177 |
黒板 |
黒板 |
正面の黒板には、次のような文字が乱雑に、 |
179 |
マツ |
松がえ |
ちよの松がえ、わけいでし、 |
180 |
黒板 |
黒板 |
と、ちょっと正面の黒板を指差し)さまざま黒板に書いて、 |
181 |
黒板 |
黒板拭き |
黒板拭きをとって、黒板の文字を一つ一つ念入りに消す。 |
183 |
枯葉 |
枯葉 |
去年の秋に散って落ちた枯葉が、そのまんま、また雪の下から現われて来た。 |
183 |
落葉 |
一面の落葉 |
ごらん、もう一面の落葉だ。 |
183 |
落葉 |
この落葉 |
意味ないね、この落葉は。 |
188 |
行李 |
行李 |
以前こちらに疎開させてあった行李五つだけ、 |
188 |
行李 |
行李 |
何も無いから仕方なくこんないやらしい派手な着物なんかを行李の底から引っぱり出して着ているのだけど、 |
194 |
縁側 |
縁側にしゃがんで |
六畳間の縁側にしゃがんで七輪をばたばた煽ぎ煮物をしながら、 |
194 |
縁側 |
ふと縁側 |
ふと縁側のほうを見て立ちどまり |
194 |
縁側 |
縁側に近寄り |
笑いながら縁側に近寄り |
195 |
縁側 |
縁側に出て |
それから縁側に出てた机に向ってあぐらをかき、 |
195 |
縁側 |
縁側に出て |
洗濯物を縁側に出て置いて、自身も浅く縁側に腰をかけ |
201 |
縁側 |
縁側に出て |
立ち上り、縁側に出て、鍋を七輪からおろし、 |
202 |
縁側 |
縁側に立っ |
縁側に立って、それを見送り |
202 |
縁側 |
縁側に出る |
ああ、お帰り。(縁側に出る) |
202 |
縁側 |
縁側に |
縁側にどかりと腰をおろし |
202 |
縁側 |
縁側に上り |
サンダルのようなものを脱いで縁側に上り、よろめき |
202 |
枯葉 |
春の枯葉 |
風吹き起り、砂ほこりが立つ。春の枯葉も庭の隅で舞う。 |
202 |
障子に |
障子 |
奥田、鍋を部屋のなかに持ち運び、障子をしめる |
202 |
障子に |
障子に |
障子に、奥田の、立って動いて、何やら食事の仕度をしている影法師が写る。 |
203 |
障子 |
障子の |
障子の女の影法師、ふっと掻き消すようにいなくなる。 |
203 |
障子 |
障子 |
同時に、障子があいて、奥田が笑いながら顔を出す。 |
206 |
縁側 |
縁側へ |
それから、茶呑茶碗を取りに縁側へ出る。 |
211 |
襖 |
襖 |
上手の襖しずかにあく。 |
213 |
縁側 |
縁側に出る |
奥田教師、縁側に出る |
213 |
縁側 |
縁側に出て |
会釈して、縁側に出て、はきものを捜す |
213 |
縁側 |
縁側から |
夢遊病者の如くほとんど無表情で歩き、縁側から足袋はだしで降りて |
214 |
縁側 |
縁側に |
縁側に出てはきものを捜し、野中のサンダルをつっかけ、無言で皆のあとを追う。 |
214 |
枯葉 |
春の枯葉 |
一陣の風が吹いて、漁船のあたりからおびただしく春の枯葉舞い立つ。 |
227 |
枯葉 |
枯葉舞う |
風吹く。枯葉舞う。 |
229 |
枯葉 |
枯葉 |
風。枯葉。歌声。 |