60 |
サクラ |
春の桜 |
春の桜も秋の紅葉も何が何やら、見えぬ聞えぬ無我夢中の極貧の火の車のその日暮しを続けていた。 |
60 |
紅葉 |
秋の紅葉 |
春の桜も秋の紅葉も何が何やら、見えぬ聞えぬ無我夢中の極貧の火の車のその日暮しを続けていた。 |
60 |
サクラ |
春の桜 |
春の桜や秋の紅葉には面おもてをそむけて生きても行かれるだろうが、年にいちどの大みそかを知らぬ振りして過す事だけはむずかしい。 |
60 |
紅葉 |
秋の紅葉 |
春の桜や秋の紅葉には面おもてをそむけて生きても行かれるだろうが、年にいちどの大みそかを知らぬ振りして過す事だけはむずかしい。 |
76 |
スギ |
杉の大木 |
才兵衛はひとり裏山に登って杉の大木を引抜き、 |
76 |
大木 |
杉の大木 |
才兵衛はひとり裏山に登って杉の大木を引抜き、 |
77 |
マツ |
松の木を |
才兵衛次第に目まいがして来て庭の松の木を鰐口と思い込み、よいしょと抱きつき、 |
77 |
木 |
松の木を |
才兵衛次第に目まいがして来て庭の松の木を鰐口と思い込み、よいしょと抱きつき、 |
77 |
縁側 |
縁側 |
どんな事になるかもわからぬと思い、縁側にあがってさっさと着物を着込んで、 |
78 |
マツ |
松の木 |
才兵衛は松の木を引き抜いて目よりも高く差し上げ、ふと座敷の方を見ると |
78 |
マツ |
松の木 |
松の木も何も投げ捨て庭先に平伏し、わあと大声を挙げて泣いて弟子にしてくれよと懇願した。 |
79 |
木っ葉微塵 |
木っ葉微塵 |
この老いの細い骨は木っ葉微塵、と震え上って分別し直し、 |
80 |
楊弓 |
楊弓など |
同じ遊びでも、楊弓など、どうでしょうねえ |
80 |
薪 |
釜の下の薪 |
下女に釜の下の薪をひかせたら少しは家の仕末のたしになるでしょう。 |
81 |
松かしわ |
松かしわ |
野辺に咲く四季の花をごらんになる事が少いので、深山の松かしわを、取り寄せて、 |
81 |
ツバキ |
椿の枝 |
わしたち下々の者が庭の椿の枝をもぎ取り、 |
81 |
枝 |
椿の枝 |
わしたち下々の者が庭の椿の枝をもぎ取り、 |
81 |
ウメ |
鉢植の梅 |
鉢植の梅をのこぎりで切って、床の間に飾ったって何の意味もないじゃないですか。 |
81 |
床の間 |
床の間に飾った |
鉢植の梅をのこぎりで切って、床の間に飾ったって何の意味もないじゃないですか。 |
83 |
薪炭 |
薪炭 |
米、油、味噌、塩、醤油、薪炭、四季折々のお二人の着換え |
87 |
襖 |
間の襖 |
間の襖に念入りに固くしんばり棒をして、花嫁がしくしく泣き出すと大声で、 |
87 |
しんばり棒 |
しんばり棒 |
間の襖に念入りに固くしんばり棒をして、花嫁がしくしく泣き出すと大声で、 |
88 |
松籟 |
お宮の松籟 |
と嗄(しゃが)れた声で言ってぎょろりとあたりを見廻せば、お宮の松籟も、しんと静まり、 |
88 |
梯子 |
梯子からころげ落ち |
大鯰が瓢箪んからすべり落ち、猪が梯子からころげ落ちたみたいの言語に絶したぶざまな恰好であったと後々の里の人たちの笑い草にもなった程で、 |
89 |
戸板 |
戸板 |
戸板に乗せられて死んだようになって家へ帰り、 |
93 |
根抜き |
根抜きの法華 |
いやいや根抜きの法華でなければ信心が薄い、 |
93 |
太鼓 |
太鼓をたたき |
私はお前のために好きでもないお題目を称えて太鼓をたたき手に豆をこしらえたのだぞ、 |
93 |
太鼓 |
太鼓をたたく |
南無妙法蓮華経と大声でわめいて滅多矢鱈(めったやた)らに太鼓をたたく。 |
96 |
櫛 |
櫛で |
蠅を追うやら、櫛でお蘭のおくれ毛を掻き上げてやるやら、 |
96 |
枷 |
木綿の枷 |
お蘭は木綿の枷というものを繰って細々と渡世し、 |
97 |
紅葉 |
秋の紅葉 |
秋の紅葉も春の菫(すみれ)も、何の面白おい事もなく、 |
97 |
カシワ |
柏の枯枝 |
近くの山に出かけては柏の枯枝や松の落葉を掻き集め、 |
