11.シンドラノキ
シンドラノキ Sindora wallichii GRAHAM ex BENTHAM はマレー、スマトラ、ボルネオ産で、
Sindora intermedia PRAIN ex KING はその異名である。マレーで
sepetir dauntebal,インドネシアで
tampar hantu,kampas hantu,makasindut という。
高さ45mまで、直径65cm以上になる高木で、幹は円柱状、通直、板根はほとんど現れない。皮は灰紫色を呈し平滑である。葉は偶数羽状複葉で、小葉は3~4対、楕円形、卵形などで長さ4~10.5cm、幅2.5~5cm、円頭またはややテーパーして凸頭状になる
。基部は円形~広い楔形、革質で両面無毛または下面に薄く絨毛を布く。網脉は下面で見られるが上面では見られない。円錐花序は長さ10~15cmあり、がく裂片の先端近くに細長い刺をもつ。豆果は円形、卵形、楕円形で長さ9.5cmまで、太く硬い刺をも
ちその基部はふくれる。種子1~2個を含む。
材は散孔材。心材は淡褐色~紅褐色でときに濃色の縞が出る。顕微鏡写.真によって材の組織の概要をあげる。道管は単独および放射方向に2~3個が接続し、分布数は2~7/m㎡、径は0.10~0.20㎜、せん孔板は水平または少し傾斜し単せん孔をもつ。
材の基礎組織の真正木繊維は径0.01~0.02㎜、壁厚0.003~0.005㎜である。
軸方向柔組織のうち、周囲柔組織は0~3細胞層で接線方向に翼状にのびる傾向を示すものは少ない。ターミナル柔組織は放射方向に5~10細胞層で垂直樹脂道を内包する。散在柔細胞は比較的多く、放射組織に隣接して放射方向にやや密に並び、5~30室
の多室結晶細胞であることが多い。他に基礎組織中に単独で散在する柔細胞はターミナル柔組織中に包まれて同心円状に接線方向にやや密接して並ぶ。分布数は0~5/m㎡、径は0.03~0.10㎜である。
放射組織は2~3細胞幅であるが、ほとんどが2細胞幅で15~45細胞高である。判然としない異性で、上下両端の1~2層の単列部および多列部の僅かの部分は直立細胞、方形細胞または大型の平伏細胞、他は小型の平伏細胞で構成されるが、これら細胞種
の形態は移行的である。材の気乾比重には0.51~0.79の記載がある。この属の中ではやや軽軟な方であるが、耐朽性はあるという。材は市場でふつう sepetir
として扱われ、建築、家具、器具、車輌、包装、土木用など一般材としていろいろな用途に使われる。樹幹から得られる油は灯油などに用いられる。
12.Sindora beccariana BACKER ex DE WIT
Sindora beccariana BACKER ex DE WIT はボルネオ産で、サバ、サラワクで
temparhantu,ブルネイで
sepetir berduri, インドネシアで
sindur,sapundur,merdjang,anggiという。
高さ35m、ときに40m、直径1mまでになる高木、樹幹は円柱状、樹皮は灰褐色を呈しほぼ平滑であるが、幹をとりまく環状の細い横の隆条がある。葉は偶数羽状複葉、小葉は3~4対、卵形~楕円形で長さ3.5~8cm、幅2~4cm、厚い革質で下面に短毛を生ず
る。花のがく裂片は有毛で刺はない。豆果は円形に近く長さ9cmまでで刺を多く生ずる。
心材は淡紅褐色~紅褐色で、暗色の縞が出るものがある。材の組織は同属の他種と同様であるが、真正木繊維に隔離があるという報告がある。
材の気乾比重は0.61~0.80で、加工は容易であるが、耐朽性はあまり高くないとされる。材は市場で sepetir として扱われる。一般用材で各方面に用いられるが、材面の美しいものは高級家具、建築装飾材に向けられる。
平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る