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平井信二樹木研究
6.イボモモノキの材の性質と材その他の利用
 材の気乾比重に0.30~0.90の広い範囲にわたる記載があるが、0.50~0.70程度のものが多いと思われる。生材から気乾までの収縮率についても、接線方向は2.4~4.0%、放射方向は0.7~2.1%の広い範囲の値が報告されている。強度の例では、縦圧 縮強さ469~505kg/c㎡、横圧縮強さ77kg/c㎡、曲げ強さ826~1,020kg/c㎡、曲げヤング係数11.2~12.9×10(4)kg/c㎡、せん断強さ107~117kg/c㎡、ヤンカ硬さは横断面413~559kg、縦断面372~513kgの報告がある。
 材の化学的組成の 例では、セルロース42~46%、ペントザン9~10.5%、リグニン25~34%、冷水抽出物2.4~4.5%、熱水抽出物4.7~7.5%、アルコール・ベンゾール抽出物2.2~3.4%、1% NaOH 抽出物14.0~18.1%、灰分0.8~2.2%を示す。
 材の天然乾燥は一般に良好であるが、板目材ではときに多少の表面割れ、捩れ、幅反りなどを生ずるので、堆積に重量物を載せることがすすめられる。人工乾燥も困難でない。製材、切削加工はふつう容易で あるが、ときに引張りあて(tenshion wood)をもつものではいくらかけば立ちを生ずる。なお切削加工の場合、眼、鼻、のどなどに刺戟がある例が報告されている。接着、塗装、研磨や、釘・木ねじの保持も良好である。材面は酸およびアルカリで強い汚染を生ずる。単板切削、合板製造も通 常容易である。パーティクルボード、ファインバーボードにはほぼ問題がなく、木質セメント板には不適とされている。心材の耐朽性はかなり変化があるが、一般に屋内使用ではある程度の耐朽性があり、接地・外気条件では耐朽性がない。また白蟻、海 虫に対する抵抗性もない。辺材はキクイムシの食害を受ける。防腐剤の注入は辺材・心材ともに良好でない。
 材に縞をもつ美しい材面のものがあり、ウォルナットに似た感じがあるので、良いものは装飾的な用途に用いられる。すなわちキャビネットな どの家具、パネル・フローリング・モールディングなどの建築内装材、わが国では床柱、スライスおよびロータリー切削によるベニヤと合板、施削・彫刻による工芸品その他の用途がある。そのほか家屋建築を含む軽構造材、外装板、ボードなどの木船、 箱と包装材、マッチ軸木、銃床などと燃材としても用いられる。わが国へはかつてフィリピンからダオとして輸入され、現在はパプア・ニューギニア地域からニューギニア・ウォルナットとして輸入されている。
 果実は食べられるが酸っぱく、料理で酸 味料に使われる。種子も食べられ、花や葉を野菜に用いているところもある。果実、樹皮、葉などを民間薬としている例もある。マレーシア、インドネシア地域では行道樹などに植栽される。  
7. Dracontomelon lenticulatum WILKINSON
 Dracontomelon lenticulatum WILKINSON はニューギニア産で、パプア・ニューギニアで hebere,urau という。
 高さ37m、直径1.2mまでになる中~大高木で、枝下は樹高の2/3までに達する。しばしば高さ3.6mまでの板根が出る。樹皮は褐色、灰緑色を呈し、不規則な割れ目が入る。奇数羽状複葉で、小葉は9~19個が対生ないし互生する。長さ22.5~32. 5cm、幅5~13cm、下面の脉腋にある有毛の小嚢体 domatia 以外は無毛である。総葉柄の長さは22~57cmである。
 円錐花序は長さ30cmまでで、花は長さ4.5~5㎜、花盤に細軟毛がある。果実は扁球形で、核は5室からなる。
 J.ILIC:『CSIRO Atlas of Hardwoods 』所載の材の顕微鏡写.真によって、材の組織の概要を記す。
 散孔材。道管は単独および放射方向に3個までが接続し、分布数は2~3/m㎡である。単独道管の断面形は広楕円形などで、道管の径は0.10~0.30㎜である。
 せん孔板は水平ないしやや傾斜し、単せん孔をもつ。道管・放射組織間の壁孔は大きく不規則な形の単壁孔対のようで、横長の楕円形などを示す。チロースの含有は比較的少ない。
 材の基礎組織は真正木繊維または繊維状仮道管で、7では隔離がきわ めて少ないように見られる。径は0.01~0.025㎜、壁厚は0.002~0.003㎜ほどである。
 軸方向柔組織では、周囲柔組織が1~2、ときに3細胞層あり、柔細胞の径は0.01~0.03㎜、壁厚は0.002~0.003mmほどである。放射組織は2~3細胞幅、6~15細胞高を示 す。その構成は異性で、軸方向端部の1~2層の単列部は丈の低い直立細胞、方形細胞またはこれと同高で放射方向の長さが短い大型の平伏細胞の層、他は通常の小型の平状細胞の層からなるが、中間にも混じって大型細胞の層が現れる。細胞内には菱形の 結晶があり、樹脂様物質の含有は比較的少ない。  
8.Dracontomelon vitiense ENGLER
 Dracontomelon vitiense ENGLERはソロモン諸島、フィジー産で、高さ20mまでになる高木である。葉が性病性の潰傷、耳病の薬に、樹皮からの樹液は炎症、マラリアの薬とされる。   平井先生の樹木木材紹介TOPに戻る

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