97 |
枯枝 |
柏の枯枝 |
近くの山に出かけては柏の枯枝や松の落葉を掻き集め、 |
97 |
マツ |
松の落葉を |
近くの山に出かけては柏の枯枝や松の落葉を掻き集め、 |
97 |
落葉 |
松の落葉を |
近くの山に出かけては柏の枯枝や松の落葉を掻き集め、 |
97 |
松葉 |
松葉の煙 |
松葉の煙に顔をそむけながら渋団扇を矢鱈にばたばた鳴らし、 |
97 |
木の実 |
木の実 |
吉兵衛もはねまわって喜び、山から木の実を取って来て、 |
98 |
木の実 |
木の実 |
雨風も防ぎかねる草の庵に寝かされて、木の実のおもちゃなど持たされ、 |
99 |
マキ |
薪を振上げ |
いま打殺すと女だてらに薪を振上げ |
99 |
マキ |
薪を取上げ |
お蘭の手から薪を取上げ、吉兵衛を打ち殺したく思うも尤もながら、 |
100 |
杖 |
杖にすがって |
杖にすがってまず菊之助の墓所へ行き、 |
101 |
イチョウ |
銀杏の葉 |
尾鰭は黄色くすきとおりて大いなる銀杏の葉の如く |
101 |
葉 |
銀杏の葉 |
尾鰭は黄色くすきとおりて大いなる銀杏の葉の如く |
102 |
木の葉 |
木の葉の如く |
船は木の葉の如く飜弄せられ、客は恐怖のために土色の顔になって、 |
106 |
腐木 |
腐木 |
流れ寄る腐木にはっしと射込んだのでなければ、さいわいだがのう |
106 |
木訥 |
木訥の口調 |
と木訥の口調で懸命になぐさめ、 |
115 |
腐木 |
漂う腐木 |
岸ちかくに漂う腐木を、もしやと疑いざぶざぶ海にはいって行って、 |
117 |
マツ |
松の枝 |
草履の鼻緒は切れる、少しの雪に庭の松の枝が折れる、 |
117 |
枝 |
松の枝 |
草履の鼻緒は切れる、少しの雪に庭の松の枝が折れる、 |
121 |
根 |
矢の根 |
中堂金内の誉の矢の根、八重の家にはその名の如く春が重ったという、 |
122 |
炭屋 |
炭屋 |
近隣の左官屋、炭屋、紙屋の家と少しも変らず軒の低い古ぼけた住居で、 |
122 |
板切れを |
板切れを |
あるじは毎朝早く家の前の道路を掃除して馬糞や紐や板切れを拾い集めてむだには捨てず、 |
124 |
木石 |
木石 |
嫁をもらっても、私だとて木石ではなし、 |
125 |
障子 |
障子が破れる |
向う三軒両隣りの家の障子が破れるほどの大声を挙げ、 |
125 |
肥桶 |
肥桶 |
眼脂も拭かず肥桶をかついでお茶屋へ遊びに行くのが自慢だ、 |
125 |
肥桶 |
肥桶をかついで |
くやしかったら肥桶をかついでお出掛けなさい、 |
125 |
肥桶 |
肥桶をかついで |
伸びていますよ、くやしかったら肥桶をかついで、 |
126 |
肥桶 |
肥桶をかついで |
さりとて、肥桶をかついで遊びに出掛けるのも馬鹿々々しく思われ |
126 |
植木屋 |
植木屋 |
ろりと寝ころび、出入りの植木屋の太吉爺を呼んで、 |
126 |
天井板 |
天井板 |
腕まくらしてきょろきょろと天井板を眺めて別の事を考え、 |
128 |
肥桶 |
肥桶 |
肥桶をかついで茶屋遊びする人は無いものだという事もわかり、 |
130 |
行李 |
自分の行李に |
お針のお六は、奥方の古着を自分の行李につめ込んで、 |
135 |
炭屋 |
炭屋 |
炭屋も、耳をすまし、悪事千里、たちまち人々の囁きは四方にひろがり、 |
138 |
障子 |
障子の切り張り |
その母の松下禅尼にから障子の切り張りを教えられて育っただけの事はあって、 |
139 |
松明 |
松明 |
それから人足ひとりひとりに松明を持たせ冷たい水にはいらせて銭十一文の捜査をはじめさせた。 |
139 |
松明 |
松明の光 |
松明の光に映えて秋の流れは夜の錦と見え、 |
140 |
松明 |
松明を持ち |
人足たちと共に片手に松明を持ち片手で川底をさぐっているような恰好だけはしていたが、 |
142 |
松明 |
松明片手に |
皆は大喜びで松明片手に舞いをはじめた。 |
148 |
