ペカン属の樹木(その2)
8.シェルバーク・ヒッコリー
シェルバーク・ヒッコリー(キングナット)Carya laciniosa LOUDON(異名
Carya sulcata NUTTALL、Hicoria laciniosa BRITTON)は
ヒッコリー節
Sect.Eucarya、すなわち
ヒッコリー類
true hickoryに属する。英名は
shellbark hickory、big
shellbark、big shellbark hickory、bottom shellbark hickory、kingnutなど、独名は
grossfruchtige Hickoryである。カナダ五大湖付近とアメリカ東部、中部に分布する。
高さ20~30m、ときに40m、直径60~120cmとなる中~大高木である。樹皮は灰色、暗灰色を呈し、成木ではささくれた長いプレート状になって離れる。小枝は著しく太くて橙紅色を呈し、芽は大きい。葉は互生する奇数羽状複葉で、小葉はおもに7ま
たは9個、頂小葉は倒皮針形~倒卵形、側小葉は長楕円形~卵形、長さ10~20cm、鋭尖頭、基部は楔形~鈍形で、側小葉では左右不整となる。下面に細軟毛を残存し、葉軸・葉柄にも細軟毛を布くか、または無毛となる。
果実は楕円形~球形で大きく、長さ3.5~7cm、偽果皮は厚さ6~12mmで最終的に基部まで裂開する。核(ナット)は扁平で長さ3~6cm、基部はやや楔形となり、4個の角稜がある。きわめて壁が厚く、仁は甘い。
材は環孔材。辺材は狭く、心材は暗褐色を呈する。材の組織、性質と利用はジャグバーク・ヒッコリーCarya ovata
K.KOCHと同様であるが、供給量は多くない。材質数値の記載された例をあげると、気乾比重0.81、生材から全乾までの全収縮率は接線方向12.6%、放射方向7.6%、体積19.2%、縦圧縮強さ560kg/cm2、曲げ強さ1,267kg/cm2、曲げヤング係数13.2×10(4)・k
g/cm2、せん断強さ148kg/cm2。果実は食用となる。
9.ピグナット・ヒッコリー
ピグナット・ヒッコリー(ピグナット)Carya glabra SWEET(異名
Carya porcina NUTTALL、Hicoria glabra BRITTON、Juglans glabra MILLER)は
ヒッコリー節
Sect.Eucarya、すなわち
ヒッコリー節
true
hickoryに属する。カナダの五大湖地方とアメリカ東部に分布する。英名は
pignut hickory、pignut、brown hickoryなど、独名は
Schweinsnuss、glattblattrige Hickoryという。
高さ25~30m、ときに40m、直径90~150cmとなる中~大高木である。樹皮は淡灰色~暗灰色を呈し、細かい割れ目が入って粗となる。芽の外側鱗片は無毛で樹脂点を散生し脱落性。小枝は無毛またはほとんど無毛である。奇数羽状複葉を互生し、小葉は3
~7、多くは5個で長楕円形、広倒皮針形など、長さ8~15cm、鋭尖頭、基部は楔形~円形を示す。上面は無毛、下面は葉軸・葉柄と共に無毛となるか、または大きい側脉と脉腋にのみ細軟毛を残す。
果実は倒卵形~ほぼ球形で長さ2~3.5cm、ときに5cmまであり、偽果皮(殻)はやや薄く、僅かに4稜があるかまたは平滑である。中部まで裂開するか、または全く裂開しない。核(ナット)は扁平味が少なく、仁は通常刺激的な渋味があってほとんど食
べられない。
材は環孔材。心材は淡褐色~褐色である。材の組織、性質および利用は
シャグバーク・ヒッコリーCarya ovata K.KOCHと同様である。
材質数値の例をあげると、気乾比重0.82、生材から全乾までの収縮率は接線方向11.5%、放射方向7.2%、体積17.9%、縦圧縮強さ643kg/cm2、曲げ強さ1,407kg/cm2、曲げヤング係数15.8×10(4)kg/cm2、せん断強さ151kg/cm2である。
果実はふつう食用とならず、むしろ樹が庭園樹、街路樹として植栽されている。
変種に
coast pignut hickory、
Caruya glabra SWEET var.macrocarpa SARGENT(異名
Carya macrocarpa SARGENT)がある。果実は倒卵形で母種よりやや大きい。偽果皮は早くから裂開する。
平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る