10 |
ウメ |
梅は咲いた |
私はフランス叙情詩の講義を聞きおえて、真昼頃、梅は咲いたか桜はまだかいな。 |
10 |
サクラ |
桜はまだ |
私はフランス叙情詩の講義を聞きおえて、真昼頃、梅は咲いたか桜はまだかいな。 |
13 |
モモ |
桃の実のように |
蒼黒い両頬が桃の実のようにむっつりふくれた。 |
13 |
木 |
木の蔭 |
馬場は銀座のある名高いビヤホオルの奥隅の鉢の木の蔭に、 |
16 |
葉桜 |
葉桜 |
私が上野公園のれいの甘酒屋で、はらみ猫、葉桜、花吹雪、毛虫、そんな風物のかもし出す晩春のぬくぬくした爛熟の雰囲気をからだじゅうに感じながら、 |
20 |
クリ |
栗の木のした |
庭の栗の木のしたで籐椅子にねそべり、 |
23 |
薔薇 |
真紅の薔薇 |
いずれも異国の芸苑に咲いた真紅の薔薇。 |
27 |
ヤナギ |
柳の葉 |
眉は柳の葉のように細長く、うすい唇は苺のように赤かった。 |
27 |
葉 |
柳の葉 |
眉は柳の葉のように細長く、うすい唇は苺のように赤かった。 |
35 |
頬杖 |
頬杖 |
馬場は部屋の隅の机に頬杖ついて居汚く坐り、 |
46 |
街路樹 |
街路樹 |
花屋。街路樹。古本屋。洋館。走りながら私は自分が何やらぶつぶつ低く呟いているのに気づいた。 |
46 |
葉 |
葉 |
ライト。爆音。星。葉。信号。風。あっ! |