ヤナギ |
柳の葉は |
川の柳の葉は一枚残らず散り落ち、川の水は枯れて蕭々(しょうしょう)たる冬の河原となり |
148 |
葉 |
柳の葉は |
川の柳の葉は一枚残らず散り落ち、川の水は枯れて蕭々(しょうしょう)たる冬の河原となり |
158 |
松籟 |
松籟ものすごく |
しかも風さえ加って松籟ものすごく、一行の者の袖合羽の裾吹きかえされて千切れんばかり、 |
166 |
ナシ |
梨の木 |
花盛りの梨の木の下でその弟とも見える上品な男の子と手鞠をついて遊んでいる若い娘の姿に、 |
166 |
木 |
梨の木 |
花盛りの梨の木の下でその弟とも見える上品な男の子と手鞠をついて遊んでいる若い娘の姿に、 |
172 |
楊子 |
爪楊子のはてまで |
にぎりめし、鼻紙、お守り、火打石、爪楊子のはてまで一物も余さず奪い、 |
172 |
櫛 |
櫛笄でも |
、里の女のつまらぬ櫛笄(こうがい)でも手に入れると有頂天になり、 |
174 |
櫛 |
櫛で |
帯でも櫛でもせっかくの獲物をこんな本当の男みたいな妹と二人でわけるのは馬鹿らしい、 |
177 |
菩提 |
菩提を弔ったとは |
これまであやめた旅人の菩提を弔ったとは頗(すこぶ)る殊勝に似たれども、父子二代の積悪(せきあく)はたして如来の許し給うや否や。 |
180 |
桝 |
一升桝 |
徳兵衛の家を訪れ、一升桝を出させて、 |
180 |
桝 |
桝を神棚に |
もっともらしい顔をして桝を神棚にあげ、ぱんぱんと拍手を打ち、 |
180 |
神棚に |
桝を神棚に |
もっともらしい顔をして桝を神棚にあげ、ぱんぱんと拍手を打ち、 |
180 |
重箱 |
重箱 |
意味も無く部屋中をうろうろ歩きまわり重箱を蹴飛ばし、 |
181 |
神棚 |
神棚 |
神棚の桝を見上げては、うれしさ胸にこみ上げ |
182 |
神棚 |
神棚を |
とにかく、あの神棚ををおろせ。 |
182 |
神棚 |
神棚を |
女房もいそいそと立って神棚から一升桝をおろして見ると、 |
182 |
神棚 |
神棚を |
神棚を全部引下して、もったいなくも御神体を裏がえしたりひっくりかえしたり、 |
182 |
桝 |
神棚の桝 |
とにかく、あの神棚の桝をおろせ。 |
182 |
桝 |
神棚から一升桝を |
女房もいそいそと立って神棚から一升桝をおろして見ると、 |
185 |
独楽 |
坊の独楽 |
坊の独楽(こま)はきょう買ってくれるかと言う。 |
187 |
太鼓 |
太鼓に棒を |
ここにある太鼓に棒をとおして、それぞれ女房と二人でかつぎ、 |
187 |
棒 |
太鼓に棒を |
ここにある太鼓に棒をとおして、それぞれ女房と二人でかつぎ、 |
187 |
スギ |
杉林の中 |
役所の門を出て西へ二丁歩いて、杉林の中を通り抜け、さらに三丁、 |
187 |
太鼓 |
太鼓をかついで |
夫婦で太鼓をかついで八幡様へお参りして来なければならなくなった。 |
188 |
太鼓 |
太鼓をかつがせ |
ただ矢鱈(やたら)に十人を叱しかって太鼓をかつがせお宮参りとは、 |
188 |
太鼓 |
太鼓のお仕置き |
やけっぱちで前代未聞の太鼓のお仕置きなど案出して、 |
188 |
太鼓 |
太鼓をかついで |
むかし支那に、夫婦が太鼓をかついでお宮まいりをして親の病気の平癒祈願したという美談がある、 |
188 |
太鼓 |
太鼓をかついで |
夫婦が太鼓をかついでしずしずと門から出て来ると、 |
188 |
太鼓 |
こんな太鼓 |
こんな太鼓をかついでのこのこ歩かなければならぬのか |
188 |
太鼓 |
太鼓なんか |
太鼓なんか担がせられて諸人の恥さらしになるのだから、 |
188 |
太鼓 |
太鼓たるや |
おまけにこの太鼓たるや、気まりの悪いくらい真赤な塗胴で、 |
188 |
太鼓 |
い太鼓を |
おまけにこんな赤い太鼓をかつがせられて、いい見せ物にされて、 |
189 |
樽 |
四斗樽 |
しかも大きさは四斗樽(しとだる)しとだるほどあって、 |
189 |
棒 |
