ペカン属の樹木(その3)
12.カロライナ・シャグバーク・ヒッコリー
カロライナ・シャグバーク・ヒッコリーCarya carolina-septentrionalis ENGLER et GRAEBNER(異名
Hicoria carolina-septentrionalis ASHE)は
ヒッコリー節
Sect.Eucarya、すなわちヒッコリー類
true
hickoryに属する。アメリカ東部・東南部産で、しばしば石灰岩地にも生ずる。英名は
Carolina shagbark hickory、southern shellbarkという。
シャグバーク・ヒッコリーCarya ovata
K.KOCHによく似ている種類で、高さ6~9m、よい処で24mまで、直径60~90cmになる落葉小~中高木である。樹皮は淡灰色を呈し、小枝はきわめて細く、芽は小さくて黒い。葉は互生する奇数羽状複葉で、小葉は5または7、ときに3個で、皮針形などを呈
し、成時はほとんど無毛である。
果実と核(ナット)は小さく
、シャグバーク・ヒッコリーの2/3くらいに過ぎない。果実の長さは2.5~3.5cmで通常翼はなく、偽果皮(殻)は基部まで裂開する。核は著しく角ばっている。壁は薄く、仁は食べられる。
心材は淡紅褐色を呈し、材は重硬、強靭である。
13.レッド・ヒッコリー
レッド・ヒッコリーCarya ovalis SARGENT(異名
Carya microcarpa NUTTALL、pro parte、Hicoria ovalis SUDWORTH、Hicoria microcarpa BRITTON)は
ヒッコリー節
Sect.Eucarya、すなわちヒッコリー類
true
hickoryに属する。カナダの五大湖付近とアメリカ東部・中部に分布する。英名を
red hickory、sweet pignut、sweet pignut hickory、oval hickory、false shagbark、独名を
rote Hickoryという。
高さ30m、直径1mまでになる落葉高木である。樹皮は灰色から暗灰色で、年を経て粗くなり、大きい樹ではかなり長いプレート状の裂片になって剥がれる。小枝に初め細軟毛があるが間もなく無毛となる。
葉は互生する奇数羽状複葉で、小葉は5または7個、倒皮針形、楕円状卵形などで長さ8~15cm、鋭尖頭、基部は楔形~円形、初め細軟毛があるが間もなく無毛となる。
果実の形に変化が多く、ほぼ球形から楕円形で長さ2~4.5cm、僅かに翼があり、密に鱗片を布く。遅くなってほとんど基部まで裂開する。核(ナット)は僅かに扁平で、中部以上に4稜があり、通常先端は円い。壁はふつうやや薄く、仁は甘い。
材は環孔材。心材は淡褐色を呈する。材は重硬、強靭である。道具の柄などの器具材、農機具、車両などと燃材に用いられる。果実は食用となる。
14.ペール・ヒッコリー
ペール・ヒッコリーCarya pallida ENGLER et GRAEBNER(異名
Hicoria pallida ASHE)は
ヒッコリー節
Sect.Eucarya、すなわちヒッコリー類
true hickoryに属する。アメリカ東南部に分布し、英名は
pale hickory、pale-leaf hickory、sand
hickory、pognut hickoryなどという。
ふつう高さ9~12m、直径30~60cmの落葉小~中高木であるが、ときに高さ34m、直径90cmに達するものがある。樹皮は暗灰色などで割れ目が入り粗い。小枝は紫褐色を呈し、芽は黄色の鱗片で被われる。
葉は互生する奇数羽状複葉で、小葉は通常7、ときに9個で皮針形、長さ8~12cm、鋭尖頭、基部は楔形~円形である。下面は淡色で、初め細軟毛があるが、後に無毛に近くなる。
果実は楕円形~倒卵形またはほぼ球形で長さ2~4cm、樹脂質で、偽果皮は遅くなって基部まで裂開する。核(ナット)は白色、扁平で著しく角ばり、仁は食べられる。心材は褐色を呈し器具材その他、燃材に用いられる。
15.オザーク・ヒッコリー
オザーク・ヒッコリーCarya texana BUCKLEY(異名
Carya buckleyi DURAND、Carya arkansana SARGENT、Carya villosa C.K.SCHNEIDER、Hicoria texana LE CONTE)はヒッコリー節
Sect.Eucarya、すなわち
ヒッコリー類
true
hickoryに属する。アメリカ中南部に生ずる。英名は
Ozark hickory、black hickory、Texas hickory、Texan hickoryなど、独名は
schwarze Hickoryという。
高さ10~15m、直径90cmまでになる高木である。樹皮は暗色で、ほとんど黒色に近いものがあり、深い割れ目が出て粗くなる。若枝には初め銹色の細軟毛を布く。
葉は互生する奇数羽状複葉で、小葉は5~11個であるがふつう7個、倒皮針形または皮針形で長さ8~15cm、下面と葉軸・葉柄は初め密に銹色の軟細毛を布くが、後に葉下面は無毛に近くなり、または主脉と脉腋にのみ細軟毛を残す。
果実は倒卵形などで長さ2~4cm、偽果皮は密に樹脂質腺点があり、遅くなって基部まで裂開する。核(ナット)は広卵形~球形、多少扁平で淡褐色を呈し、ほとんど角ばることはない。仁は食べられる。材は環孔材で、心材は淡紅褐色を呈する。
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