくれ場所になる倒卵形のdomatiaを作るものがとくに中米、南米西北部産のもので多い。葉は卵状楕円形、長楕円形などで長さ6~15ときに20.5cmまで、幅2.5~4.5ときに8.5cmまで、無毛ないし下面に星状細軟毛を密布する。葉柄の長さは
0.5~3.5cmである。内樹皮と葉はつぶすとニンニクのような匂いを出す。
幅10~25ときに30cmまでの大きい円錐花序を頂生、蟻のdomatiaをもつものはその中から立ち上がり、通常分枝に星状細軟毛を密布する。長さ・幅ともに10~15mmほどの白色で芳香がある花をつけ、小花柄の長さは1.5mmまでである。がくは筒状で長さ4
~6mm、灰緑色を呈し、10ときに12本までの隆条があり4~6通常5個の低いがく裂片をつけ星状細軟毛を密布する。花冠は筒状で通常5ときに4、6裂、長さ14mmまで、筒部は長さ8.5mmまで、裂片は開出し長楕円形で長さ8.5mmまで、円頭である。雄ずいは花冠
裂片と同数で直立し、下部は花冠と合着する。雌ずい1個は2又の花柱をもち、その分枝の先瑞は2裂して棍棒状の柱頭となる。果実は楕円形の堅果様の石果で、長さ0.45~0.8cm、幅0.1~0.25cm、宿存する花冠とがくに包まれ、花冠は果実から落下すると
きのパラシュートとなる。種子1個を含む。
42.Cordia alliodora CHAMISSOの材の組織、性質と材その他の利用
散孔材。心材は黄褐色、緑褐色、褐色などを呈し、ときに暗色の縞がある。木理はふつう通直で、肌目はやや粗である。生長輪はほぼ認められる。
道管は単独のものが多く、またおもに放射方向に2~3個接続するものがあり、分布数は6~10/mm2である。生長輪の早材部分で道管孔が接線方向に並列してやや環孔材的な配列をする傾向がある。単独道管の断面形は円形ないし楕円形で、道管の径は0.0
4~0.20mmを示す。せん孔板は水平ないしやや傾斜し、単せん孔をもつ。チロースはほとんどない。
材の基礎組織を形成する真正木繊維または繊維状仮道管の径は0.01~0.02mm、壁厚は0.002~0.004mmである。
軸方向柔組織では、周囲柔組織は0~2細胞層で、僅かに翼状柔組織になるものがある。帯状柔組織はとくに早材部でよく発達して道管を包含し、放射方向に16細胞層までのものがある。晩材に向い分断して島状になり、放射方向に1~4細胞層で、単独散
在の柔細胞に移行し、また周囲柔組織とも接続あるいは移行する。柔細胞の径は0.01~0.03m、壁厚は0.001~0.002mmほどである。
放射組織は2~5細胞幅、15~50細胞高または以上である。構成は異性で、鞘細胞は外廓を常に完全に包まないがかなりよく
発達し、とくに軸方向の長さの大きいものが多い。軸方向両瑞の単列部1~2層と鞘細胞は直立細胞、方形細胞または丈が高く放射方向の長さが短い大型の平伏細胞の層、他は通常の小型の平状細胞の層からなる。細胞内に菱形の結晶、砂晶が見られる。
材の気乾比重に0.45~0.57の記載があり、収縮率は一般に小さい。製材と各種切削加工は容易で、仕上げ面は良好である。乾燥は速い。釘打ちは容易であるが割れる傾向がある。接着、塗装、研磨はほぼ良好である。心材はやや耐朽性があり、白蟻
に対する抵抗性もややあるとされる。
材の用途は軽構造材、建築内装・造作材、家具、器具、ボート、とくにデッキング、車体、楽器、彫刻、旋削物その他であるが、材面が装飾的なものは高級家具に用いられる。また化粧ベニヤ、合板に作られることがある。
葉と枝の材は浴剤としてリューマチに用い、種子も民間薬とされる。果実は食べられるが、あまりうまくない。花は蜜源となる。樹は庭園樹、コーヒー園の庇陰樹に植栽される。
43.Cordia boissieri A.DE CANDOLLE
Cordia boissieri A.DE CANDOLLEは北米南部産の落葉小高木である。高さ6~7.5m、直径15~20cmとなる。辺材の幅は広く淡褐色、心材は暗褐色を呈する。材は軽軟で、肌目は緻密である。
44.Cordia collococca LINNAEUS
Cordia collococca LINNAEUSはジャマイカ産で、英名を
clammy cherryという。常緑小高木で、枝は下垂する。葉は
キバナイヌジシヤCordia subcordata
LINNAEUSに似る。花は散房状になる集散花序につき、白色から紫色を呈する。石果は淡紅色で
サクランボに似る。
45.クサイヌジシャ
