89 |
バラ |
白い薔薇の花 |
胸のところに、小さい白い薔薇の花を刺繍して置いた。 |
89 |
雑木林 |
前の雑木林を |
おみおつけの温あたたまるまで、台所口に腰掛けて、前の雑木林を、ぼんやり見ていた。 |
89 |
雑木林 |
前の雑木林 |
しかもそっくり同じことを考えながら前の雑木林を見ていた、 |
92 |
頬杖 |
軽く頬杖して |
もの憂そうに軽く頬杖して、外を通る人の流れを見ていると |
92 |
バラ |
薔薇のワルツ |
急に音楽、薔薇のワルツ。ああ、おかしい、おかしい。 |
93 |
森 |
森の小路 |
途中、神社の森の小路を通る。これは、私ひとりで見つけて置いた近道である |
93 |
森 |
森の小路 |
森の小路を歩きながら、ふと下を見ると、麦が二寸ばかりあちこちに、かたまって育っている。 |
93 |
森 |
森の中に |
去年も、たくさんの兵隊さんと馬がやって来て、この神社の森の中に休んで行った |
93 |
森 |
森の小路 |
神社の森の小路を抜けて、駅近く、労働者四、五人と一緒になる。 |
93 |
桶 |
馬の桶 |
ことしも、兵隊さんの馬の桶からこぼれて生えて、ひょろひょろ育ったこの麦は、 |
101 |
植木屋 |
植木屋 |
うちのお庭を手入れしに来ている植木屋さんの顔が目にちらついて、しかたがない。 |
101 |
植木屋 |
植木屋さん |
どこからどこまで植木屋さんなのだけれど、 |
101 |
植木屋 |
植木屋さん |
それこそ植木屋さんに逆もどりだけれど、黒いソフトを深くかぶった日蔭の顔は、 |
101 |
植木屋 |
植木屋さん |
植木屋さんにして置くのは惜しい気がする。 |
101 |
植木屋 |
植木屋さん |
お母さんに、三度も四度も、あの植木屋さん、はじめから植木屋さんだったのかしら、とたずねて、しまいに叱られてしまった。 |
101 |
植木屋 |
植木屋さん |
お道具を包んで来たこの風呂敷は、ちょうど、あの植木屋さんがはじめて来た日に、 |
104 |
頬杖 |
机に頬杖ついて |
机に頬杖ついて、ぼんやり窓のそとを眺める。 |
104 |
バラ |
薔薇の花 |
お庭の隅に、薔薇の花が四つ咲いている。黄 |
106 |
バラ |
薔薇の花 |
先生は、私の下着に、薔薇の花の刺繍のあることさえ、知らない。 |
108 |
櫛 |
櫛一本 |
もじゃもじゃの赤い髪を櫛一本に巻きつけている。 |
109 |
木 |
木 |
ただ、木、道、畠、それだけなのだから。 |
109 |
並木路 |
小さい並木路 |
小さい並木路を下るときには、振り仰いで新緑の枝々を眺め、ま |
109 |
新緑 |
新緑の枝々 |
振り仰いで新緑の枝々を眺め、まあ、と小さい叫びを挙げてみて、 |
109 |
枝 |
新緑の枝々 |
振り仰いで新緑の枝々を眺め、まあ、と小さい叫びを挙げてみて、 |
110 |
森 |
森の中 |
神社の森の中は、暗いので、あわてて立ち上って、おお、こわこわ、 |
110 |
森 |
森 |
そそくさ森を通り抜け、森のそとの明るさに、わざと驚いたようなふうをして、いろいろ新しく新しく、 |
110 |
森 |
森 |
そそくさ森を通り抜け、森のそとの明るさに、わざと驚いたようなふうをして、いろいろ新しく新しく、 |
111 |
木立 |
木立の間に |
そのピンクの靄がゆらゆら流れて、木立の間にもぐっていったり、 |
111 |
バラ |
薔薇 |
これは、この空の色は、なんという色なのかしら。薔薇。火事。虹 |
111 |
木の葉 |
木の葉 |
それから、いまほど木の葉や草が透明に、美しく見えたこともありません。 |
111 |
グミ |
茱萸の実 |
井戸端の茱萸の実が、ほんのりあかく色づいている。 |
111 |
実 |
茱萸の実 |
井戸端の茱萸の実が、ほんのりあかく色づいている。 |
111 |
グミ |
茱萸 |
私が夕方ひとりで茱萸をとってたべていたら、 |
111 |
グミ |
茱萸 |
ばかなやつ。茱萸を食べる犬なんて、はじめてだ。 |
111 |
グミ |
茱萸 |
私も背伸びしては、茱萸をとって食べている。 |
114 |
バラ |
薔薇 |
和服に着換え、脱ぎ捨てた下着の薔薇にきれいなキスして、 |
118 |
ボタン |
牡丹の花弁 |
牡丹の花弁のように、鳥の羽の扇子のようにお皿に敷かれて、 |
121 |
箸 |
お箸 |
お箸とお茶碗ほおり出して、大声あげて泣こうかしらと思った。 |
124 |
根も葉もない |
根も葉もない |
根も葉もない思案の洪水から、きれいに別れて、 |
125 |
蜜柑箱 |
蜜柑箱 |
お風呂番をしながら、蜜柑箱に腰かけ、ちろちろ燃える石炭の灯をたよりに学校の宿題を全部すましてしまう。 |
126 |
サンゴジュ |
珊瑚樹 |
珊瑚樹の青い葉が窓から覗いていて、一枚一枚の葉が、電燈の光を受けて、強く輝いている。 |
126 |
葉 |
青い葉 |
珊瑚樹の青い葉が窓から覗いていて、一枚一枚の葉が、電燈の光を受けて、強く輝いている。 |
126 |
葉 |
一枚一枚の葉 |
珊瑚樹の青い葉が窓から覗いていて、一枚一枚の葉が、電燈の光を受けて、強く輝いている。 |
128 |
頬杖 |
頬杖つきながら |
お部屋へ戻って、机のまえに坐って頬杖つきながら、 |