―未来社会のための実験室―
ウズベキスタン・パビリオンは、「知識の庭」をテーマに、同国の豊かな文化遺産と自然との調和を未来志向で表現したパビリオンです。ユネスコ世界遺産「イチャン・カラ」や中央アジアの護符「トゥマール」から着想を得た三角形の敷地に建てられ、人々の知と文化が交差する空間が広がります。
この建築は、ドイツのATELIER BRÜCKNERによるコンセプト・デザイン、徳岡設計の実施設計によって実現されました。伝統と革新、持続可能性を融合したデザインは、German Design Award 2025 金賞(建築部門)を受賞しています。
ウズベキスタン館の最大の特徴は、上部のパーゴラ(木立)に用いられた国産杉の丸太材です。日本各地9府県(熊本、大分、宮崎、島根、奈良、大阪、和歌山、鳥取、徳島)から集められた計286本の丸太が、空に向かって立ち上がる姿は圧巻です。内訳として大分県産は径300ミリで7メートルと8メートルで69本、その他の府県で径200ミリで5メートルと6メートルで262本を用意した。大阪府木材連合会の協力、加工・調達は高原木材が担当しました。
丸太は一本一本にマイクロチップ入りタグが付けられ、来場者はスマートフォンで読み取ることで、産地情報にアクセスできます。
この取り組みは、木材のトレーサビリティ(追跡可能性)と再利用性を両立させるもので、パビリオン終了後には丸太が「万博レガシー材」として保存・活用される予定です。
また、解体・移設を前提とした設計がなされており、構造部にはボルト接合やGIR(Glued-In Rod)工法が用いられ、分解可能なディテールが随所に施されています。
パビリオン基壇部には古レンガの再利用や淡路島産の土を使った土壁が採用され、大地とのつながりや歴史的記憶を象徴。 全体構造は木造3階建て(うち実際の展示階は2階)。上部の丸太群は「屋上工作物」として視覚的に森を形成。 パーゴラ部分は8層の組木構造により、木漏れ日のような光と影の空間を生み出しています。
館内ショップには、ウズベキスタンを代表する職人たちの作品が展示されています。
壁一面には、陶芸家アブドゥルヴァヒド・カリモフ制作による11,000枚超の手作りタイルを配置。
タイルは16世紀の技法を再解釈し、ターコイズブルーの釉薬で空・水・平和を象徴。
日本生まれのレバノン人デザイナー、ナダ・デブス氏による陶製スツールは、杉の木立の間に配置され、茶文化体験の場に。
VIPルームの食器はナジロフ氏、装飾クッションは刺繍作家カスィムバエワ氏によるもの。
このパビリオンは、単なる展示施設ではなく、ウズベキスタンの文化・建築・自然・工芸・サステナビリティを融合させた実験的空間です。
中央部にはムービングステージが設けられ、過去・現在・未来を移動しながら体験できる没入型演出が施されています。
パビリオンは解体後、ウズベキスタンへ移築され、文化と地域コミュニティの拠点として再生予定です。