マレーシアは私にとって縁のある国です。ボランティアとして留学生の支援活動をしていた際に知り合ったマレーシア人学生2名と、その後も家族ぐるみで交流を続けてきました。そのため現地を訪れたこともあり、木材関係の視察としても2度ほど訪問しています。マレーシアではインドネシア語がほぼ通じるため、観光での滞在も安心して過ごすことができます。
また、以前にはマレーシア政府の若手幹部8名がIT視察の一環として、当社を訪問されたこともあります。当社のエクステリア部門では、マレーシアから商社を通じてウリン材などの木材を輸入しており、同商社と連携して、ささやかながらウリンの植林活動も行っています。
さて、2025年大阪・関西万博のマレーシア館についてご紹介します。このパビリオンは、個人参加型の展示は少なく、来館者はスムーズな動線でテンポよく館内を巡ることができます。
テーマは「Interwoven/編み込む」。民族・宗教・文化の多様性が交差するマレーシアの姿を、自然素材である竹を用いて表現しています。最大の特徴は、約5,000本の竹を立体的に編み込んだ、伝統織物「ソンケット」をモチーフにしたファサードです。竹の外装は、まるで柔らかな布のように風と光を受け止め、マレーシアの自然と文化の融合を象徴しています。
建物は鉄骨造・地上3階建てで、屋上には緑豊かなガーデンテラスがあり、床材にはマレーシア産のセランガンバツ材が使用されています。訪問者が自然の中でひと休みできる癒しの空間となっています。
外壁は立体織構造の竹、館内の床材や屋外デッキにはセランガンバツ、壁面にはマレーシアの赤土をイメージした「タナメラ」色が使われ、同国の素材と伝統色彩を表現しています。
パビリオンの中央には、竹と籐で構成された彫刻作品「ハーモニーの木」が設置されています。一枚一枚の葉は、地元の職人による手編みで制作されており、持続可能な天然素材と手仕事の融合、そしてマレーシアの調和の精神が体現されています。
ところで、屋上や外部の木材において、なぜマレーシア産の最強材とも言える「ウリン」ではなく、セランガンバツが採用されたのでしょうか。セランガンバツは耐久性に優れ、ヒノキよりも強いとされますが、ウリンには及びません。ウリンはマレーシアが誇る高耐久材ですが、近年は産出量の減少により価格が高騰しており、万博のような6か月間の仮設建築に用いるには、コスト面で不合理と判断されたのでしょう。
なお、「セランガンバツ」という名称はマレー語に由来し、selangan は「間隔」「中間」、batu(バトゥー)は「石」を意味します。つまり「石のように硬い中間材」といった意味合いが考えられます。ただし、商業名としてのセランガンバツは複数種の樹種を含む総称であり、中には耐久性の低いものも含まれるため、利用にあたっては注意が必要です。
また、入口のウッドデッキについても一言添えます。施工を見る限り、当社の基準から見ても合理的に作られており、コストを抑える工夫が感じられます。たとえば、外周の幕板が省略され、板材の接合位置も一列で揃えられていました。施工効率を考えれば理解できますが、デザイン性の面ではやや残念に感じる部分もありました。
追記 同館を見ているときに私の両足が同時にツッ(コムラカエリ)てしまい、屋上にも行けず、そのまま退館してしまいました。館のスタッフの方は親切に対応してくださいました。再度訪ね屋上のウッドデッキも撮影します。またウリンはマレー語で kayu besi(カユベシ)と呼ばれています。意味は「鉄の木」です。鉄の木と石の木ですから、どちらも強い、耐久性ある木ですが、順位がはっきりしていますね。