アイルランド館は、アイルランド政府公共事業局(Office of Public Works /OPW)が設計した木造パビリオン( 構造は鉄骨)で、古代ケルトの象徴「トリスケル(三重螺旋)」をモチーフとしています。三つの楕円形の建物が中央の連結空間でつながり、全体で抽象的な三脚座を立体的に表現。高さは約7.4m、延べ面積約745㎡とコンパクトながら、独特の曲線美が際立ちます。
外装には、アイルランド森林公社Coillteが提供したアイルランド産ダグラスファー(ベイマツ)を使用。木材を縦格子的に丁寧に配した外壁は、隣接する会場構造物「グランドルーフ」の木材と色調や質感が調和し、アイルランドと日本双方の木工芸の伝統を想起させます。曲線を多用した形状のため、施工では高い精度が求められ、担当したTSP太陽は「曲線を美しく仕上げることが最も難しかった」と述べています。建物は2024年12月25日に竣工しました。そして万博会場の中で一番最初のパビリオン完成建築でした。
内装は独特の黒に塗装された吉野産のスギが統一的に使われています。そのため落ち着いた雰囲気を醸し出しています。2階への階段ではオーク無垢材の段板が使われています。手すりの取り付けは大工の腕の見せ所のように壁に中に埋まるように作り込みされている。他のパビリオンでは見ないもの。これは階段の幅がより広く使えることになります。
屋上のウッドデッキは杉を利用したもので、寸法や規格としては足場板と同様に製材されたものと思われる。
ランドスケープは、日本の辻井造園とアイルランドのオリバー・シュアマンが共同で手がけ、「響き合う風景」をテーマにデザイン。アカシデやヤマモミジ、ススキなど日本の植生を用いながら、アイルランドの湿原や森を想起させる空間を創出。古代信仰に由来する「ブルラン・ストーン」も配置し、日本の手水鉢との文化的呼応を演出しています。
屋外には、アイルランド人造形作家ジョセフ・ウォルシュによる高さ6mの彫刻《Magnus RINN》を設置。ブロンズから積層オーク、金箔へと素材が変化する構造で、「RINN」という語が持つ「場所」「輪」「つながり」の意味を体現。アイルランドと日本の文化交流と自然との共鳴を象徴しています。
テーマ:「Creativity Connects People(創造性が人々をつなぐ)」
館内は三つの楕円建物ごとに異なる展示構成
五感でアイルランドを感じる空間(植物・香り・音)
日本とのつながりを紹介(小泉八雲関連展示など)
大型スクリーンと円形ホールでの音楽・ダンスパフォーマンス
アイルランド伝統楽器(ハープなど)の展示・体験
ライブ演奏やアイリッシュダンス体験(日本の盆踊り要素を融合)
一部期間限定で特別展示(例:小泉八雲展)