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平井信二樹木研究
ぺカン属の樹木
4.ビターナット・ヒッコリー
 ビターナット・ヒッコリー(ビターナット)Carya cordiformis K.KOCH(異名Carya amara NUTTALL、Hicoria cordiformis BRITTON、Hicoria minima BRITTON、Juglans cordiformis WAN GENHEIM)はペカン節sect.Pecania、すなわちぺカン類pekan hickoryに属する。カナダの東南部から五大湖地方とアメリカ東部・中部に分布し、沼沢地、渓畔などに生ずる。英名はbitternut hickory、bitternut、swamp hickoryなど、独名はbittere Hickory、Bitternussである。
 高さ18~25m、ときに30mまで、直径60~90cmになる落葉高木である。樹皮は若令木では灰緑色で、比較的長く平滑を呈する。年を経ると淡紅褐色となり線状に浅い割れ目が入るが、ささくれて剥げることはない。冬芽は橙黄色を呈する。葉は互生する奇 数羽状複葉で、小葉は5~11個、おもに7または9個で、皮針形~狭皮針形、最下の側小葉は皮針状卵形で、長さ8~15cm、長鋭尖頭~鋭尖頭、基部は頂小葉のきわめて狭い楔形から下部側小葉の円形に至る。下面はとくに中肋に沿って細軟毛が多いが、 後にほとんど無毛となる。
 果実は倒卵形~ほぼ球形で、ときに僅かに扁平、長さ2.5~3.5cm、おもに中部以上で4個の翼があり、他は平滑である。先端は細く尖がる。中部まで裂開して広く開く。核(ナット)は広卵形~ほぼ球形で灰色、壁は薄い。仁は苦い。
 シャグバーク・ヒッコリーCarya ovata K.KOCHとの雑種にLaney hickory、Carya x lanei SARGENTがあり、仁が大きくて甘い。
 材は半環孔材を示す。心材は暗褐色を呈し、年輪は明瞭である。木理はほぼ通直、肌目は粗い。
 材の顕微鏡的構成要素の材構成割合を求めた測定例をあげると、道管7.7%、真正木繊維55%、軸方向柔組織10.9%、放射組織26.4%である。
 材質数値では気乾比重0.74~0.76、縦圧縮強さ633kg/cm2、曲げ強さ1,197kg/cm2、曲げヤング係数12.5×10(4)・kg/cm2の記載がある。
 器具、とくに農機具に用いられ、かつては牛のくびき(軛)、桶のたが(箍)が多かった。また燃材に多く用いる。仁から搾油して灯用に用いたことがある。 平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る
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