棒を通して |
棒を通して二人でかついでも、 |
189 |
スギ |
杉林 |
杉林にさしかかる頃からは、あたりに人ひとりいないし |
190 |
太鼓 |
赤い太鼓 |
こんな赤い太鼓の片棒かつがせて、チンドン屋みたいな事をさせてさ |
191 |
片棒 |
太鼓の片棒 |
こんな赤い太鼓の片棒かつがせて、チンドン屋みたいな事をさせてさ |
191 |
太鼓 |
この太鼓 |
お父さんには、この太鼓がよく似合ってよ。 |
191 |
太鼓 |
お祭りの太鼓 |
こんな真赤なお祭りの太鼓をかつがせて、 |
191 |
太鼓 |
太鼓をかついで |
太鼓をかついでいなけれや、ぶん殴ってやるんだが、 |
192 |
太鼓 |
重い太鼓 |
おかげでこんな重い太鼓なんか担がせられて、 |
193 |
太鼓 |
太鼓の仕置き |
太鼓の仕置きも何の事は無い、 |
193 |
太鼓 |
太鼓の担ぎ賃 |
いや、このたびは御苦労であった。太鼓の担ぎ賃として、 |
194 |
|
|
それにもかかわらず、あのような重い太鼓をかつがせ、 |
194 |
太鼓 |
太鼓をかついで |
太鼓をかついで杉林にさしかかった頃から女房が悪鬼に憑かれたように物狂わしく騒ぎ立て、 |
194 |
スギ |
杉林にさしかかった |
太鼓をかついで杉林にさしかかった頃から女房が悪鬼に憑かれたように物狂わしく騒ぎ立て、 |
194 |
太鼓 |
太鼓の難儀 |
うらむな、太鼓の難儀もいましばしの辛抱、 |
194 |
太鼓 |
赤い太鼓 |
あの赤い太鼓は重かったであろう。 |
194 |
戸棚 |
戸棚の引出 |
家へ帰ってから戸棚の引出しをあけて見ろ、 |
207 |
障子 |
障子をあけて |
立ち上って障子をあけて匂いを放散させ、 |
212 |
桶 |
小桶に玉網 |
小桶に玉網(たも)たもを持ち添えてちょこちょこと店へやって来て、 |
212 |
桶 |
小桶 |
小桶を覗いてみると無数のぼうふらがうようよ泳いでいる。 |
213 |
桶 |
小桶に |
小桶に一ぱいのぼうふらを、たった二十五文で買ってもらって |
215 |
桶 |
小桶を手にさげ |
小桶を手にさげてすたすた歩く。 |
217 |
生垣 |
生垣に汚く |
すえ葉も枯れて生垣に汚くへばりついている朝顔の実一つ一つ取り集めている婆の、 |
222 |
木枯 |
木枯しに吹き |
いよいよ寒さのつのる木枯しに吹きまくられて、 |
224 |
サクラ |
心の仇桜 |
浮世がいやになり申した、明日ありと思う心の仇桜、 |
226 |
クリ |
栗林 |
この方丈の庵も、すぐ近くの栗林の番小屋であったのを、 |
226 |
スギ |
杉の木の下に |
三本ならびの杉の木の下に昔から屋敷に伝っているささやかなお稲荷のお堂があって、 |
226 |
木 |
杉の木の下に |
三本ならびの杉の木の下に昔から屋敷に伝っているささやかなお稲荷のお堂があって、 |
227 |
樹海 |
樹海 |
目前に一目千本の樹海を見ながら、薪はやっぱり里人から買わないと |
227 |
薪 |
薪は |
目前に一目千本の樹海を見ながら、薪はやっぱり里人から買わないと |
228 |
木の実 |
木の実 |
山には木の実、草の実が一ぱいあって、 |
229 |
大工 |
出入りの大工 |
出入りの大工、駕籠かきの九郎助にまで、 |
229 |
サクラ |
桜花の見事さ |
吉野山の桜花の見事さを書き送り、おしなべて花の盛りになりにけり山の端毎(はごと)にかかる白雲、 |
231 |
落葉 |
落葉が風に吹かれ |
と毎日毎日むなしく待ちこがれ、落葉が風に吹かれて地を這はう音を、 |
231 |
木立 |
冬木立 |
蕭条(しょうじょう)たる冬木立を眺めて溜息をつき、 |
232 |
床の間 |
床の間 |
これは富士山の置き物で、御出家の床の間にふさわしい |
232 |
床柱 |
床柱 |
床柱の根もとの節穴に隠して置きましたが、 |
232 |
床柱 |
床柱の根もと |
寝間に忍び込んで床柱の根もとの節穴に指を突き込み、 |