クサイヌジシャCordia cylindrostachya ROEMER et SCHULTESは熱帯アメリカ原産で、マレーその他の熱帯各地に導入または野生化している。英名を
string bushという。
高さ3mまでの常緑低木で、小枝は有毛である。葉は狭楕円形で長さ5~10cm、幅1.3~3cm、鋭頭で、基部は楔形を示す。上面はざらつき、下面に白色の細毛がある。葉柄の長さは0.6~2cmである。
長さ12.5~25cmの穂状花序は頂生または葉に対生する小枝に生じて下垂し、先端から順次下方に向って開花し、上方に果実、下方に花をつけるようになる。花は小さく径は6mmほど、無梗で、花冠筒部はきわめて短く、5裂片があり、白色を呈する。石果
は液果様で、径約0.5cm、紅色を呈する。瘠悪な土地でよく密生するので、生垣として有用である。
46.Cordia dodecandra DE CANDOLLE
Cordia dodecandra DE CANDOLLEはフロリダ、西インド諸島、メキシコ、中米、南米北部に生じ、英名を
canalette、キューバで
baria、メキシコで
copte、コロンビア、ベネズエラで
canaleteという。
高さがときに30mまでに達する高木である。葉はきわめてざらつき、橙紅色の花をつける。
散孔材。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は灰黄色、心材は紅褐色、濃褐色を呈し、不規則な黒色の縞が出る。木理は通直ないし交走し、肌目はやや精である。材面はかなり油質の感触がある。
道管は単独およびおもに放射方向に、また各方向と団塊状に2~3個が接続し、分布数は7~8/mm2である。単独道管の断面形は円形などで、径は0.10~0.19mmを示す。せん孔板は水平に近く、単せん孔をもつ。チロースはあまり見られない。
材の基礎組織を形成する真正木繊維または繊維状仮道管の径は0.01~0.02mm、壁厚は0.004~0.006mmである。
軸方向柔組織では、周囲柔組織は1~2細胞層あり、ほとんどが連合翼状柔組織から道管を包含する帯状柔組織に移行する。帯状柔組織は放射方向に3~6細胞層で、その出現間隔は繊維の5~25細胞層である。柔細胞の径は0.01~0.04mm、壁厚は0.001~0.0
02mmで、内容物は少ない。
放射組織は3~7細胞幅、50細胞高まで、または以上である。その構成は異性で、完全に放射組織の外廓を包囲しない鞘細胞がある。軸方向両端の単列部1~5層と鞘細胞は直立細胞、方形細胞または丈が高く放射方向の長さが短い大型の平伏細胞の層
で、他は通常の小型の平伏細胞の層からなっている。細胞内に内容物は多く、菱形の結晶が存在する。
材の気乾比重に0.70~1.00の記載がある。材は重硬であるが、切削加工などはその割には困難でなく、仕上げ面は良好である。また心材は耐朽性
がある。
メキンコ南部、中米でかなり重要な材であるが供給は少ない。家具、キャビネット、彫刻・旋削による工芸品などに用いられる。果実は酸っぱいが食べられる。
17.Cordia elaeagnoides DE CANDOLLE
Cordia elaeagnoides DE CANDOLLEはメキシコ産の小~中高木である。心材は暗褐色などを呈し硬い。
48.Cordia gerascanthus LINNAEUS
Cordia gerascanthus LINNAEUS(異名
Cordia gerascanthoides HUMBOLDT、BOMPLAND et KUNTH)と同一学名の
Cordia gerascanthus JACQUIN、non LINNAEUSがあるが、これは
Cordia alliodora
CHAMISSOの異名となるものである。フロリダ南部、メキシコのユカタン半島、中米、西インド諸島、南米北部の沿海地域に分布する。英名を
prince wood、Spanish elm、Dominican rosewood、仏名を
bois de rose、faux bois de rose、bois de
cypre、メキシコで
bojon、baria、bocote、barl、キューバで
baria、varia prieta、中米で
laurel、ベネズエラで
canalete、pardillo negroなどとよばれる。
高さ9~23m、直径45~60cmとなる高木である。
