モナコ公国
Principality of Monaco
モナコ館公式スタンプ
東ゲートから大屋根リングを右折、柱番号36付近
モナコ館 ― 驚きを大切に、自然と美の調和を伝える空間
私は小学生のころからモナコという国を知っていました。当時は切手収集が流行しており、私も夢中になって世界中の切手を集めていました。
モナコの切手は特に印刷とデザインが美しく 、小さな国ながらも芸術性にあふれたものでした。少年雑誌で、モナコは産業が少ないため切手発行によって外貨を稼いでいると知り、その知恵に感心したものです。
バチカン市国に次いで世界で2番目に小さな国でありながら、現在のモナコは華やかなカジノ、F1モナコ・グランプリなどで独自の地位を築いています。そんな国が大阪・関西万博に出展したモナコ館も、やはり独特の気品と洗練に満ちています。
「Take Care of Wonder」― 自然の奇跡を守る
モナコ館のテーマは「Take Care of Wonder(自然の奇跡を守る)」です。
「人は驚嘆させてくれたものを愛し、そして自分が愛するものを守ろうとする」という海洋探検家ジャック=イヴ・クストーの言葉を軸に、展示を通して人間と自然の関係を見つめ直す構成になっています。
建築は、ルディ・リチオッティが設計し、ザ・エー・グループとアトリエ・ピエール、さらに日本の向日葵設計が参画しています。シルバーを基調に赤い花びらを思わせる装飾が印象的で、建物全体がラグジュアリーな雰囲気を漂わせています。
1階では「触れる」をテーマにした体験型展示が行われ、黒いスリットに手を入れると、石や金属などの物質に反応して映像が変化します。背景にはモナコの風景が流れ、壁面には与謝蕪村や松尾芭蕉の俳句が並び、自然への感性が静かに響き合います。
地中海の命と日本の感性が出会う庭園
建物を抜けると、庭園が広がります。日本の庭園と地中海の風景を融合したような造りで、水辺や草木に囲まれ、穏やかな空気が流れています。そこには、かわいらしい木製の大型ボードゲームや、ミツバチの解説板が設けられており、環境と生き物のつながりを楽しみながら学べます。
庭園の中心には、モナコから特別に運ばれてきた樹齢500年のオリーブの古木があります。フランス館の樹齢1300年のオリーブには及びませんが、枝ぶりは見事で、まるでモナコの歴史と誇りを象徴するようです。
また、入口近くに設置された木製の井桁組みのモニュメントは、重厚で存在感があり、自然素材の力強さを感じさせます。
「Hôtel de Paris Monte-Carlo」のワインを味わう贅沢な時間
3階には特別なワインバーが設けられています。ここでは、モナコの名門ホテル「オテル・ド・パリ・モンテカルロ」のセラーから選び抜かれたグラン・クリュのワインやコニャックを楽しむことができます。私も1時間並んで入場し、モナコの香り漂うワインを味わいました。展示のテーマである「自然の奇跡」と同様に、葡萄が生む奇跡の一滴を体験できる時間でした。
海と森、驚きへのまなざし
別館では、地中海の生態系をテーマにした展示が行われています。光と音、水の演出によって180種類もの海洋生物が万華鏡のように浮かび上がり、訪れる人々を深海の世界へと誘います。希少なモンクアザラシの保全活動など、モナコが取り組む環境保護への姿勢も紹介されています。
モナコ館全体を通して、「驚き」「美」「自然」「命」が一体となった体験ができ、まさにクストーの言葉どおり、驚きから愛、そして守る心へとつながる構成になっています。
総評
モナコ館は、規模こそ大きくありませんが、空間の美しさとメッセージ性の高さで強い印象を残します。
切手のデザインに魅せられた少年時代から半世紀を経て、私は今、木と自然を通してモナコの「驚き」と「愛する力」を再び感じることができました。木製の展示物や古木のオリーブ、そしてグラン・クリュの香りが、国の小ささを超えた豊かさを静かに語りかけてくるパビリオンです。
モナコ館 プロモーション動画
VIDEO
「出典:Expo2025 大阪・関西万博
(YouTube:限定公開動画)」
©1996-2025 NAKAGAWA WOOD INDUSTRY Co.,Ltd