フカノキ属の樹木(その3)
9.オオフカノキ
学名は
フカノキ属に包含した場合、
Schefflera actinophylla HARMSであるが、別属の
Brassaia actinophylla
ENDLICHERとして扱われていることが多い。オーストラリア北部およびニューギニアの原産であるが世界中の熱帯各地で庭園樹や街路樹に植栽されまた観葉植物として用いられている。英名に
umblrella tree、Queensland umbrella tree、octopus
tree、rubber tree、Australian ivy palmがあり、また単に
brassaiaといっていることも多い。
常緑の低木または高木でときに株立ち状になり大きいものは高さ10~15mになる。疎らに分岐し枝は太く脆い。幼木はしばしば地樹の上に気生しており気根を垂らすが、イチジク属Ficusのように強力になって親木をしめ殺すようなことはない。葉は茎頂
で大きなロゼット型に集まってつく掌状複葉である。小葉は5~18個、おもに12~14個で長楕円形、長楕円状倒皮針形など、長さ10~30cm、尾状鋭尖頭・短凸頭または円頭、基部は円形から浅心形を示す。全縁ときに低い鋸歯があり下面は淡緑色。小葉柄
の長さ2.5~7.5cm、総葉柄の長さ17.5~40cmでその末端は小円板状に広がる。花は無柄で8~12個が頭状小花序に集まり、その小花序の長さ5~15mmの小花序柄で長さ40~80cmのほとんどまっすぐな棒状の花軸分枝に無数に総状につく。花軸分枝は全体が円
錐花序の中で割合下の方から5~10本が出て上向きに開出する。花軸とその分枝が太く紫黒色で花は紅色であるため、見たところタコの足のようである。1つの花の花弁は11個、雄ずい11個、果実は石果で暗紫色~黒色に熟し、ほぼ球形の複合果に合一する
。園芸品に
cv.Compacta(矮生)、
cv.Variegata(葉の斑入り)がある。
10.Scheffiera digitata FORST
ニュージーランド産で現地名を
pateという。高さ8mまでになる低木~小高木で枝は太く開張し樹皮はほぼ平滑である。3~9個の小葉からなる掌状複葉で小葉は倒卵状皮針形など、長さ8~15cm、鋭頭、鋭~鈍脚、縁に細かい鋭鋸歯がある。若木では不規
則な羽状の切れ込みが出たりときに分裂を示すものがある。花序は大型で径35cmまでになり多数の花をつけて垂れ下がる。小さい緑色の10個までの花が散形小花序をなしそれが全体が5数性。果実は液果様でおおよそ球形、開花後2~3か月で熟して紫黒色に
なる。材は軽軟で現地民のマオリはその材片に
Kaikomako、Pennentia corymbosa FORST(
クロタキカズラ科
Icacinaceae)の棒をこすって火をおこす。樹皮はるいれき、たむしの治療薬に用いる。
11.アフリカおよび新大陸のフカノキ属の樹木
(1)
Schefflera abyssinica
HARMS:ナイジェリア、エチオピア、ケニア、ザンビアに産し高さ18mまでの高木である。樹冠は開張し樹皮はコルク質で外面灰黒色を呈する。5~7個の小葉からなる掌状複葉で小葉は卵形など、長さ12.5~20cm、尾状鋭尖頭、円または心脚、鈍鋸歯をもつ。
淡黄色の花は散形小花序を作りそれが長さ10~30cmの花軸に総状につき、このような花序が枝端と叢生状に集まる葉群の下に集まってつく。雑性花で雌花に花柱が5~6本、雄花に花柱に相当するものが3個ある。果実は紅色に熟する。
(2)
Schefflera manni HARMS:ナイジェリア、カメルーン産で高さ15mまでになる高木。8~10個の小葉からなる掌状複葉で小葉は全縁、円または楔脚。花序に主軸がなく花軸が叢生する。
(3)
Schefflera volkensii
HARMS:ケニアの高地産。初め気生であるが後独立して高さ24mまでになる高木。約6個の小葉からなる掌状複葉で小葉は楕円形、へら形など、長さ約11.5cmまで、円頭、しばしば鋭尖頭、全縁である。花は黄緑色で頭状小花序をなしそれが総状花序に複生す
る。
(4)
Schefflera umbellifera BAILLON:異名に
Cussonia umbellifera SANDER、Cussonia Chartacea SCHINZがあり、南アフリカ、ローデシア、モザンビーク産。英名を
bastard cabbage tree、forest false cabbage
tree、南アフリカ名
basterkiepersolという。高さ10mまでになる高木で樹皮は灰色、平滑である。3~5個の小葉からなる掌状複葉で小葉は楕円形~長楕円形、長さ7.5~15cm、鈍頭、狭脚、全縁ときに鋸歯がありしばしば著しく波うつ。花は淡黄緑色など
で疎な頭状、散状または総状の小花序に集まりそれが花軸につく。花弁は5個または2環になって10個、雄ずいは花弁と同数、子房は5~8室である。果実はほとんど球形で暗紅色に熟する。材は白色でかなり軽軟であり果物箱やマッチ軸木に用いられる。
(5)
Schefflera paraenisis DUCKE:アマゾン下部流域の産でブラジル名:
parapara、スリナム名:
atape、karohoro、moretoto-oe、tobi-totoeなどがある。高さ約20mになる高木。材の気乾比重が0.50程度で同じウコギ科の
Didymopanax morototoni
DECAISNE et PLANCHONなどとともに市場材
morototoの中に含めて扱われる。
(6)
Schefflera belangeri HARMS:西インド諸島のマルチニーク島産。きわめて短い小花柄の花からなる散形小花序が総状に複生する
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