アメリカ館の体験は、館内展示だけにとどまりません。パビリオンの中庭には、手嶋保建築事務所の設計による木造モニュメント「Looking, After the Fires(炎と再生)」が設置されており、来場者にもう一つの深い物語を届けています。
この木のモニュメントは、日本の「火の見櫓」をモチーフにデザインされており、アメリカと日本の文化における「火」や「山火事」への向き合い方を出発点に、破壊と再生、喪失と希望の共存という普遍的なテーマを表現しています。
使用されている木材は、和歌山県田辺市の山長商店の無節ヒノキ(紀州材)。日本の伝統的な木造技術を活かし、すべて手刻みで加工された構造材が現地で組み立てられています。施工は、事前に工場で仮組みされたパーツを使用し、現地ではわずか3時間ほどで完成。アメリカ館の建築デザインに調和する、静かで力強い存在感を放っています。
このプロジェクトは、日米友好基金(Japan–U.S. Friendship Commission)によるアーティスト交換プログラムの一環で実現したもので、サンフランシスコ拠点の設計ユニットSAW.incとの協働により完成。芸術、建築、環境、文化的対話が結びついたこの作品は、来場者に静かに語りかけるように立っています。
中庭は自由に出入りできる空間となっており、入館せずともこの木のモニュメントを間近で鑑賞することができます。パビリオン本体が未来の革新を象徴しているとすれば、この「炎と再生」は、自然と人、過去と未来のつながりを見つめ直す場となっています。