散孔材であるがやや環孔材的な傾向を示す。辺・心材の区別は明瞭で、辺材は灰白色、心材は褐色、紅褐色、濃褐色などを呈し、一般にさらに濃色の縞が出る。生長輪が認められる。木理は通直ないし交走し、肌目はやや粗ないしやや精で、いくらか油
質の感触がある。バラのような甘い匂いをもつ。
道管は単独および放射方向に数個が接続し、分布数は10~15/mm2である。軸方向柔組織では、周囲柔組織、連合翼状柔組織、道管を含む帯状柔組織があって、しばしば幅の狭いターミナル柔組織でも現れる。
材の気乾比重に0.61~1.00の記載があり、ほぼ重硬で強靭、心材は耐朽性がある。製材、切削加工などは比較的容易である。
供給量は少ないが、かつてジャマイカやベネズエラなどでは優良材の一つとされ、装飾材に賞用された。すなわち建築内装材、家具、キャビネット、工芸品などで、そのほか車両、船舶、器具、桶樽などの用途がある。
49.Cordia greggii TORREY
Cordia greggii TORREYはメキシコ原産の常緑低本である。高さ2.5mとなり、葉は互生し、倒卵形で長さ2.5cmほど、鈍頭を呈する。花は大きく径が24mmあり白色を呈する。
Cordia greggii TORREY var.palmeri WATSONは葉がやや大きく卵状楕円形である。花冠は漏斗状で、観賞用に植栽される。
50.アメリカチシャノキ
アメリカチシャノキCordia sebestena LINNAEUS(異名
Cordia speciosa WILLDENOW)はメキシコのユカタン地方、西インド諸島、南米北部の沿海地域に分布する。英名を
geiger
tree、メキシコで
copte、キューバで
baria、コロンビア、ベネズエラで
canaleteという。
高さ5~10m、直径12~15cmになる常緑高木または低木である。葉は卵形、広卵形またはやや心形で長さ5~12cm、全縁、上面はざらつき、下面に軟毛がある。葉柄は短い。
散形様の集散花序は短く、鮮紅色または橙色の花をつける。花冠は5~6個の裂片があり平開する。石果は球形で白色を呈し、宿存がくの上にのる。
辺材は幅が広く、淡黄色ないし淡褐色、心材は紅褐色、濃褐色を呈し、一般にさらに濃色の縞がある。木理は通直ないし交走し、肌目はやや精で、材面は油質の感触がある。
材の気乾比重に0.80~0.97の記載があり重硬である。加工はあまり困難でなく、仕上げ面は良好で、心材は耐朽性がある。樹が小さいので一般の市場材にはならないが、キャビネット、旋削による工芸品など小さい製品に地方的によく用いられる。
果実は食べられる。樹は観賞用に熱帯各地で植栽される。
51.Cordia sonorae ROSE
Cordia sonorae ROSEはメキシコ産の小~中高木である。心材は暗色を呈し、重硬である。
52.Cordia tectonifolia WALLICH
Cordia tectonifolia WALLICHは西インド諸島産の小高木で、紅色の花をつける。
53.Cordia ecalyculata VELLOSO
Cordia ecalyculata VELLOSO(異名
Cordia digynia VELLOSO、Cordia leptocaula FRESENIUS、Cordia coffeoides WARM)はブラジル、パラグァイ、アルゼンチン東北部産で、ブラジルで
cha do diabo、cafe do mato、louro salgueiroなどという。
高さ20mに達し直径30~40cmになる常緑高木である。葉は楕円形で長さ8~9cmになる。頂生して散房状になる円錐花序を出し、白色の小花をつける。花冠の長さは6mmである。石果は球形で径は1.2cm、紅色に熟する。
葉は煎じて駆風の薬とし、また浄血、強壮、リューマチに用いる。果実の粘液を糊に用いることがある。
54.Cordia insignis CHAMISSO
Cordia insignis CHAMISSOはブラジル固有で、ブラジル名を
caraiba、grao de galoという。
高さ20mになる常緑高木である。葉は卵状楕円形で長さ20cm、幅10cmほど、上面に粗毛があり、下面脉上は長軟毛を生ずる。
散房状の集散花序は頂生し、白色の花を多くつける。がくの長さは20mmほど、花冠の長さは40mmほどで大きい。石果は球形である。
果実は食べられる。葉は軟化剤に用いられる。花が美しいので観賞用とされる。